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世界の民族衣装文化図鑑 1・2:文化人類学の結集

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世界の民族衣装文化図鑑 1・2

世界の民族衣装文化図鑑 1・2:このページは「週刊読書人」に掲載された記事です。同社許可のもとに転載しています。
(初出) 「週刊読書人」 2012年1月13日号、4面(バックナンバーを購入


本書はUCLA付設フォーラー文化史博物館地域衣装研究所所長を務めるパトリシア・リーフ・アナワルトの『The Worldwide History of Dress』(2007年)の邦訳版である。
1・2の2巻本で構成され、収録された図版は1000点近い大著である。世界を範囲に膨大な図版を集めカラー印刷で出版したことは非常に精力的で、フィールドワークが根幹の人類学・民族学ならではの話である。邦訳にあたっては、文化人類学者の蔵持不三也が監訳をし、訳出は、序文を奥澤朋美が、1巻を大塚典子と児玉敦子が、2巻を大塚と奥澤が担当している。一人の著者、そして、4名という少数の翻訳チームでこの大著が出版されたことに、評者は驚きを禁じ得ない。
内容構成は、中東、ヨーロッパ、中央アジア、東アジア、南アジア、東南アジア(以上、1)、オセアニア、北アメリカ、南アメリカ、アフリカ(以上、2)である。
図版には、衣服・履き物・被り物などの「現物」写真や解説が多く取り上げられ、また、着用した姿、つまり「衣装」を表わす写真も豊富に載せられている点が高評価できる。評者の専門に近しい近代日本服飾史に照らせば、日本人研究者に多い写真の説明不足と回顧的叙述に特化した衣装史研究・衣服史研究とは明確に一線を画している。
そもそも、本書及び原著は、邦題にある「図鑑」よりも世界的規模の衣装史を叙述することに重点が置かれている。各章(各地域)ごとに、民俗、政治史、民族史を豊富に盛り込みながら、他方では外衣、仮面、被り物、履き物、小物などの品目が、図版部分に留まらず、本文部分においても丁寧に解説されている。つまり、本書は、歴史、民俗、品目解説といった複数の角度から読むことができる。さらに、男女の基本的服装や20世紀に変貌し始めた衣装といった主題が挿入される場合もある。
民族衣装の図鑑の多くは、現代の民族衣装の資料収集に偏りがちで「現代を旅する」という方向に構成されやすい。これを踏まえたうえでの本書の特色は、現代旅行の方向を維持しながらも、他方で、発掘された遺物も豊富に取り上げることによって、各地の「過去を旅する」という読み方や見方を可能にさせていることにある。
さて、内容構成で気になる点を少し述べたい。第1巻の6地域、第2巻の4地域のうち、7地域では小地域によって項目編成がなされている。たとえば、東アジアでは中国・朝鮮・日本となっており、東南アジアでは大陸部・島嶼部となっている。これに対し、中東、ヨーロッパ、南アメリカの3地域に限っては、たとえばヨーロッパの箇所で、先史時代、古典時代、ヨーロッパ民族衣装の伝統と区分されるように、地域別よりも時代別を優先した項目設定がみられるのが、その根拠が不明瞭である。
また、内容面では、東アジアの場合、中国・朝鮮・日本の3地域とも官服史に集中し、他地域の民族衣装とは取り上げられる主題が大きく異なっている。もっとも原題には民族衣装の文字が入っていないが、地域による叙述の観点や方向の違いに著者自身がどれほど自覚的かは疑問である。
とはいえ、上巻121ページ以降に設けられた「ヨーロッパ衣装という伝統の創造」の観点から、著者は民族学・人類学と歴史学との接触が避けられない点に気づいている。シルクハットにスーツといった近代ヨーロッパ男性や、ウェストが細く裾の広いスカートの近代ヨーロッパ婦人の印象、これらが一過性のものである点は意識されている。精力的であり、また民族衣装が20世紀に再編成されたという観点を有す著者だからこそ、今後は、たとえば利用する資料は20世紀に限定するといった統一尺度での世界的比較を求めたいところである。
最後に、評者は本年10月末に台北へ小旅行に行った。その時、1930年の霧社事件に端を発した台湾先住民「賽徳克族」の対日武装蜂起の映画を同僚の勧めで観た。映画自体は、賽徳克族対日本軍という二分法に留まらない問題提起を投げかけた力作であった。衣装では、白地に紅色のラインがいくつか入った賽徳克族の普段着に目を奪われた。あっさりした柄とはいえ、紅色は際立ったものがあったからである。
この映画をアナワルトの本書を見ながら思い出した。賽徳克族に似た配色デザインを、メキシコ北西部ウィチョル族の男性衣装の写真(2巻133ページ)に発見し、地域を超えうる衣装史の醍醐味を感じることができた。大著である本書には「自分の過去」と「自分の未知」を遭遇させる要素もある。
過去への旅、現代への旅、自分自身への旅。これらを総じて、本書は様々な旅を可能にさせてくる贅沢な歴史書であり図鑑でもある。
(初出) 「週刊読書人」 2012年1月13日号、4面(バックナンバーを購入
パトリシア・リーフ・アナワルト/監訳:蔵持不三也『世界の民族衣装文化図鑑 1中東・ヨーロッパ・アジア編』・同『2オセアニア・南北アメリカ・アフリカ編』(柊風舎)

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いろんなファッション歴史の本を読んで何も学べなかった残念なファッション歴史家。パンチのあるファッションの世界史をまとめようと思いながら早20年。2018年問題で仕事が激減したいま、どなたでもモチベーションや頑張るきっかけをください。

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