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スタイル用語集 : 1日1個 平日配信
新しいファッション史

モードの世紀は、人類のファッション史をまとめ直し、躍動感ある歴史を描きます。
主にフランス、イギリス、イタリア、アメリカ、中国、台湾、日本に注目します。

これまでのファッション史は西洋か日本か、意味不明の二項対立に固執しました。
和洋。何て厚かましい言葉でしょう。

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グランドマスター : 概要と旗袍

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グランドマスター

グランドマスター The Grandmaster は王家衛 Wong Kar-wai 監督の映画です。2013年に公開されました。原題は「一代宗師」。

1972年。叶問病逝香港、一生伝灯無数。咏春拳因他而盛从此伝遍世界。(1972年。イップマン<叶問/葉問>は香港で病死、生涯で無数の弟子を育てた。咏春拳<詠春拳>は彼のお陰で世界中に伝わった。)

グランドマスター / ウォン・カーウァイ『グランドマスター』(王家衛『一代宗師』/Wong Kar-wai, The Grand Master) (c) 2013 Block 2 Pictures Inc. All Right Reserved.

ウォン・カーウァイ『グランドマスター』(王家衛『一代宗師』/Wong Kar-wai, The Grand Master) (c) 2013 Block 2 Pictures Inc. All Right Reserved.

感想

この映画は現実のカンフー(葉問)が映画のカンフー(李小龍)に転換する時代を描いた作品です。一つの時代が終わったことを感じました。周知のように、この映画は、ブルース・リー(李小龍)の実際の師匠だったイップ・マン(葉問)を取り巻く、厳しい時代の中国カンフー史(功夫史)が題材です。

極寒でも映像は熱いです。雪が綺麗でした。チャン・イーモウの散る花と対照的かな、この映画の雪は黒を背景に白。厳しい時代にふさわしい…。映画を観終わった数時間、論文には無理だけど研究ノートくらいに書きたいという焦燥感と熱情が冷めませんでした。

Wong Kar-wai, The Grand Master

ウォン・カーウァイ『グランド・マスター』(王家衛『一代宗師』/Wong Kar-wai, The Grand Master) (c) 2013 Block 2 Pictures Inc. All Right Reserved.

この映画は、清朝・中華民国・日本帝国・中華人民共和国、そして家族史を交えた中国近代史であって、カンフー映画ではありません。カンフーはあくまでも題材です。抗日戦争のドラマは今の中国で流行っていますが、描かれる構図は中日対立と中国内の国民党・共産党の対立の2点です。

しかし、中国のドラマには決して出ない1つの国があります。その偽満州国を『グランド・マスター』は捉えました。愛新覚羅溥儀が映像、画像、肖像画の3つの表現方法で映し出されていました。

Wong Kar-wai, The Grand Master

ウォン・カーウァイ『グランド・マスター』(王家衛『一代宗師』/Wong Kar-wai, The Grand Master) (c) 2013 Block 2 Pictures Inc. All Right Reserved.

クローズ・アップの手法

話は変わって、この映画は王家衛作品らしく、クローズ・アップの手法、特に雨または雪の描写が抜群です。映像美とカンフーの両方が楽しめます。撮影はいつものクリストファー・ドイルじゃないんですが。妓楼の映像もインテリアや旗袍(チーパオ)がばっちり楽しめます。

この映画の旗袍が連袖または平連袖と呼ばれる古い型の物でカンフーをするのに十分な運動性を持っていることは「連袖旗袍の動きやすさ」で述べました。また、アクセサリーも含め、衣装からみた『グランドマスター』の感想は妻が「『グランドマスター』の旗袍」に書いています。いずれもご参照ください。

Wong Kar-wai, The Grand Master

ウォン・カーウァイ『グランド・マスター』(王家衛『一代宗師』/Wong Kar-wai, The Grand Master) (c) 2013 Block 2 Pictures Inc. All Right Reserved.

さて、物語が繋がらない、登場人物同士が遭遇しない、といった特徴が王家衛の映画にはよくあります。本作品では主演のトニー・レオン(梁朝偉)とチャン・ツーイー(章子怡, Zhang Ziyi)は遭遇しますが、チャン・チェン(張震)と梁朝偉は遭遇していません。

主人公のイップ・マンを演じるのはトニー・レオンですが、描写時間はチャン・ツーイーと同じくらいじゃないでしょうか、チャン・ツーイーの映画だとも言えますし、そうでないとも言えます。そして、チャン・ツーイーを軸に見ると、人間関係が全て繋がるのがこの映画の面白い所。主人公を写しながら、別の人間が全てを繋げているわけです。

Wong Kar-wai, The Grand Master

章子怡(Zhang Ziyi)と梁朝偉。ウォン・カーウァイ『グランド・マスター』(王家衛『一代宗師』/Wong Kar-wai, The Grand Master) (c) 2013 Block 2 Pictures Inc. All Right Reserved.

現実のカンフーから映画のカンフーへ

ブルース・リーのファンとして私は認めるのが辛いのですが、冒頭でも書きましたように、この映画を見て痛感したのはブルース・リーによって功夫映画はかなり広まった一方で、1960年代末の香港にも中国大陸にも、そして世界中にも、既に功夫は無くなっていたと感じるのです。

「窮しても日本の米は食わん」とイップ・マンが述べた時、これは人生を語っています。イップ・マンは功夫に命を賭けました。弟子のブルース・リーは映画に命を賭けました。師匠のイップ・マンから弟子のブルース・リーへ。この世代交代は、現実功夫の消滅と映画功夫の誕生と換言できます。次の写真のアングルは、まさにその代替を物語っています。

Wong Kar-wai, The Grand Master

ウォン・カーウァイ『グランド・マスター』(王家衛『一代宗師』/Wong Kar-wai, The Grand Master) (c) 2013 Block 2 Pictures Inc. All Right Reserved.

登場人物のカミソリとその意味

断片的な感想になりました。最後に、張震の配役について触れておきます。彼はこの作品でカミソリ(一線天)と呼ばれる八極拳の達人役に起用されています。後にカミソリが成長したのか、理髪師に就きました。ウォン・カーウァイ(王家衛)の映画で張震が出演するのは『グランドマスター』で4作品目です。それまでは『ブエノスアイレス』で板前、『2046』では一瞬の出演で失恋、『若き仕立屋の恋』で裁縫師(仕立屋)、『グランドマスター』で理髪師という流れです。

板前(料理人)、裁縫師、理髪師の3職業は中国人移民(華僑)たちが最も得意としてきた三巴刀業(三刀業)です。いずれも、包丁、裁断鋏、カミソリ等、刃物を主要道具とする職業です。ついでに『2046』で失恋したのも《切断》だという後付けの解釈を付しておきます(笑)。もとい、そもそも、王家衛の映画は移民の定住期間を描く映画だと、改めて思う次第です。

ウォン・カーウァイ『グランド・マスター』香港・中国、2013年

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