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普通袖(セットイン・スリーブ):奇妙なファッション用語の意味

批判と理論
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普通袖

普通袖(ふつうそで)は英語のset-in sleeve(セットイン・スリーブ)の訳語です。

セットイン・スリーブは、布を身頃部分と袖部分に裁断した後に縫合した袖や技術を指します。日本語では袖付けや袖縫い、中国語では接袖や装袖といいます。普通袖とは洋裁を基準とした「普通」です。

稀に着物袖で袂の短い袖を普通袖と呼ぶ場合がありますが、辞書的には次のような語義に収まります。

  • セットイン・スリーブ[set-in sleeve]セット・インとは<きまる><定まる>という意味で、普通のそでぐりにつけられているそでをいう(田中千代『服飾辞典』同文書院、1969年、498頁)。
  • セットイン・スリーブ[set-in sleeve]通常のアームホール位置につけられた基本的なつけ袖のこと。<普通袖>ともいい、最も基本的な袖の形式(文化出版局編『ファッション辞典』文化出版局、1999年、83頁)。

袖の説明は難しい

これらの説明は形態を無視しているため何が「普通」か分かりません。

20世紀初頭でも袖の説明は難しかったようです。

服飾辞典としては早期の部類に入る永井英次郎『洋服辞典』によると、「スリイブ」とは「袖」の1文字で終わります。

その袖に( )の付された説明では「洋服の袖には大体、男子服の袖と、婦人服の袖と、小供服の袖と三種の異りたる形あり。その中、婦人服の袖は袖付けに非常に大いなるものなり」(永井英次郎『洋服辞典』洋装界社、1910年、154頁)と、ほとんど何も説明していません。

はじがきの箇所に「調製其他万般の事に資すべき」とありますから、洋装界(洋服業者)向けに編んだ辞典なので形態説明は不要です。

住み分けられた紳士服業界、婦人服業界、子供服業界の区分を重視した説明になっています。

前近代日本の袖

前近代の日本では腕の付根周辺を袖という言葉で理解しませんでした。

つまりアーム・ホール(arm-hole)の概念がありません。

このページに紹介している「女物長着 広衿の図」も「民国期旗袍の再現」も示すように、アーム・ホールの概念がない点は東アジア地域では共通にみられます。

着物(kimono)はアウターウェアになった江戸時代の小袖が源流。広くいわれるように中世までの小袖は下着でした。前近代日本では小袖が定着し、一部には振袖が着用されていました。

小袖は袖口が小さい着物を指し、振袖は、袖口から垂れ下がった袂の長さを示した言葉です。このように、腕周辺の複数部分を袖は意味してきました。

しかし、今では袖と呼ぶ部分の内、腕の付根周辺を前近代の日本では袖と呼びませんでした。

その理由は、小袖や浴衣等の着物に身頃や肩と腕(袖)とを分けて裁縫する思想が無く、衣服上に肩という部分が存在しないからです。

なお、着物には二の腕辺りに縫目がありますが、あくまでも身頃幅で裁断して裁ち出しが足らない場合の縫目です。

外部リンク「基礎編4 着物の外見 ; 着物あきない」には「女物長着 広衿の図」があります。ご参照ください。

前近代東アジアの袖

腕の付根周辺を袖という言葉で理解しなかったのは前近代の東アジア全般にいえます(東アジア民族衣装の展開:袖と衣裳からみた古代中華圏の影響)。

身頃・肩と袖(と身頃)を区分する発想がなかったのですから、セットイン・スリーブとは、アーム・ホールを発生させる、衣服形態上に現れた洋裁の画期的な技術だったわけです。

そこで、洋裁中心に袖を見た場合にセットイン・スリーブは基本形となる理由から「普通袖」というようになったと考えられます。

洋裁の中でセットイン・スリーブが占める重要性は蔑ろにできません。私たちが普段に着る服のほぼ全てがセットイン・スリーブ状の服です。

 

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いろんなファッション歴史の本を読んで何も学べなかった残念なファッション歴史家。パンチのあるファッションの世界史をまとめようと思いながら早20年。2018年問題で仕事が激減したいま、どなたでもモチベーションや頑張るきっかけをください。

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