モード史を学ぶマストブック

アクセントのあるワンピース:婦人画報 1971年1月号

ベストとミディスカートの画像です。 写真批評
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このページでは「婦人画報」1971年1月号に掲載された「ロマンモード」シリーズの4点を取り上げています。

3点目と4点目のモデルに一目ぼれしたので取り上げました。

4点ともデザインは中嶋弘子、カメラ(撮影)は秋山庄太郎。

モードプランの企画書です:ROMAN ロマントータル・ルック」からロマン(ROMAN)やロマン・テックス(ROMAN TEX)は吉忠株式会社の生地の商標と考えられます。以下の4点ともロマン生地を使用しています。

リード文

新しい、すてきな合繊もいいけれど、やっぱり天然繊維が好きという人も多いのです。昔からの親しみがそう思いこませるのでしょうか。(前掲書、35頁)

リード文批評

1971年1月もまた、前後の時期と同じように合成繊維(化学繊維)と天然繊維との亀甲時期だということがよくわかります。同じ雑誌で合繊を用いた作品と天然繊維を用いた作品とを並列させて、リード文にもどちらかを明記して特徴を活かした衣服にデザインしたという文面が形式になっています。

といっても、このリード文は天然繊維を無条件で高評価している訳ではありません。昔から天然繊維が素晴らしいと消費者(着用者)は思いこんでいるのであって、それらが合成繊維に勝るとは限らないというニュアンスがリード文には含まれています。

マキシドレス

「婦人画報」1971年1月号、34頁。

「婦人画報」1971年1月号、34頁。

リード文

マキシドレス:地味な色に、黒のブレードをアクセントにしました。カメオのブローチがいっそう、クラシックスタイルをひきたてます。(前掲書、35頁)

リード文批評

マキシドレスとは丈のかなり長いドレスのことです。マキシスカートも同様。

衣服の説明として地味な色に黒色のブレードを施した点が記されているだけです。3段に布を足した点と、その接続箇所にギャザーを施したこだわりを知りたいところ。

首元にワンポイント置くことでクラシックになることは正しいです。カメオは浮き彫り状のことで、もともとは瑪瑙(めのう)、琥珀(こはく)、貝殻などを原料にしてブローチ、ペンダント、指輪などに使われてきました。この雑誌の刊行された1970年頃には天然素材を必ずしも原料としていないでしょうから、プラスチックで代替しているかもしれません。

ミディドレス

「婦人画報」1971年1月号、35頁。

「婦人画報」1971年1月号、35頁。

リード文

ミディドレス:上部は黒のギャバジン、スカートの部分は斜め織りの黒白。その共布を衿もとからちょっとのぞかせた粋な着こなしです。いずれもウール100%の、しわにならない、着心地のよいきれ地です。

★34~35ページの服を抽選の上各一点さしあげます。詳細は238ページを。(前掲書、35頁)

リード文批評

綾織による生地の一種ギャバジンに「地」が付いていないため疲れる文章です。

衿元にもミディドレスと同じ生地を覗かせていて、ギャバジンも斜め織り生地も羊毛100%が使われています。羊毛ですので硬めならいっそう皺になりにくいのは確か。

全体的に見て裁縫の工夫が一切書かれておらず、生地の情報だけだという点に注意。吉忠社製のロマン生地の宣伝だという粋を超えておらず、衣服ほど「粋」のある文章にはなっていません。

ミディドレス

「婦人画報」1971年1月号、36頁。

「婦人画報」1971年1月号、36頁。

リード文

ミディドレス:亀甲柄のジャカード織です。カラーと袖口にうす紫の毛糸のフリンジをつけたワンピース。カラーはとりはずし自由な仕立になっています。スカートの中央をスリットした歩きやすい型。(前掲書、36頁)

リード文批評

また主語を明示せずに「ミディドレス」を生地のジャカード織から説明しています。ワンピースの説明は2文目から。

作品としては可愛いと思います。ゆったりと大きいカラー(他の適当な言葉ありそうな)は逆三角形またはハート型に毛糸のフリンジが付けられているのがナイス。袖口にも同じものがあります。こちらはカフスとは呼んでいません。

脇腹から胸ダーツが1種採り入れられています。白色ベルトが紫色を引き立てています。ブーツとも合って、衣装全体として控えめな紫と白とのコントラストが効いた可愛い・カッコいいに仕上がっています。

ベストとミディスカート

「婦人画報」1971年1月号、37頁。

「婦人画報」1971年1月号、37頁。

リード文

ベストとミディスカート:これもジャカード織のウールです。グレーの皮をトリミングした若い人のふだん着。中に着るセーターは、配色のよい紫やブルーを選んで、カラフルな着こなしをたのしみます。(前掲書36頁)

リード文批評

まず衣服の説明に生地から入る点はこの作品でも同じ。以後も衣服自体の説明はありません。

このリード文ではっきりしているファッション文章の特徴に、カタカナと漢字との並列が挙げられます。中に着るセーターは《紫やブルー》であって《パープルやブルー》でも《紫や青》でもないんですね。句読点間に必ず漢字とカタカナの両方を入れるという暗黙の文法があるのでしょう。この特徴を便宜上「ファッション文章の和洋折衷」と名づけておきます。

作品としては3点目と同じくらい可愛いカッコいいです。中のセーターは、白色ブーツと合わせる限り、リード文の勧める紫色や青色よりも写真どおり白色がいいです。

おしゃれのすべてをおとどけします

リード文

新しい年も”ロマンテックス”は、老舗のよさに、さらに新しさを加えた布地づくりをつづけています。その中から今月は、最上のウール地を選んでみました。平織りもジャカード織りも、新しいファッション作りにふさわしいものばかり。色も柄も豊富に揃っています。(前掲書、37頁)

リード文批評

老舗が新しい製品を開発・製造・販売し続ける点は19世紀中期以降の日本では企業経営における余りにも使い古された戦略。

工業化した20世紀日本では製法が変わってるのですから老舗は企業体としてしか存続のアイデンティティはありません。それを老舗という言葉で前近代の伝統製法を踏襲しているように思わせる論理には気をつけたいところ。

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