モード・イン・ハリウッド : 映画衣装の入門書として最適

モード・イン・ハリウッド は、ハリウッド映画と衣装の見えないドラマを掘り起こして、ファッション業界誌「繊研新聞」にサタデー・スペシャルとして連載を続けている一部をまとめた本です。連載記事以外に150枚ほど(6万字)を加筆し、ボリューム感が出ています。

高橋暎一『モード・イン・ハリウッド―デザイナーと女優たち―』フィルムアート社、1992年

モード・イン・ハリウッド 大目次

  • はじめに モードのインスピレーション―スターとデザイナー―
  • 第1章 時代のモードを象徴するミューズたち
  • 第2章 スターを輝かせたデザイナー
  • 第3章 ヒロイン時代の終わり―レディスからメンズへ―
  • おわりに―ヴィーナスとアントワネットの間―「水着美人」から「マドンナ」まで―

で、巻末にアカデミー衣装デザイン賞一覧、人名索引、映画題名索引が付されているので便利です。

1項目あたりに2~3ページが割かれていて、その内、たいてい1頁分は映画場面の写真が大胆に載せられているので読みやすく、また視覚効果も抜群です。第1部は各女優の説明に詳しく、その傾向は衣装よりも女優略伝に向いています。ハリウッド女優たちの略伝として使えます。また、第2部はデザイナー(衣服設計師)に関する記載を集めています。これらをモードの歴史として捉え直すのが第3部。

そもそも、映画のクレジットにデザイナー名は出てきますが、きちんと映画を論じた批評や評論に服飾を焦点にしたものはほとんどありません。本書はその不足を埋めてくれます。映画と衣装の関係を知りたい場合、この本から出発するのがお勧めです。

モード・イン・ハリウッド グレタ・ガルボとマレーネ・ディートリヒの相克が面白い
グレタ・ガルボ(ジョージ・ハーレル撮影)。Greta Garbo photo by George Hurrell, Greta Garbo | George Hurrell

モード・イン・ハリウッド の内容

人名索引、映画題名索引はいずれも詳しいので、以下では当サイトの注目する人物がどうなのかを少し論じます。といっても、ほとんどグレタ・ガルボ Greta Garbo とイーディス・ヘッド Edith Head セシル・ビートン Cecil Beaton くらいですが…。

まず、1930年代。ギャルソンヌ・ルックの名残が多く語られます。「”モダン・ガール”の元祖 クララ・ボウ」の次項目に、「北欧の神秘的表情が魅力 グレタ・ガルボ」が述べられています。クララ・ボウが2頁に対しグレタ・ガルボは3頁。次いで、ガルボと比較されやすいマレーネ・ディートリヒが「ドイツからきたマニッシュ・ルック」のフレーズで述べられます。彼女には4頁が割かれていますね。「パラマウント社がディートリッヒを輸入したのは、MGMの女王ガルボの対抗馬としてであった」(同書42頁)とのことで、42~43頁では「ハリウッドで”女王”たちが乱立・競演」との項目で、この辺りの事情を要約しているのが面白い。当初はガルボをディートリッヒが追う形だったのですが、途中で立場は逆転します。

1950年代になると、映画は見ていなくても名前は聞いたことのある女優たちが増えていきます。「恋多き”世界一の美女” エリザベス・テーラー」、「エレガントな令嬢女優 グレース・ケリー」、「官能のリズムにみちあふれていたマリリン・モンロー」、「”永遠の清純スター”オードリー・ヘプバーン」…。見るべき映画が私たちの老後を占領しそうな勢いです。

モード・イン・ハリウッド グレタ・ガルボとマレーネ・ディートリヒの相克が面白い。この写真はウジェニー・ハットを被るグレタ・ガルボ。
Greta Garbo photo by John Springer, via The Image of Garbo – Fotografiska

以上は第1章で、女優に主眼が置かれていました。第2章はデザイナーです。

まずハリウッド映画で避けられないデザイナーはイーディス・ヘッド。「パラマウントに君臨した映画衣装のナンバーワン」と冠されています。他のデザイナーを列挙しましょう。ルメーア、トラヴィーラ、アイリーン・シャラフ、アイリーン・レンツ、ヘレン・ローズ、ウォルター・ブランケット、オリー・ケリー、ユベール・ド・ジバンシーセシル・ビートンギルバート・エイドリアントラヴィス・バントン、デオニ・V・アルドリッジ、アンソニー・パウエル、アン・ロス、テオドール・ピステック、ジェームス・アチェソン、ミレーナ・カノネロ、スカルノ・チャピーノ。80年代以降のデザイナーは簡単に紹介されています。マリリン・バンス=ストレーカー、リチャード・ホーナング、リチャード・ブルーノ、マーリーン・スチュワート、エレン・ミロジニック、ジョン・モロ、ジェフリー・カーランド、アルバート・ウォルスキー。

第3章は、男女の映画衣装をトータルにまとめ直し、ハリウッドのスタジオシステムの変化、パリのオートクチュール業界のプレタポルテ進出と、その映画産業への影響、などの項目が映画策人や女優、それにデザイナーとの関わりで業界史として述べられています。なかなか読めないテーマです。ジュリア・ロバーツやジョディ・フォスターには言及されています。

最後に面白い企画として、巻末付録のアカデミー衣装デザイン賞一覧を元に「アカデミー衣装デザイン賞に見るモードの変遷」と題した分析がなされています。

高橋暎一『モード・イン・ハリウッド―デザイナーと女優たち―』フィルムアート社、1992年


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[投稿日]2017/02/24
[更新日]2017/05/27