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トレンチ・コートのディテールと語源

「トレンチコートは20世紀初頭の軍隊のニーズに応えるために開発されました。エポレットは将校の階級を示し、ベルトのメタル製Dリングは軍事用品を下げるためにあしらわれました。」 アイテム用語集
「トレンチコートは20世紀初頭の軍隊のニーズに応えるために開発されました。エポレットは将校の階級を示し、ベルトのメタル製Dリングは軍事用品を下げるためにあしらわれました。」 via 伝統 | バーバリー

トレンチ・コート(trench coat)とはダブルのベルト付きコート。綿や薄手のウール素材で、エポーレット(肩章)と2枚のヨークが付いた防水加工のコートです。「キング・オブ・メンズ・コート」の異名をもちます。

戦闘用にデザインされたのが発端で、複雑なディテール・デザインが施されています。トレンチ・コートは、色んな場所に色んなものが付けられた、いわば「機能の集合体」といえるコートです。

謎めいた存在感を放ちたいときにトレンチコートは威力を発揮します。

ヴィンテージな葉書。第一次世界大戦中にトレンチコートを着た女性工場労働者のグループ。場所はウーリッジ・アーセナル。

ディテール

機能の集合体といえるトレンチ・コート のディテールを見ましょう。

袖は運動性を持たせるために、ラグラン・スリーブかセミ・ラグラン・スリーブが多く採られています(稀に、セット・イン・スリーブも)。

肩にはエポーレットやガン・パッチ(元は銃床を支える目的)、胸にはストーム・フラップ・ポケット(二重覆いの雨ぶたつきポケット)が付けられいます。

ウェストには、ミシン・ステッチを掛けたベルトを締め、後ろ身頃は、ウェストまでがセンター・シームにステッチが入り、背中にケープ・バック(当て布)がボタンで留められています。また、顎(あご)を覆うチン・ウォーマーもあります。

ベルト、エポーレット、当て布などは全て、表地と共地になっています。カフスは、タブまたはストラップ付きで、全体の調和を整えます。生地は、ウールや綿などのギャバジンやツイルが主です。なお、ギャバジン生地の開発はバーバリー (Burberry) 社が行ないました。

トレンチ・コート : 「トレンチコートは20世紀初頭の軍隊のニーズに応えるために開発されました。エポレットは将校の階級を示し、ベルトのメタル製Dリングは軍事用品を下げるためにあしらわれました。」

「トレンチコートは20世紀初頭の軍隊のニーズに応えるために開発されました。エポレットは将校の階級を示し、ベルトのメタル製Dリングは軍事用品を下げるためにあしらわれました。」 via 伝統 | バーバリー

語源と起源:戦争との関係

トレンチは英語で「塹壕」の意。第1次世界大戦で、フランスとドイツ間の西部戦線で戦闘が膠着し、長期的な塹壕線となりました(第1次大戦は塹壕戦がメイン)。

その時、イギリス陸軍が採用した戦闘用防水コートがトレンチ・コートのデザインの起源です。当時のイギリス陸軍はバーバリー製のトレンチ・コートで統一されていたそうです。

防水加工されたトレンチコート

また、ラテン語で社名が防水を意味する「アクアスキュータム社」(Aquascutum)のトレンチ・コートも有名。1901年にイギリス戦争省はトーマス・バーバリー卿に兵士に支給する軍用コートの開発を依頼しました。生地に耐水性を与える防水加工の特許をめぐっては、今なおマッキントッシュとアクアスキュータムとでは見解が異なっています。

このように、当初は防水性と機能性に重点を置いてデザインされていました。後々になってスポーティな感覚が男女ともに一般用コートのデザインとして人気を呈し、トレンチコートは第1次大戦後のレイン・コートやダスター・コートの代表格となりました。現在、トレンチ・コートはさらに広い範囲で着用されています。

ハリウッド映画に採り入れられたトレンチコート

トレンチコートはすぐさま戦争のイメージを再現できる理由から、ハリウッド映画界はフィルム・ノワールを内包するためにトレンチコートを採り入れてきました。多くのファッション・ブランドが数々のカラーバリエーションを作りましたが、トレンチコートを最大限に表現する色は、今でもベージュです。

