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水玉と網 – 束縛と逃走 : 「草間彌生展―永遠の現在―」を観て

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水玉と網 : 束縛と逃走

水玉と網 : 京都へ「草間彌生展―永遠の現在―」を観に行きました。最終日だったが、場内が広々としていたのでストレスをあまり感じず楽しめました。

写真家の荒木経維(アラーキー)とのコラボがあるということくらいしか知らずに見に行ったのですが、草間の初期の絵は肉感的でダリに似ているところがあり、面白みを持たせようとしながらも、ひたすら暗いのが印象的。

水玉と網 : 草間彌生 永遠の現在 京都国立近代美術館 2005年

草間彌生の水玉と網 : 永遠の現在 京都国立近代美術館 2005年

その暗さは1960年代、1970年代のあの「水玉」になっていくのですが、水玉の一連の作品は白と赤の配色が多く、それが今度は突き刺さってくるような気分になります。強迫神経症や幻聴・幻覚が彼女の特徴としてパンフレットに書かれていますが、あの水玉は男性、あるいは男根として描かれているように思えて仕方がありません。

感受性の強過ぎる草間にとっては男根があのような形で大きな迫り来るものとして現われているのでしょうか。

1980年代頃の作品になると少し分かりやすくなります。水玉から「網」をテーマにした作品へと少しずれますが、金網や漁網(とおぼしき)物を使った作品が並んでいて、このような網は「束縛」や「補足」の意味をもっています。同時に、そこからの「逃走」という意味も発生します。彼女のモチーフの一つ「自己消滅」もまた、束縛や補足の結果として理解できるのではないでしょうか。

草間弥生『草間弥生 永遠の現在』美術出版社、2005年

網タイツとストッキング

そう、網タイツ一つ取ってもそれは脚を「縛る」ものであると同時に、肉が網から「はみ出る」という状態も誘うわけで、どこかマゾヒスティックな面とサディスティックな面を双方備えた物として現前しています。

私はストッキングも網タイツが大好きですが(見る者として)、両者は脚に穿くものとはいえ意味が違います。フルファッションドのストッキングは「束縛」的な意味合いの強いパンティ・ストッキングの中にたった一本で攻撃性を備えているわけですから、どちらかといえば網タイツの感じを持っているのでしょう。

水玉と花の性別

それはともかく、最初の荒木とのコラボの話に戻りますが、水玉がどうしても男根にしか見えないのは荒木の作品で撮されている様々な花が女性器にしか見えないという点とピッタリ合っているなぁと思います。ロバート・メイプルソープだって花は女性器なのですが、グロテスクに花を写し出す荒木と違いメイプルソープは茎とともにシャープに撮ります。

荒木は女好き、メイプルソープはバイセクシャルという違いだといえば単純すぎるでしょうか…。荒木とメイプルソープの違いについてはコラム「花と茎 : ロバート・メイプルソープ展」を参照して下さい。

もとい、草間彌生の展覧会は、記憶では男性客が10名前後に対し女性客の方が圧倒的に多かったと思いますが、作品の根源が男根であろうとなかろうと、可愛く描こうとした草間自身のあどけなさを受けて女性からの人気があるのだと思います。

私としては「あぁ、男性に迫られたらこんな気分になるのか」と、恐らく一生に一度であろう体験ができたように思い、不思議な気分で会場を出ました。

一言で言えば水玉は可愛いのですが。

展覧会情報

「草間彌生展-永遠の現在」京都国立近代美術館
2005年1月6日(木)~2月13日(日)

草間弥生『草間弥生 永遠の現在』美術出版社、2005年

パンフレットから(草間彌生略歴)

長野県松本市に生まれる。少女時代から幻視・幻聴体験にみまわれる中で水玉と網模様をモティーフに絵を描きはじめる。1948年より京都市立美術工芸学校で日本画を学んだのち、1952年に初個展。1957年に単身渡米。ニューヨーク他で発表した「編目の集積」によるモノクローム絵画で一躍注目され、欧米各地の国際展に参加する。その後も布製の突起物で覆われたソフト・スカルプチュアや、鏡張りの一室に電飾をほどこしたインスタレーション等を創始。1966年ヴェネツィア・ビエンナーレにゲリラ的に≪ナルシスの庭≫を出品。また1960年代後半には反戦など社会的メッセージをこめたパフォーマンスのほか、ボディ・ペインティングやファッション・ショーなど多数のハプニングを展開した。映画も製作、自作自演の映画≪草間の自己消滅≫(1968年)は第4回ベルギー国際短編映画祭など各地の映画祭で入賞。1973年に帰国後は小説家・詩人としても活躍、『クリストファー男娼窟』で第10回野生時代新人賞を受賞した。北九州市立美術館(1987年)、ニューヨーク国際現代美術センター(1989年)などで個展を開き、1993年にはヴェネツィア・ビエンナーレ日本代表となる。1998-99年、ロサンゼルス・カウティ・ミュージアムを皮切りにして、ニューヨーク近代美術館、ウォーカー・アート・センター、東京都現代美術館を巡回する大回顧展が開催された。2000-03年にはインスタレーションを中心とした個展が、コンソルシウム(ディジョン)からはじまり、パリ日本文化会館やアート・ソンジェ・センターなど欧州および韓国を巡回。

