チュニック : 貫頭衣との関わりから

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チュニック : 貫頭衣との関わりから

チュニック : ほっそりとした筒形シルエットの衣服を指します。腰下や膝丈までのシンプルなドレス、ジャケット、ブラウスが代表的です。古代の連袖とは違い今のチュニックには袖付けが行なわれ、多くはセット・イン・スリーブになっています。英語でtunic。

キプロス サラミス島 チュニック 女性像

キプロス(サラミス島)にあるチュニックを着た女性像

一部に丈の長い略式の軍服やカトリックの聖職者がミサ時に着る丈の長い祭礼服をチュニックと呼ぶこともあります。

語源

チュニックはラテン語の「衣服」を意味するチュニカ(tunica)から派生した言葉です。「下着」と訳される場合がありますが、これは訳語は間違い。

ラテン語を使っていたローマ市民は下着兼上着として着ていた場合が多いので。下着としてチュニックを着れる立場と上着として使わざるを得ない立場があったことを想像して下さい。

チュニックの歴史と正しい説明

技術的な話 : チュニックの原型は貫頭衣

全てのファッション辞書がチュニックの構造に触れていませんので、先にこれから説明します。チュニックの原型は貫頭衣です。西洋では貫頭衣は14世紀頃まで一般的な衣服でした(貫頭衣の印象)。

https://www.mode21.com/tailoring-in-europe/#i-2

Roman clothing | Fashion(外部リンク)」にも古代ヨーロッパでは何よりも服がシンプルである必要があったこと、そして針が使いにくくステッチや縫製が最小限に抑えられていたことが記されています。

ヨーロッパでは古代から2メートルくらいの幅広い生地を織っていました。着る時はその生地にボタンやブローチを使って肩で留めていました。つまり前後2枚重ねにするわけですが、その生地を水平にすればチュニック、90度傾ければポンチョになるわけです。

Roman clothing | Fashion」では肩縫いの場合もあったと記されていますが、ステッチや縫製の困難さを考えると、古代になればなるほど縫製の施されたチュニックは少ないと考えられます。

辞書批判とチュニックの新しい説明

チュニックはローマ市民が着用し、袖付きや袖無しの筒形をした日常着でした。膝丈や足首丈の長さで装飾の少ないゆったりした服でした。ベルトは付いたり付かなかったり。

色んな辞書をまとめるとこのような説明になります。チュニックの原型を思い出すと、この説明では足りません。貫頭衣からチュニックの分化を説明する必要があります。

キプロス サラミス島 チュニック 像

キプロス(サラミス島)にあるチュニックの像

貫頭衣は東アジアでは背縫いの習慣がありました。これに対しヨーロッパでは肩留めになります。つまりチュニックとは貫頭衣の一種で、布を前後に重ねてボタン、ブローチ、縫製などで肩を形成し、臀部(お尻)を覆うエイチ・ライン(または緩いエー・ライン)の衣服、ということになります。

したがって着る方法は基本的に「被る」ということになります。また肩を形成するボタン、ブローチ、縫製などの片方を外せばチュニック・グレック(tunic grecque)になります。

チュニックの種類

チュニックには多くの種類があります。チュニックは布を水平に使った衣服とほぼ同義なので、貫頭衣からチュニックとポンチョに分化した点をふまえると、ほぼ全ての衣服に当てはまります。したがってチュニックの種類は厳密な区分ではありません。

肩縫線が当たり前の現代では、臀部(お尻)を覆う丈以上の長さをもったエイチ・ラインの衣服としてチュニックという言葉が使われています。

カフタン・チュニック 木綿製

木綿製のカフタン・チュニック。

  • チュニック・コート(tunic coat)…腰丈までの短めのコート。
  • チュニック・ジャケット(tunic jacket)…腰丈以上の長いジャケット。チュニック・ジャケットのうち、トルコ辺りで着られていた上衣カフタンをヒントに両脇に長いスリットを入れたものはカフタン・チュニック。同じく両脇に短めのスリットを入れたのは中華風チュニック(チャイニーズ・チュニック)。
  • チュニック・シャジュブル(tnique chasuble)…シャジュブルは袖なしのこと。丸いネック・ラインで丈が長く脇が空いたチュニックのことで、聖職者が着るチュニックに似ています。
  • チュニック・スカート(tunic skirt)…普通のスカートの上にさらに短いオーバー・スカートの付いたもの。このうち、上のスカートの後が縦に割れている場合はエプロン・チュニック、前後に付けた2枚のハンカチーフ状のオーバー・スカートの場合はハンカチーフ・チュニックといいます。また、スカート部分が膨らんだ二重スカートはアルジェリア風チュニック
  • チュニック・スーツ(tunic suit)…腰丈までの長いジャケットとスカートまたはズボンの組み合わせ。ロング・ジャケット・スーツともいいます。
  • チュニック・ブラウス(tunic blouse)…エイチ・ラインのオーバー・ブラウスの総称。膝丈辺りまであり、ベルトの付いたものが多いです。ウェストにはギャザーが入ったものと入らないストレートなものがあります。
  • チュニック・ドレス(tunic dress)…オーバー・ドレスの同じく細いスカートの上に長めのジャケットを組み合わせたもの。スカートがほとんど見えないのでドレスといわれます。1955年にクリストバル・バレンシアガが発表しました。彼の作品は特にチュニック・ラインとも呼ばれました。スカートの代わりにパンツに重ねることもあります(この場合チュニック・スーツとも)。また、ミニ・ドレスとしてオーバーブラウスだけで着ることもあります。チュニック・ドレスのうち、パイプのように細いシルエットのチュニックで、打ち合わせが後身頃にあって上から下までボタン留めの形態をしたドレスはチューブラー・チュニック。8分の7丈のルダンゴト(シェーブ・コート)はルダンゴト・チュニック