新しいファッション史

モードの世紀は、人類のファッション史をまとめ直し、躍動感ある歴史を描きます。
主にフランス、イギリス、イタリア、アメリカ、中国、台湾、日本に注目します。

これまでのファッション史は西洋か日本か、意味不明の二項対立に固執しました。
和洋。何て厚かましい言葉でしょう。

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ファッションのポイント メタリック

ファッションのポイント メタリック : 解説・中村乃武夫、モデル・松本和子、撮影・横須賀功光。 モード写真集
ファッションのポイント メタリック : 解説・中村乃武夫、モデル・松本和子、撮影・横須賀功光。
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ファッションのポイント メタリック

ファッションのポイント : この写真とエッセイが掲載されたのは「婦人画報」1966年11月号、95頁です。解説は中村乃武夫、モデルは松田和子、撮影は横須賀功光。モデルの強い目と可愛いアヒル口に一目惚れ…。

ファッションのポイント メタリック : 解説・中村乃武夫、モデル・松田和子、撮影・横須賀功光。「婦人画報」1966年11月号、95頁。

ファッションのポイント メタリック : 解説・中村乃武夫、モデル・松田和子、撮影・横須賀功光。「婦人画報」1966年11月号、95頁。

写真の批評

この写真が白黒で掲載されたことが痛いです。ラメ入りストッキングはおそらくグレー系の色でしょうが、うーん。ひとまず分かることをまとめます。

ノースリーブのニット、これは濃い色ですね。生地の艶から数割は化学繊維が入っているかと推測します。下半身は膝上のミニスカート、ストッキング、ショートブーツの3点が確認できます。

上衣はニットでしょうから判断付きかねます。下半身に注目しますと、3点とも1960年代に流行したアイテムです。ミニスカートは1960年代前半に民衆のファッションとして定着していました。ストッキングも同じ。

アンドレ・クレージュ : ミニ・スカート(1965年)F.C.グンドラフ撮影

アンドレ・クレージュ : ミニ・スカート(1965年)F.C.グンドラフ撮影。Photo FC Gundlach via The first mini by André Courrèges 1965 | © Pleasurephoto Room

ではショートブーツはとなると、ミニスカートとセットにショートブーツを考えたアンドレ・クレージュの発想を思い出します。彼はミニスカートを穿く女性に躍動感や運動性をさらに増すためにハイヒールを嫌い、底の平坦な靴を提案します。その意味で、この写真はクレージュ的だといえます。

唯一、この写真ほどメタリックを強調した点ではクレージュ以上の濃度があります。この点はもう一つの流行としてパコ・ラバンヌというデザイナーを上げることができます。基本はクレージュ、装飾はラバンヌという、これも一つの1960年代です。

パコ・ラバンヌ : Paco Rabanne
パコ・ラバンヌ Paco Rabanne は、1934年にスペインのサン・セバスチャンで生まれたファッション・デザイナー。1965年初のコレクションでプラスチックの小片を針金でつないだ未来感覚のドレスを発表。保守的なオート・クチュール界に変化をもたらしました。金属や紙など、布以外の素材の服でモード界のカーペンターの異名をとりました。

解説文の批評(リード文批評)

解説を書いた中村乃武夫はファッション・デザイナー。同時代を生きたデザイナーらしくメタリックをファッションに融合的なものだと考えようとしていますが、やや無理があって叙述がぶれています。

メタリック素材流行の分析がほしい

疎外感になやむ人間は、人肌に近い動物質の繊維、つぎに植物質の繊維でつくった衣服をまとって安心するのは自然である

文章の始めの方にこのような習慣的なテーマを持ってきています。メタリックな「非自然的」なものを退治しようという流れになると予測されます。情報アクセスが難しい時代ですから、松田和子の着る衣装のデザイナーは誰か、それがパリで流行った意味や日本人で憧れる人がいた理由などを、自身の経験も交えて分析してほしいところ。

