デニム・バイブル : グラハム・マーシュほか

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デニム・バイブル : グラハム・マーシュほか

デニム・バイブル : 本書はデニム・パンツ(ジーンズ)の歴史を述べた本です。リヴェット等のデニムの細部にこだわった記事から掘り起こし、肉体労働者向け衣料品から始まったデニムの歴史を現代にまで展開。時代ごとに章立てされていて、大半はデニムの写真や着用者の写真で埋められています。章冒頭の時代背景と無数の写真に簡潔な説明があります。

デニム・バイブル : グラハム・マーシュほか

デニム・バイブル : グラハム・マーシュほか

グラハム・マーシュ、ジューン・マーシュ、ポール・トリンカ『デニム・バイブル』 田中敦子訳、 スペースシャワーネットワーク、2006年

序文から

序文は著者の一人、ポール・トリンカが執筆。デニムとジーンズへの思いが伝わります。

今や大統領や総理大臣も愛用するようになったデニム―それでも、やはりデニムには反逆のイメージが似合う。労働者の勲章、反体制的なかっこよさのシンボル。人々にとってもっとも身近な素材であるデニムは、大衆に媚びつつも、力強い存在感を放っている。

デニムの物語は、アメリカの歴史とともに展開してきた。フランス人が生地のデザインを生み出し、イギリス人が織物技術を完成させ、二人のアメリカ人―新大陸に来て間もないバルト海出身の男と、ババリア出身の男―がジーンズの原型を考案した。移民文化の中で育まれたジーンズは、労働者に愛用され、ジョン・ウェインからマドンナまで、アメリカを象徵するスターたちが着こなすことで、人々のあいだに浸透していった。数ある生地の中でもとりわけユニークなデニムは、生地の表と裏、経糸と緯糸とがはっきりと識別できる四次元の織物だ。(同書7頁)

本書の面白い所

エロッサー・ハイネマンやリーなどに注目

アメリカのデニムはリーバイス(Levi’s / Levi Strauss)と思いがちですが、本書はリー(Lee)やエロッサー・ハイネマン(Eloesser Heynemann)等、他社デニム・メーカーも忘れていません。

当然、デニムまたはジーンズは衣料品となる前に生地の段階がある訳ですが、これを次のような展開で述べているので、デニムの世界が広がりそうでワクワクします。

デニムという言葉は、今日では広く知られているが、かつてはもっぱらアメリカの工場内で使われるだけだった。リーヴァイスが使ったデニム生地は、当初はニューハンプシャー州にあるアモスケイグの巨大工場で製造されていた。だが、1915年以降、リーヴァイ・ストラウス社はノースキャロライナ州のコーンミルズ社からデニムを仕入れるようになる。現在でもコーンミルズ社は世界有数のデニムメーカーである(22頁)。※コーンミルズ社(Cone Mills Corporation)

次の写真はエロッサー・ハイネマン社の「キャント・バステム」(CAN’T BUST’EM)商標の詳細です。銅製リベットではなくバータックでポケットを補強しているのを強調しています。

エロッサー・ハイネマン社の商標「キャント・バステム」(CAN’T BUST’EM)パンフレット/1919年

エロッサー・ハイネマン社の商標「キャント・バステム」(CAN’T BUST’EM)パンフレット/1919年(グラハム・マーシュ、ジューン・マーシュ、ポール・トリンカ『デニム・バイブル』 田中敦子訳、 スペースシャワーネットワーク、2006年、43頁)

この手の本は《文化史》で終わりがちですが、本書にはデニム生地の製造工場とデニム・パンツの製造工場の写真と説明があって(23頁、27頁・42頁)、アメリカの大量消費社会を支えた大量生産工場の具体的なイメージも掴めます。

次の写真はエロッサー・ハイネマン社のキャントバステム製造工場の様子です。ミシンと縫製工と縫糸がずらりと並んでいます。足踏式ミシンか、それに電動モーターを付けたミシンかが写真では分かりません。奥にはミシン加工を待つ半製品(裁断済みデニム)がドッサリと積まれています。

クレア・マッカーデルに注目

アメリカでジーンズをドレスに用いたファッション・デザイナー、クレア・マッカーデルを取り上げています。マッカーデルはスポーツ・ウェアやカジュアル・ウェアを重視したデザイナーです。

マッカーデルはキャラコやデニム、そして新素材の伸縮性のあるジャージを好み、高級生地はほとんど敬遠していた。当時『ハーパースバザー』誌のファッション編集者をしていたダイアアメナ・ヴ・リーランドは、値段もリーズナブルで肩の凝らないマッカーデルのデザインをとても気に入り、忙しい主婦や母親のためのおしゃれなドレスをつくってはどうかと彼女に提案する。こうして生まれたのが、マッカ-デルのラインの中でも特に有名な「ポップオーバー」だった。「ちょっといい服を着ていても、その上からポンとかぶるだけの手軽なドレス」ということからネーミングされた、このシンプルなブルーデニム素材のラップフロントドレスは、おそろいの鍋つかみとセットで、6ドル95セントというお買得価格で販売される。あまりにも多くのコピー商品が出回ったため、マッカーデルは特許を取得したほどだった。1942年にはポップオーバーが1941年の統制下で素晴らしいファッショントレンドの創出に貢献したことが認められ、マッカーデルはアメリカ・ファッション批評家賞を受賞する。(同書152頁)

次の写真はマッカーデルのデニム地のアンサンブル。軽快で今でもおしゃれに見えます。

クレア・マッカーデル アンサンブル ワークマンズ・ダブル・トップスティッチズ 1944年

クレア・マッカーデル アンサンブル ワークマンズ・ダブル・トップスティッチズ 1944年。 via Claire McCardell originated The American Look (part 1) |

一目惚れ

本書はデニムを身に付けた有名人たちの写真もたくさん載せられています。

その中で惚れた写真が次のマドンナです。2000年9月に発売されたアルバム『ミュージック』用の宣伝写真で、この撮影にマドンナはドルチェ・アンド・ガッバーナのカウボーイ衣装を選びました。

マドンナ(ドルチェ・アンド・ガッバーナ衣装、ジャン・バプティスト・モンディーノ撮影)。2000年9月発売アルバム『ミュージック』用宣伝写真。

マドンナ(ドルチェ・アンド・ガッバーナ衣装、ジャン・バプティスト・モンディーノ撮影)。2000年9月発売アルバム『ミュージック』用宣伝写真。 via Today in Madonna History: September 19, 2000 | Today In Madonna History and グラハム・マーシュ、ジューン・マーシュ、ポール・トリンカ『デニム・バイブル』 田中敦子訳、 スペースシャワーネットワーク、2006年、176・177頁

グラハム・マーシュ、ジューン・マーシュ、ポール・トリンカ『デニム・バイブル』 田中敦子訳、 スペースシャワーネットワーク、2006年