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ブエノスアイレス:軽快なアルゼンチン・タンゴに決別する時がきた

トニー・レオンとレスリー・チャン。 映画批評
トニー・レオンとレスリー・チャン。 (c) 1998 Block 2 Pictures Inc. All Right Reserved.

ブエノスアイレスはウォン・カーウァイ監督が1997年に公開した映画です。原題「春光乍洩」、英題:Happy Together」。

この映画はウォン監督にとって初の本格的な海外ロケ。街の風景と人の心、男と男、先輩・後輩、息子と父、それぞれが引き合い反発し合う寓意(アレゴリー)の映像美が見物。

後半しばしば写しだされるイグアスの滝、エクレルール灯台の風景、途中で繰り返し流れてくる軽快なアルゼンチン・タンゴなどが贅沢に披露されます。

キャスト

  • ファイ(黎耀輝;Yiu-Fai Lai) : トニー・レオン(梁朝偉)
  • ウィン(何寶榮;Ho Po-wing) : レスリー・チャン(張國榮)
  • チャン(張) : チャン・チェン(張震)
トニー・レオンとレスリー・チャン。

トニー・レオンとレスリー・チャン。 (c) 1998 Block 2 Pictures Inc. All Right Reserved.

みどころ

香港の真下にあるアルゼンチンを舞台に、レスリー・チャンとトニー・レオンがゲイの恋人を演じたことで知られます。この作品は、ウォン・カーウァイとクリストファー・ドイルの映像美が傑出した作品です。

映し方

40万フィート、7つの完成品をもつ「ブエノスアイレス」は通常のカラー映像よりも、むしろ白黒やブルー調の映像を基調に、街並みや屋内の「風景」とキャストたちの「内面」を同時に浮き彫りにします。そして見事な散文に仕上がっています。

イグアスの滝、南米最南端ウスワイアのエクレルール灯台、そして煩雑な普段のアルゼンチンの街並みや埠頭の映像などは見逃せません。

音楽にも適材適所を心得ているウォン・カーウァイがこの作品で選んだのは、ピアソラやフランク・ザッパをはじめ、「ククルククー・パロマ」という香港でも人気の曲やアルゼンチン・タンゴなどで、南米のノリをギンギンに楽しめてくれます。

ファイとチャンの関係

作品は、トニー・レオンによる独白に引っ張られた形で、ファイとウィン二人の一進一退の「恋」と、ファイとチャン二人が育む「友情」との二点が回想的に描かれていきます。

後半の一部、チャン・チェンによる独白にも注目したところ。チャン・チェン演じるチャンは生まれたときから目が弱く、その分耳がとてもよく働くようになったとファイに語っています。

チャンの独白は、耳を研ぎ澄ますことで得られた感性を吐露するかのようで、胸に染み込んでくる暖かみをもっていました。

ファイを男性として演じたというトニー・レオンは、レスリー・チャン演じるウィンに対し父性を最大限に表現しています。その父性をファイは、チェンに対し兄貴として接することで引き継ぎ、ウィンとの恋に決別しました。

いくつかのコントラスト

  • アルゼンチンに残されたウィンと、故郷の香港へ帰るファイとのコントラスト
  • 親子の仲が良いチャンと、父子が不仲なファイとのコントラスト
  • そして先にも触れた二人のナレーターといった対照

これらのコントラストは二元論的な展開としてだけでなく、内容面でも一考に値します。チャンという男性を作品に挿入したことで、ファイとウィンとの倦怠的な関係を際だたせただけでなく、映画全体に引き締まった感じを与えています。

まとめ

映画「ブエノスアイレス:」は決別の機会をうかがう映画だとまとめられます。まさに、登場人物3人がそれぞれ、軽快なアルゼンチン・タンゴに決別する時がきたと理解するまでの映画です。

舞台裏

トニー・レオンの演技

トニー・レオンの演技についてウォン・カーウァイは『恋する惑星』以後に安定したと評価しています。この「ブエノスアイレス」ではその安定感を逆に潰したかったと話しています。

クランクイン前、トニー・レオンは、ゲイの親を持った息子の役をすると聞かされてアルゼンチンに乗り込みました。到着して気づいた現実は自分がゲイの役をするということでした。1週間かけてこの役を引き受けるかどうか悩んだといいます。

トニー・レオンがアルゼンチンに着いたときには、既にウォンの望む話の展開が始まっていました。したがって、演技の中ではトニー・レオンがレスリー・チャンを見守ったような関係が表現されましたが、撮影中には、レスリー・チャンやウォン・カーウァイがトニー・レオンを育てたという風にみることもできる作品です。

出演者の大幅なカット

キャストのとおり「ブエノスアイレス」には3人の男性だけが出演します。当初は女優・歌手のシャーリー・クァン(關淑怡)の登場も考えてエピソード撮影を行なっています。

しかし、ストーリーを簡潔に直接的なものに仕上げようとウォン・カーウァイは判断し、編集中に女優や女性たちの部分を全てカットした。

サッカーのシーン

この映画では後半にファイ(トニー・レオン)がサッカー場に現われるシーンが挿入されています。そこで繰り広げられているサッカーの試合は、ともにブエノスアイレスを本拠地とするチーム「ボカジュニアーズ」と「リバープレート」との対戦。

ファイが観客席にいるのは庶民層・貧民層に支持が多いボカジュニアーズの方で、リバープレートの方は富裕層のファンによって支えられてきました。「ブエノスアイレス」が上映された1997年当時は、もっぱらこの2チームがアルゼンチンのサッカー人気を支えていました。なおトヨタカップでは1996年にリバープレートが優勝、2000年と2001年にはボカジュニアーズが優勝しました。

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南米アルゼンチンへやってきた、ウィンとファイ。幾度となく別れを繰り返してきた2人は、ここでも些細な諍いを繰り返し別れてしまう。そして、ファイが働くタンゴ・バーで再会を果たすが...。

この映画には「ブエノスアイレス:摂氏零度」というドキュメンタリー映画もあります。これは全ての撮影をカットされて一切本編に登場しなかったシャーリー・クワンという香港の女性歌手の撮影フィルムやメイキング映像などをまとめたものです。切ない女性の一人旅のような作品になっています。

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映画『ブエノスアイレス』の撮影風景とカットされたフィルムが交錯するドキュメンタリードラマ。ロケ地をめぐりながら映画『ブエノスアイレス』の世界が甦る!(c) 1999 Block 2 Pictures Inc. All Rights Reserved.

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