モード史を学ぶマストブック10冊

成人式の日 きもの12ヵ月:「ドレスメーキング」1966年1月号

成人式の日 きもの12ヵ月 : 「ドレスメーキング」1966年1月号、179頁。 写真批評
この記事は約4分で読めます。

成人式の日 きもの12ヵ月

成人式の日 きもの12ヵ月:「ドレスメーキング」1966年1月号、179頁。

成人式の日 きもの12ヵ月:「ドレスメーキング」1966年1月号、179頁。

カメラ 本誌・伊藤仁人、着付 村井八寿子、モデル 安島貞子

リード文(三田村環 「ドレスメーキング」1966年1月号、178頁)

うらうらと晴れた初春の陽ざしも暖かい1月15日は20歳を迎える若い人には、忘れられない喜びの佳節となりました、新しい国民祝祭日が決った中で、この日が、一番身近で楽しい祝日のように思われますが、いかがでしょう。

日本の風俗の中では、年令を迎えて祝うことが、小さいときから何度かあります。3才、5才(男子)、7才、20才、60才、77才・88才……と。その中で20才のお祝いは、一番美しく華やかなお祝いです。最も美しいときなので、大人のお洒落に入る第一歩です。

そこで、この日には、美しい装いで楽しい成人の日のパーティを催すことが多くなりました。7才のお祝着のように、女性はやはりきもの姿が圧倒的に多く、この日に作られた盛装が、やがて結婚準備にもつながるような今日この頃の風潮です。そこで最近の傾向を調べてみますと、袖丈の長い中振袖が一般的な流行のきものになっております。95糎丈の袖で、今年は絞り染をあしらった上に友禅染でいろいろな柄をおき、更に刺繍をほどしたものがよろこばれ、豪華華麗なものに人気があります。手描き染、手絞り、手刺繡となりますと、最低15万円くらいで、少し豪華なものは25万円ほどになりますが、こうした品を型染で作りあげミシン刺繍ほどこしたものになりますと、2万7,8千円から3万5千円程度ででき、テトロン地になりますと、1万5千円前後になりますので、ご予算に合わせて、素材や染色技術を変えてえらべば、どなたでも、この美しい中振袖を着ることができるのです。都会では、約11パーセントの人々が、この中振袖を式服にえらぶようです。今年は、ブルー地や、ピンク地、ベージュ地などの地色のあるものが多く、生地は錀子や緞子が使われて光沢のあるものがすべてです。帯は丸帯か袋帯を合わせ、高級品には丸帯のほうがなおのこと立派になってよく調和し、一般では袋帯を合わせて、ふくら雀に結んで装います。

つぎに用いられますきものは訪問着です。中振袖よりも、あとあと気軽に着ることができるからと、こちらを希望する人が全体の30パーセントくらいしょうか。今年は、手描き染のつけさげ風な、全体に柄の少いもののほうが好まれ、中振袖の古典調に対して、軽やかな章花調が多くなっています。手描き染の一般品で3万円前後、手の込んだものが5万円前後というところ。型染のものは中振袖と色柄も似通っていて、絞りをバックに古典的な草花をおいたものに刺繍のあるもので2万円前後です。布地は駒綸子を用い、色はやはり地色のついた明るいもの、帯は袋帯を合わせ、結び方はきりっとしたお太鼓か、その変り型の後見結びなどが調和します。

左頁の写真は綸子地を薄い水色に染め、肩から裾に疋田絞りを扱って、菊と桐を絞りと友禅と刺繍で仕上げた中振袖です。ごく一般向きのものです。帯は黒地に松の模様の袋帯です。アクセサリーには、紅の総しぼりの帯揚を用いました。他の着物の場合でも、帯揚は総絞りを用い、物の色に合わせて赤、ピンク、薄朱を用います。帯〆は帯に合う色で、着物の柄の中にある色を1色えらび出して合わせ、やや太目のものか丸組みを用います。ハンドバッグは、ビーズか錦地を用い、手さげ型がモダンで若々しいでしょう。写真はビーズを用いました。草履はハンドバッグの色かきものの柄や色に合わせ、統一をとった装いを作ることが大切です。中振袖  3万4500円、提供西武百貨店

リード文批評

この写真と文章は「ドレスメーキング」1966年1月号、178・179頁に掲載されたものです。成人式の日のオススメ着物をテーマにした文章になっていて、袖丈の大きい中振袖と気軽に着れる訪問着の2種が大きく取り上げられています。

この文章全体の着物という言葉を数えますと、「きもの」は4回、「着物」は2回使われています。成人式用の中振袖や訪問着に「きもの」を当て、他の着物の場合として「着物」という言葉を当てています。使い分けは丁寧ですが区分の基準を明記していません。成人式用の着物に《単に着るものではない》点を添えたいのでしょう。

カタカナの「キモノ」になっていない点から、外国語表記を意識していないと考えられます。この雑誌の刊行時点は日本人人口が増えていく段階ですから、まだ観光客を意識していなかったのでしょう。

西武百貨店の提供によるためか値段表記が明瞭です。胡散臭い呉服屋の宣伝ではない印象です。ただ、手描き染や手絞りや手刺繍を施した着物が最低でも15万円する一方でミシン刺繍だと3.5万円までという価格設定に「手作業をネタにした胡散臭さ」が垣間見られます。

手作業を吟味する観察眼がほとんどの消費者に無かったでしょうから「染色技術を変えてえらべば」は無茶な話。手刺繍かミシン刺繍かを選べばよいと記すべき。染色と刺繍の2点が記されている後に「染色技術」うんぬんは筆記不足。染色技術と刺繍技術と記すべき。

コメント

footer-insert.php