映像にみるトレンチコート

トレンチコートの登場する映画で有名なものには、次のような作品があります。

  • マイケル・カーティス監督「カサブランカ」1942年:ハンフリー・ポガート
  • スタンリー・ドーネン監督「パリの恋人」1957年:オードリー・ヘプバーン
  • ロバート・ベントン監督「クレイマー、クレイマー」1979年:メリル・ストリープ
  • アラン・J・パクラ監督「コールガール」1971年:ジェーン・フォンダ
  • エイドリアン・ライン監督「ナイン・ハーフ」1986年:キム・ベイシンガー
  • ラリー・ウォシャウスキー&アンディ・ウォシャウスキー監督「マトリックス」1999年・2003年

マレーネ・ディートリッヒ出演の「情婦」

トレンチコートのカリスマといえばマレーネ・ディートリッヒです。ビリー・ワイルダー監督「情婦」(1957年)で演じたクリスティーネ・ヴォール役。衣装はイーディス・ヘッドが担当しました。この作品でトレンチコートはクリスティーネの捕らえどころのない魅力を作品の大半で気だるく包み込んでいます。

次の画像は1948年に公開されたビリー・ワイルダー監督の映画「異国の出来事」です。

1948年に公開されたビリー・ワイルダー監督の映画「異国の出来事」の一場面。

ビリー・ワイルダー監督「異国の出来事」でトレンチコートを着たマレーネ・ディートリッヒ

男性にとってトレンチコートは甲冑として、官能的な雰囲気を醸し出しながら男らしさを増幅します。女性にとってはウエストをベルトで絞ったシルエットが砂時計を思わせ、女らしさを増幅させます。

男性はズボンとセットでトレンチコートを着用しますが、女性の場合はスカートとの組み合わせも多いです。ディートリッヒがトレンチコートのアイコンとして定着したのは、1930年代・1940年代のように、女性美基準が脚から胸へ移動していく渦中の時代にあって、まだまだ脚を晒すことがセックスアピールとして十分に機能していたからでしょう。

カトリーヌ・ドヌーヴのトレンチ・コート

カトリーヌ・ドヌーヴの着るトレンチ・コート。フランソワ・トリュフォー監督『暗くなるまでこの恋を』(1969年)。La sirene du Mississipi / Mississipi Mermaid

カトリーヌ・ドヌーヴの着るトレンチ・コート。フランソワ・トリュフォー監督『暗くなるまでこの恋を』(1969年)。La sirene du Mississipi / Mississipi Mermaid (c) 1969 Les Films du Carrosse.

フランソワ・トリュフォー監督『暗くなるまでこの恋を』(1969年)に出演したカトリーヌ・ドヌーヴのトレンチ・コートが上の写真です。カーキ色一色で統一された点はトレンチ・コートが軍用であったことを引きずっていますが、他方でガン・パッチが装飾用の大きな襟に隠れている点は民用衣料品だと示しています。

五明祐子のトレンチ・コート

トレンチ・コートは最近「マリソル」誌(集英社、2017年10月号)で43頁~49頁まで特集されました。「マリソル モデルズ We Love トレンチ!」です。

モデルは、SHIHO、ブレンダ、知花くらら、佐田真由美、渡辺佳子、五明祐子の6人。パラパラ捲って一目ぼれしてしまったのが五明祐子。

トレンチ・コート : 五明祐子 マリソル

五明祐子「マリソル」集英社、2017年10月号、49頁。

紺のブラウスにアマン・パンツの組み合わせ。ラフ過ぎるのですが、ルーズではありません。その上からグレーのトレンチ・コート。

アラフォーになってトレンチ・コートを着る時にヒールの靴を止めてスニーカーやバレエ・シューズに変えて少し力を抜いた感じで羽織ると述べています。シンプルに決まってます。

ガン・パッチは装飾用に大きくなっているのに、白黒のグレナカート・チェック(Glenurquhart check とも Glen plaid とも)がシックにまとまっています。

  • トレンチ・コート : マッキントッシュ ジャパン(マッキントッシュ メル キルト)
  • ブラウス : アンスクリア
  • ベルト : アンボワーズ
  • アマンパンツ : ビームスハウス丸の内(チノ)
  • バングル : フラッパーズ(シンパシー オブ ソウル スタイル
  • バッグと靴 : J&M デヴィッドソン青山店(J&Mデヴィッドソン)
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