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魅惑という名の衣裳 : ハリウッド・コスチュームデザイナー史

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魅惑という名の衣裳 : ハリウッド・コスチュームデザイナー史

魅惑という名の衣裳 : 本書はビデオで再現できるハリウッドのコスチューム・デザイナー史です。1987年に創刊された雑誌「ビデオ・デイズ」の連載をまとめ直したもので、対象映画は1990年頃まで。

魅惑のいう名の衣裳 ハリウッド コスチューム デザイナー史 川本恵子 キネマ旬報社 1993年

川本恵子『魅惑のいう名の衣裳―ハリウッド・コスチュームデザイナー史―』キネマ旬報社、1993年

無視された映画衣装

映画衣装はハリウッド映画史で陰の存在となってきました。アカデミー賞に衣装賞が加えられたのは1948年、戦後のことです。

著者によるとイーディス・ヘッドはハリウッド黄金時代に映画のセールスに衣装が強く貢献したと主張し、アイリーン・シャラフは1980年代になっても衣装に理解を示さないプロデューサーが多すぎると嘆いたそうです(同書333頁)。巻末の「アカデミー賞衣裳デザイン賞全記録」はデザイナーに対する著者のオマージュですね。

川本恵子『魅惑のいう名の衣装―ハリウッドコスチュームデザイナー史―』キネマ旬報社、1993年

ほぼ内容が変わっていないと出版経緯から判断される新装版(2009年)が出ています。

映画衣装が注目された経緯

そんな陰の存在だった映画衣装に著者が関心を持ち始めたのは1970年代前半。当時、1960年代の世界的アイドルのツィギーがガルボ風のメイクで大人の女性に変身したとのこと。

その頃は1930年代のアール・デコ調のインテリアが好まれたり、グレタ・ガルボやマレーネ・ディートリヒらの大スターが注目されたりしたとのこと。1970年代に映画は初めてモードの役に立ったと著者は位置づけます。

本書の特徴

3つの特徴

類書に多い未整理のままのエピソード群とは違って、映画会社とデザイナーと女優の関係をはっきりと本書は示しているので分かりやすい。これが1点目。次いで2点目は、衣装設計(デザイン)が具体的に記されているのでデザイナーの工夫が裁縫レベルで分かります。最後に3点目、おまけにしては意外に多いインテリアの記述。絵図が白黒で量も少なめですが、イメージしやすく読んでいけます。

裁縫の記述例

裁縫の記述、これはデザイナー史やファッション史にほとんど無いというのが不思議だったのですが、本書はちゃんと応えてくれています。

1つ目の例にエリザベス・テーラー主演「バージニア・ウルフなんかこわくない」。彼女は醜いデブという設定。この映画のデザイナーであるアイリーン・シャラフの工夫は

大きなヒップを強調するためにパットをつけさせ、入るべきではないシワを何本もスラックスに出させた。ジャケットも2サイズも小さめにし、窮屈な胸と袖丈で中身の”肉”を意地悪いまでに感じさせた。(同書217頁)

次いでディートリヒがパラマウントを去った時には同社にこき使われアル中になっていたというトラヴィス・バントンは

メイ・ウェストにはシルバー・フォックスの3枚重ねのケープ、ブロマイド用のディートリッヒのベルベットのイブニングには、衿とカフス、裾だけで23匹のレッド・フォックスが使われたという。(同書67頁)

技術を押えた良さ

さすがにステッチの細かい描写はないとしても、パット、衿(カラー)、カフスなどの附属品に気が向いているのが読んでいて安心。技術を押えているから≪わたしハリウッドをこれだけ知ってるよ≫と自慢げに人間関係の裏ネタしか書けないライター達とは大違い。

著者の映画衣裳へのこだわり

あとがきで著者はテレビと対比させて「映画の夢をまだまだ期待する意味で、昔から使われてきた「衣裳」を採ったことを付け加えます」と記しています。また、テレビ制作に対しては映画「製作」という言葉を対比的に使うとの述べています(以上、同書333頁)。

衣裳で良いのか : 1つの疑問

テレビ衣装に対して映画衣裳、テレビ制作に対して映画製作。このこだわりは分かります。しかし、テレビ業界の言葉への対語として映画の言葉を作る(使う)のはどうかというのが1点の疑問。≪テレビよりも映画≫という気持ちは分かりますが。

映画衣装に限らず日本のファッション関係者には衣装を衣裳としたがる悪い癖があります。衣裳という言葉は≪上衣下裳≫から来ているのでツーピースが前提です。たとえばワンピースの着物を普及させようとする「民族衣裳文化普及協会」は命名の時点で間違っています。

目次

  • 序 ハリウッドの夢を紡いできた映画の中のコスチューム
  • 第1章 コスチュームデザインの始まり
  • 第2章 コスチュームデザインの黄金時代・30年代(「ガルボを創った男」エイドリアン、「ディートリッヒ神話に身を捧げた」トラヴィス・バントン、「演技する女ベティ・デイビスを助けた」オリー・ケリー、「『風と共に去りぬ』の名デザイナー」ウォルター・プランケット)
  • 第3章 40年代の官能の女神たち(「妖婦リタ・ヘイワースの誕生」ジャン・ルイ、「白をまとった悪女ラナ・ターナー」アイリーン)
  • 第4章 50年代のエレガンス(オードリー・スタイルの魅力、永遠のケリー・ルック、「アカデミー賞受賞最多記録を誇る」イデス・ヘッド、「『バラの肌着』のモデルにもなったスターデザイナー」ヘレン・ローズ、「ミュージカル映画のエキスパート:アイリーン・シャラフ、「『マイ・フェア・レディ』の優美な世界」セシル・ビートン)
  • 第5章 現代のコスチュームデザイナーたち(『俺たちに明日はない』のセオドア・ヴァン・ランクル、『華麗なるギャツビー』のセオニ・V・アルドリッヂ、『ワーキング・ガール』のアン・ロス、『炎のランナー』のミレナ・カノネロ、『バクジー』のアルバートウォースキー、『プリティ・イン・ピンク』のマリリン・ヴァンス・ストレーカー、『800万の死にざま』のグロリア・グレシャム、『乱』のワダエミ)
  • 第6章 映画とファッション・デザイナー
  • あとがき、デザイナー略歴、アカデミー賞衣裳デザイン賞全記録、索引。

川本恵子『魅惑のいう名の衣装―ハリウッドコスチュームデザイナー史―』キネマ旬報社、1993年

ほぼ内容が変わっていないと出版経緯から判断される新装版(2009年)が出ています。