パコ・ラバンヌ制作の金属編みマイクロ・ミニ・ドレス。モデルはブリジット・バルドー。

パコ・ラバンヌ制作の金属編みマイクロ・ミニ・ドレス。モデルはブリジット・バルドー。via Le 69 de Paco Rabanne est toujours aussi érotique – ║█ UNIK █║

金属繊維の定着性(または定着する可能性)について述べてほしかった

天然繊維で作られた衣装を身につけるのを「自然」と規定して、中村は対比的に金属素材へ次のような話に展開します。

日本人を含めて、豊富な金属類にとりかこまれた、20世紀後半の現代人は、動物質や植物質の素材が与えてくれた長い長い友情を拒絶することを、自然なものとして受けとるようになった。だから、メタリックな服装を、非現実的な間隔として受けとるのはかえって現実的でない。

現代生活が進むにつれ天然繊維から金属素材へと自然な衣服材料は変化したと述べています。流れは分かりますが、このエッセイが現実味を帯びないのは、新種の金属素材を強調するあまり、現代人が天然繊維を全く使わなくなったという誤解を与えてしまう点にあります。同時に、全ての衣装の素材が金属に代替されるかのような誇張もみられます。その点で、金属繊維の定着性(または定着する可能性)について述べてほしかったところ。

パコ・ラバンヌのニット・ドレスとメタル風ブーツ

パコ・ラバンヌのニット・ドレスとメタル風ブーツ via Madame | Paco Rabanne

松田和子が股をAラインに開いた意味を述べてほしかった

松田和子はこの写真でまたをA字状に開いています。ミニスカートで股をAラインに開く姿は、当時の写真にはよくあること。ミニスカートは脚を強調します。立ったままそれを強調するには股を開くのが手っ取り早いですね。

たとえば次の写真。これはピエール・カルダンが1957年秋コレクションで発表した投げ縄ラインのドレスです。左の女性は股をひらいてドレスをフラフープのように広げています。右の女性は股を閉じていますが、少し足をくねらせることでドレスと足を強調できます。

ピエール・カルダン 1957年秋コレクション 投げ縄ラインのドレス

ピエール・カルダン 1957年秋コレクション 投げ縄ラインのドレス via 1967 Pierre Cardin Documented Black Wool Space-Age Mod Carwash Mini Dress at 1stdibs

クレージュのコレクションでは、Aライン股開きをさらによく見かけます。ロングのパンツやスカートでもAライン股開きが徹底されています。1970年に発表されたクレージュのプロモーション映像をご覧ください。

やや冗長に書いてきました。パリでミニスカートの女性がAラインに股を開く意味は、次のパコ・ラバンヌのプロモーション映像で答えがでます。

パリのエッフェル塔は数多くのファッション・デザイナーを魅了してきました。黄金比、Aラインのスカート、懐が落ち着く、などの色んな理由からです。ソニア・リキエルの本をお勧めします。

解説よりもキャプションの方が適切

この写真の右に付されたキャプションは、中村の解説文よりも短いながら説得的です。

アルミ箔のように光った、しかし、しなやかな布地のスカート、ラメ入りのメッシュのストッキング、銀色仕上げの短いブーツは、モデルの松田和子さんご自慢のパリ土産です。

この文章はコンパクトですね。これまで見てきた解説本文は、モデルが土産で下半身3点を入手する一方で野暮ったい日本人デザイナーが解説を施すという、フランス詣やパリ詣にすらならない落差に唖然とします。

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松田和子の言葉

この写真を写した後日談風に、本誌282頁(編集室コボレ話)で松田和子は次のように話しています。

スカートはギリギリまで短いし上等の切れ地だとか、カットがうまいとか、仕立がいいなんて時代は過ぎたわよネ。

これに対する竹内篤のコメントは和子を「風俗時評家」と上から目線。

ジェラルミンみたいな服が大はやりだし、この調子だと、もうじき服がなくなって、裸になるんじゃないかしら?

これに対する竹内は「なかなか鋭い」と。クソ真面目に文章を読めば「ジェラルミンみたいな服が大はやりだ」せば「もうじき服がなくなって、裸になる」ことはありません。竹内の手の抜いた上からコメントが痛々しい。

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