スポーツ・ウェア Sports Wear : 20世紀の展開

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スポーツ・ウェア : 概要

スポーツ・ウェア Sports Wear は、スポーツ競技やスポーツ観戦用の服装の総称で「運動着」の名を充てたものです。1930年代のアメリカで発生した用語。20世紀になって、衣服がTPOで区別されるようになってから、スポーツ用の衣装として独立しました。それまでは世界中で仕事着と部屋着の区別が薄かったのです。例外的に、19世紀後半のニッカーズやブルマーズをスポーツ・ウェアと見ることもできますが。

とくに、スポーツ競技用の場合は、各スポーツの規定・ルールで形態が定められた場合がほとんど。スポーツ観戦用の場合は、イン・フォーマルな日常着もふくめ、カジュアル・ウェアと同義で使用されます。この場合、カジュアルな単品(ブラウス、シャツ、ベスト、ジャケット、パンツ、スカートなど)をいい、前者、すなわち、アクティブ・スポーツ・ウェア(スポーツするときの「運動着」)とは区別されます。現代は後者の意味でよく使われています。

略史

イギリスでの展開

呼称はアメリカで生まれましたが、衣服としてのスポーツ・ウェアの多くはイギリスで生みだされました。代表的なものにノーフォーク・ジャケット norfolk jacket が挙げられます。これはベルトやハーフベルトをはめ込み、背中と前部にボックス・プリーツ(大きな襞・折り目)がある緩やかなシングル・ブレストのジャケットです。ベルトはほとんど飾りに近く、なかには緩い背バンドを付けただけのデザインもありました。元々は発射されたときに射撃用コートで発射時に肘が束縛されないように設計されたものです。このジャケットに最もよく使用される素材はハリス・ツイードでした。この素材が登場したのは1920年頃で、原産地はヘブディーズ諸島のハリス島でした。

「運動用プリーツの付いた完全なノーフォーク・ジャケット」

「運動用プリーツの付いた完全なノーフォーク・ジャケット」”Full Norfolk Jacket with Action Pleats” via The Norfolk Jacket Guide – History, Style & How to Buy — Gentleman’s Gazette

一方、このジャケットの下に組み合わせるニッカーボッカーズは第1次大戦中に、イギリス軍将校たちによって広められました。ニッカーズは乗馬ズボンに似て膝下をし絞った短ズボンですが、乗馬ズボンと異なる点は絞った部分が少し膨らんでいることです。1930年以降にその膨らみは増し、同時に絞る位置は低くなりました。そして、イギリス軍が生みだしたこのスタイルは長年にわたって、プラス・フォアーズ plus fours と呼ばれるようになりました。つまり、膝下に4インチ分プラスした長さが定着したわけです。その後、絞る位置はますます低くなり、第2次大戦を迎える頃には踝(くるぶし)の少し上に設定されるようになりました。それ以来、イギリス軍師団の中には制服のズボンにこの長さを取り入れてることが増えていきます。

「ノーフォーク・ジャケットを着たフィリップ王子。1952年。

「ノーフォーク・ジャケットを着たフィリップ王子。1952年。”Prince Philip in Norfolk Jacket in 1952″ via The Norfolk Jacket Guide – History, Style & How to Buy — Gentleman’s Gazette

アメリカでの展開

第2次世界大戦までのアメリカのモード界では、パリのオート・クチュールがファッション・リーダーとされており、アメリカ独自のファッションが停滞していました。大戦勃発後にパリからの衣服の輸入が停止し、アメリカ独特のスタイルが必須となって、クレア・マッカーデル(Claire McCardell, 1905~1958年)らの活躍をみました。マッカーデルは、1942年にダイアパー水着(おむつパンツ水着)、ラップ・ドレス、1943年にレオタード、1944年に街着用のバレリーナ・シューズなどを続々と発表。他にも、ホールター・ネック、デニムとデニムのステッチなど斬新なアイディアにあふれた作品を発表しました。マッカーデルのアイデアの源は、アクティブ・スポーツウェア。以後、セパレートで、身体にフィットする動きやすいマッカーデルのアイデアは、アメリカの既製服の基本原則となりました。

クレア・マッカーデル 「遊戯服」。クレア・マッカーデルはスポーツ・ウェアを普及させたデザイナーとして知られます。Playsuit by Claire McCardell, 1948. Cotton, metal

クレア・マッカーデル 「遊戯服」。クレア・マッカーデルはスポーツ・ウェアを普及させたデザイナーとして知られます。Playsuit by Claire McCardell, 1948. Cotton, metal via Claire McCardell | Playsuit | American | The Met

フランスでの展開

ヨーロッパでは、1960年代からフランスのアンドレ・クレージュがスポーツ・ウェアの柄構成をドレスに応用したり、自動車レースで使われた旗をビーチ・ウェアに転用するなどの斬新なデザインを発表しました。彼のストライプやチェックの柄はスポーツ・ウェアからの応用が着本でした。

サン・スーツとスパンコール付き自動車レース・フラッグ。sun suit with auto racing flag of sequins © André Courrèges, photographed by Pierre Boulat, "Life", May 21, 1965

sun suit with auto racing flag of sequins © André Courrèges, photographed by Pierre Boulat, “Life”, May 21, 1965

クレージュ以外では、1987年の春夏ニューヨーク・コレクションで「クリーン」「ファンクショナル」「スポーティ」をテーマにした作品が次々に発表されました。ジャンポール・ゴルチエ Jean-Paul GAULTIER の未来派風のスピード感溢れるスタイル、ジャスパー・コンラン、ティエリー・ミュグレル(ティエリー・ミュグレー : Thierry Mugler)、シャンタル・トマスのアメリカン・スポーツウェアなどです。これらは、ホールター・ネック、ミドリフ・トップ、落下傘スカート、バーミューダ、デニムやキャラコやギンガムなどの素材、ジッパー、リベットの空きなどを特徴とした1950年代のアメリカの既製服、すなわち、ジ・アメリカン・スポーツ・ウェア(定冠詞 the に注目)の再来でした。1986年にニューヨークのファッション工科大学(FIT)で開催された「スリー・ウィメン」とよばれる展覧会では、マッカーデルの作品をはじめ、マドレーヌ・ヴィオネ、川久保玲の作品が展示されました。

関連リンク