2004年には森美術館と札幌芸術の森美術館で、KUSAMATRIXが開催されました。2000年第50回芸術選奨文部大臣賞受賞、2001年朝日賞受賞、2003年フランス芸術文化勲章オフィシェ受勲、2004年信毎賞受賞。

草間弥生『草間弥生 永遠の現在』美術出版社、2005年

「装苑」2004年5月号:特集「草間彌生とファッション」

「装苑」2004年5月号で「草間彌生とファッション」という特集が組まれました。ラインナップは次のとおりです。

  • 草間彌生からインスパイアされたアントニオ・マラス
  • 蜷川実花特写 mode session in KUSAMATRIX
  • 草間彌生のアートとファッション(高木陽子)
  • 皆川明の時のかさなり vol.17 草間彌生×皆川明
  • 水玉のダンス―草間彌生へのオマージュ―

草間彌生からインスパイアされたアントニオ・マラス

アントニオ・マラスは1961年にイタリアに生まれたファッション・デザイナーです。故郷アルゲーロへの愛が強く、ミラノ、パリ、アルゲーロを往復する毎日。

草間彌生 アントニオ・マラス 装苑 文化出版局 2004年5月号

草間彌生からインスパイアされたアントニオ・マラス(「装苑」文化出版局、2004年5月号、12・13頁)

この特集では草間彌生から影響を受けたアントニオの作品7点が公開されています。2004年春夏ミラノ・コレクションでアントニオ・マラスはキュートなモデルを集めて水玉ファッションを発表しました。このコレクションの2寝前にアントニオはパリの日仏会館で草間彌生の写真に出会ったのがきっかけでした。

蜷川実花特写 mode session in KUSAMATRIX

クサマトリックス:草間彌生展でのハプニングを蜷川実花が激写

(「装苑」文化出版局、2004年5月号、14頁)

とも題された蜷川実花の写真展。

クサマトリックス 草間彌生展 ハプニング 蜷川実花 装苑 文化出版局 2004年5月号

クサマトリックス:草間彌生展でのハプニングを蜷川実花が激写(「装苑」文化出版局、2004年5月号、14・15頁)

2004年に六本木ヒルズの森美術館で開催されました。その中から7点の作品が掲載されています。この写真展は最新のクサマ・ワールドを体感できるといわれ、展覧会場ではアートとモードが融合するとのこと…。

その融合を垣間見られる草間の略歴を追ったのが次のエッセイです。

草間彌生のアートとファッション(高木陽子)

これは草間彌生の略伝に彼女の写真を添えたエッセイです。

よくある水玉

草間の制作風景や写真作品を見ていると、1960年代のスウィンギング・ロンドンを思わせるものが多いことが分かります。その上で生地に水玉を散りばめるというスタンス。

また、生足に水玉のシールを貼る写真も多いですね。1960年代はナイロン・ストッキングやパンティ・ストッキングが大流行しましたが、生足に水玉シールを貼られるとストッキングを穿いているように見えて幻惑されます(私だけか?)。

第2次大戦中にイギリス人女性やアメリカ人女性たちが脚の後側(ふくらはぎ側)に縦線を1本入れてフルファッションドのストッキングを穿いているようにみせたというエピソードを思い出しました。

珍しい水玉

他方で、その頃の草間は衣装デザインにも関心があって、衣装フォルム自体を変革しようとする意志も持っていたことが伝わります。たとえばイカ・ドレス。頭から被るもので、布量が少なく腕や足が全開になっています。おまけに乳房の部分はくり抜かれて露出…。

生地や人体に水玉というのは在り来たりすぎるのですが、ドレスのフォルムを水玉にするという発想はなかなかありません。その点に私は草間の前衛性を感じました。その意味では蜷川の箇所で紹介した紅白の水玉ドレス(下の写真)が現在の草間らしい衣装といえます。

クサマトリックス 草間彌生展 ハプニング 蜷川実花 装苑 文化出版局 2004年5月号

クサマトリックス:草間彌生展でのハプニングを蜷川実花が激写(「装苑」文化出版局、2004年5月号、15頁)

この作品説明で残念なことに、ドレスのデザイナーだけが「スタイリスト制作」と記されているだけです。イヤリングやハイヒールは社名と値段が記されているだけに悔しい所…。ちょっと「装苑」が単なるカタログ雑誌に思えた瞬間でした。

高木陽子 草間彌生のアートとファッション 装苑 文化出版局 2004年5月号

高木陽子「草間彌生のアートとファッション」(「装苑」文化出版局、2004年5月号、25頁)

最後にもう一つ珍しい水玉を。エッセイの記事そのものにありました。つい忘れがち…。次の写真のように、草間特集の文章部分には白色地に赤色の水玉がまぶされています。