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衣服形態の原初的な類型化 : 衣服形態に即した研究

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衣服形態の原初的な類型化 : 衣服形態に即した研究

衣服形態の原初的な類型化 : ファッション用語、とくに衣服の用語はとても乱雑で多数あります。他方で、上半身を覆う衣服(上体衣)を中心に衣服形態のパターンは非常に限られているので、基本形を押さえるだけで非常に分かりやすくなります。

まず、衣服の基本形に関するいくつかの大別方法を紹介します。3点の概説書をもとに衣服形態の4類型を要約しましょう。

辻原康夫による区分

辻原康夫によると、

  1. 寛衣型(寛袍形式、前開き形式)
  2. 懸衣型(貫頭衣形式、巻衣形式)

に大別されます。

懸衣型のうち貫頭衣形式は寛衣型の原形と考えられ、貫頭衣は被るのであって懸けるのではありません。したがって、この区分は妥当とはいえません。また、寛衣型の2形式(寛袍形式と前開き形式)は、いずれも全開(前開)にして着用し、できるだけ露出部分を抑える点で同じです。和服を漢服から区別しようとして失敗しています。

これらの意味で辻原の区分に一貫性はありませんが、衣服の基本形を4形態にまで絞り込んだ明瞭性は高く評価したいところです。

以上、辻原康夫『服飾の歴史をたどる世界地図』河出書房新社、2003年、14~16頁。

田中千代による区分

田中千代による区分をみましょう。田中の場合も衣服形態を4つに大別しています。田中h着用感覚による用語を用いているため、実感的に理解しやすくなっています。

  1. まく(巻く)…1枚の布を身体に巻いて着る方法です。(34頁)
  2. あな(穴)…布に穴を作り、その中に身体の一部(頭、腕、足など)を通して着る方法です。(64頁)
  3. わ(輪、または筒)…布を一本の縫目で繋ぎ、身体を中に入れる方法です。
  4. はく(穿く)…1~3点目の応用系と考えられます。

1「まく(巻く)」辻原の分類では巻衣形式にあたります。

2「あな(穴)」は貫頭衣をはじめとする基本的なパターンです。田中はこのパターンで貫頭衣つまり「頭を通す穴」に注目し、その代表的な衣服を中南米のポンチョに求めます。チュニックの出てこないのが残念。

ポンチョの説明には身頃の前面と背面の各中央に縦の継ぎ合せがあることを指摘していますが、その意味を述べていません(69・70頁)。東アジアにおける貫頭衣との共通性に注目すれば、それが織り幅によるものだという指摘は欲しいところです。東アジアのように織幅が狭ければ貫頭衣の中央で縫合する必要があります。ポンチョも小幅織物から作られたものだったことがわかります。

3「わ(輪、または筒)」は辻原区分でいう巻衣形式に対し縫合が施されたものだと考えられます。ただし、形状が筒形になる点は巻衣形式と異なります。

4「はく(穿く)」は例に2本の脚を別々に包む方法、すなわち、ズボンが念頭に置かれています。上体衣の分類に下半身の衣料品(下体衣)を区分に入れているので一貫性に欠けます。

田中千代の区分を現代風の呼び方で大きくまとめると、1~3点はワンピースやスカート、4点目はスカートやズボンとなります。また、身体をどの程度包ませるかを分類すると、1と3は全身、2と4は一部という傾向になるでしょう。

以上、田中千代『世界の民俗衣装─装い方の知恵をさぐる─』平凡社、1985年。

千村典生による区分

西洋服飾史の観点から、千村は以下のような4区分を行なっています。

1に巻衣型、2に貫頭衣型、3に前開衣型、4に体型適合裁縫型

です。

  1. 巻衣型…辻原区分による懸衣型のうち巻衣形式に該当するもので別の言葉ではドレーパリー型(drapery)とも称されます。
  2. 貫頭衣型…辻原区分の懸衣型のうち貫頭衣形に該当。
  3. 前開衣型…辻原区分でいう寛衣型のうち前開き形式に該当。
  4. 体型適合裁縫型…辻原区分の寛衣型のうち寛袍形式に近しい。

4点目の寛袍形式は前開き形式以上に裁縫工程を踏まえている点で、千村の体型適合裁縫型(つまり4点目)と類似性をもちます。

他方で、寛袍形式は紀元後の東アジアで普及した平面構成に基づく衣服ですので、体型に適合しているとは言い難く、立体構成をもつ一部の西洋風ドレスを想起させる形態ともいえます。

また、体型不適合裁縫型というべき衣服は時代を遡るにつれ増えるだろうと簡単に予想されます。実際、貫頭衣型をポンチョ型として一部に両脇を縫合したローブを千村は挙げています(少数例だとして重視していませんが)。

以上、千村典生『ファッションの歴史』新訂増補、平凡社、2001年、2頁。

衣服形態の2類型 : モードの世紀からの提案

これら3者の4類型論は少々難点があります。ここでモードの世紀から提案したいのが衣服形態の2類型です。

3者に共通する難点は、上体衣という観点がたまにぶれることと、裁縫技術の扱いに混乱していることが挙げられます。

そこで、少なくとも胸部から臀部(でんぶ=ケツ)までを覆う衣服を上体衣として規定して、これらに裁縫技術の有無(多少)で区別する必要があります。

仮説

3者の言葉をふまえて仮説を立てると、

  1. 裁縫が施されていない上体衣は「懸ける」か「巻く」か「被る」ことになります。
  2. 裁縫が施された上体衣には「被る」か「着る」(帯・紐やボタンやファスナーなどを使って肩部分で衣服を身体に留める)ことになります。

となります。

両者の区分で重複するのが「被る」です。そこで衣服史を紐解いて、人類は何を被ってきたのかと思いだすと貫頭衣です。貫頭衣は、東アジアでは小幅織物を背中を縫い合わせ、腋下も縫い合わせて着用されました。ヨーロッパでは広幅織物を腋下で縫合していました。

結論

これをふまえて先ほどの仮説2点は次のように修正できます。

  1. 裁縫が施されていない上体衣は「懸ける」か「巻く」ことになります。
  2. 裁縫が施された上体衣には「被る」か「着る」ことになります。

この2類型の基準となる裁縫工程の有無を裏側からとらえれば、織物などの布をそのまま着用すると「1」、織物などの布を裁断縫製して着用すると「2」となります。これで衣服形態の原初的な類型は2分できます。