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モード小辞典:山田夏子 1962年

山田夏子「モード小辞典」三洋出版貿易、1962年書籍批評
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モード小辞典

概要

このファッション用語辞典はフランス語の代表的なモード用語を厳選し、アイテム用語をはじめ服の部分、生地用語、裁縫道具、編物用語などのテーマに分けて説明した丁寧な本です。フランス語の学習にも使えるように例文も載っているという、研究+教育を実践したフランスモード用語辞典に仕上がっています。したがって本書は、洋裁教科書を作る際に使う《教科書のための教科書》と位置づけすることもできます。

著者

著者の山田夏子は国語学者金田一京助の弟子。この小辞典刊行時、フランスのモード雑誌「ジャルダン・デ・ モード」日本語版の翻訳解説者を8年間務め、洋裁雑誌「ドレスメーキング」で「服飾用語教室」を執筆するなど、終戦直後から積極的にフランス・モードの受容に務めてきた方です。

山田夏子「モード小辞典」三洋出版貿易、1962年

参考資料:序文(金田一京助)の引用

昔の教え子の山田夏子さんが、30年振りに私をたずねて見えて、パリのモードの話をされる。

私は、もっとも野暮なアイヌ学究であり、女装は、日本服をもって世界最美のものと信じているものなのである。だから、そのお話は、まるで、別世界のことを伺っているも同じなのであった。

ただし、山田さんは、久しくパリに生活されて、フランス語がすっかり身について、モードの術語を、語原にまでさかのぼって説明される談に入っては、私の耳を、心を、すっかり奪ってしまわれた。

そして、云われるには、この言葉の趣味だけは、昔、学校で、私の言語学の講義を聞いて得られたもので、その縁故で、今やモードの語彙の辞典が出来つつあるから、序文を一つ書いてくれまいかと断ってのお求めなのである。

どうも、洋装のモードの本へ私が序文を書くということは、いかにも気はずかしくて出来ないことではあるが、言葉のこととなると聞きずてにならない。この辞書は、凡そ日本の辞書界に、かつてなかった最初のものであること、それだけでも優に快心のお仕事であるが、殊にそれが、ジャルダン・デ・モードの日本語版に筆を執って、3人のお子さんを手しおにかけながらの、ご勉強の産物と承っては、心から敬意を表さずには居れない。

もっとも、その辞書の原稿全部を、もって見えたわけではなく、ただ一部分を拝見しただけにすぎない。けれども、当年の才媛の面影がしのばれて、きびきびと、中々よく出来ている。とうとう序文を引き受けてしまったのである。現代の国語辞典は、こういう面の語彙をもたくさん包容しなくてはならないし、それにはユニックのものである。語学の専門家にばかりではない。現代文化人の、性別を超えてみな学ぶべき新知識であることを反省して、これを大方におすすめするゆえんである。

昭和37年9月22日

金田一京助

山田夏子「モード小辞典」三洋出版貿易、1962年

参考資料:まえがき(著者)の引用

フランスのモード雑誌、ジャルダン・デ・ モードの日本語版、翻訳解説者となって以来8ヵ年、 四囲の方々にまもられ、助けられながら、 ただ歳月に身をゆだねて此の日まで参りましたが、その間、 私の学び得た服飾上の知識、 或いは探求の中に発見し得たことどもを服飾フランス語の語彙を通 して皆様にお伝えしようと決心したのは、 もう何年か前からのことでした。 しかし遅々とした私の仕事は昭和30年に出版致しました“洋裁用語小辞典,,或いはドレスメーキングの”服飾用語教室”の担当、或いは講談社出版の”巴里のモデル達,,つづいて白水社に寄稿した”ABCAlafrancaise”などの僅かな断片的原稿に追われて、この8カ年間をひたすらジャルダン・デ・モードの翻訳解説にのみ終始して参りましたが、その雑務の寸暇を得て、ようゃく繮めましたのが、この貧しい一巻の書でございます。そして今、この書を皆様にお目にかけるに当り、一言申上げたいことは、言葉というものは、たといどの国の言葉であっても、すべて同じ人間の作り上げた思想の蓄積に過ぎないのですから、分析すればする程、お互いの共通性が認められるという点で、外国語に対する一層親しみと興味をひかれることでしょう。それともう一つ附加えさせていただけるならば、外国語を識るためには、より自国語を識ることが必要であるということです。それは先にも申上げました通り、どの国の言葉も人間が考え、作り出したものである以上、必ず自国語に精通していれば、僅かな外国語の知識でもって外国語を理解することが出来るということを泌々感じさせられるからなのです。

ところで、この書は辞書というよりも、一般教養の書として、特に若い方々に読んでいただき度く、語学や服飾にたずさわらない方々にも楽しく読んでいただけるように絵で説明しようとして、出来るだけ沢山のカットを水野和子先生にお描きいただきました。

尚、最後に私をこのような道に進ませた大きな動機は実践の国文科在学中、言語学の講義を通じて私に語彙の泉のような深さをお教え下すった金田一京助先生のお講義のたまものであったと存じます。尚、この度も御貴重な時間をおさきいただき、この貧しし、書に光を与えるような御序文をお贈りいただきましたことを厚く感謝し、尚、この私の仕事をここまで理解し育て上げて下さいました鎌倉書房の長谷川社長、白水社の草野社長、三洋出版貿易の鈴木社長そして最後に今は亡き故文化服装学院長、遠藤政治郎先生に伏して御礼申上げます。

1962年9月

ジャルダン・ デ・モード日本語版飜訳解説者 山田夏子

山田夏子「モード小辞典」三洋出版貿易、1962年

購入経緯

2019年の年始早々からヤフオクで「ドレスメーキング」を数冊買ってきました。1940年代、1950年代、1960年代の1冊ずつをパラパラとめくっていたところ、次のような広告を見つけました。「ドレスメーキング」1966年1月号の223頁。

モード小辞典の広告「ドレスメーキング」1966年1月号、223頁。

モード小辞典の広告「ドレスメーキング」1966年1月号、223頁。

1966年の時点で「待望の再販」ですからそれ以前に刊行されて、そこそこ売れたことが分かります。わが目を疑ったのはフランスに焦点を当てたモード辞典なのに金田一京助が序言を書いていることでした。著者の山田が言語学に精通していることを思わせます。

また《推薦の言葉》には「ピエール・カルダン」が。カルダンがこの辞典をどこまでちゃんと読んだのかは分かりようがありませんが、著者のチョイスしたフランス語の用語類を見たのでしょう、次のような推薦文を書いています。

この小辞典は皆さま方がパリの高級裁縫を理解されるために最も役立つものと思います。

このように金田一のような言語学者やカルダンのようなフランス・モードを動かしているファッション・デザイナーに挟まれるように宣伝される辞典ですから、期待は高まります。

そこで1月22日にアマゾンで調べたところ提携古書店に在庫がありました。さっそく注文し、1月25日(金曜日)に到着しました。

山田夏子「モード小辞典」三洋出版貿易、1962年

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