映画の教科書 どのように映画を読むか

映画の教科書 どのように映画を読むか

映画の教科書 どのように映画を読むか

映画の教科書 どのように映画を読むか : 映画の歴史、撮影技術・音響技術、映像表現の構造、映画ビジネスの多岐にわたり、とても丁寧な説明を続けた本です。素人が読むだけで、少なくとも知識面で映画のプロになれます。叙述は丁寧ですが、だからといって簡単に濁した説明をしているわけでは無く、本書の分量が示すように、詳細な情報や物語が繰り広げられています。特定のキャストやスタッフに偏らない、まさに映画自体を愛する研究者によって書かれた総合的な本です。

映画の教科書
映画の教科書

本書の内容

そして面白いのが、著者は上記の順序が論理的で正しいと言いつつも、読者が、歴史、言語、技術のどこからでも読めるように論文構成をしている点です。私は気になった人物や作品を索引から読むという風にずっと使っています。本書の良さは、その周辺をも読む気にさせる所です。

著者のジェイムズ・モナコは、これまで見落とされやすかった映画産業と、その背景となる社会政治面にも言及できる珍しい研究者です。非常に複雑な技術を要する映画を位置も簡単に説明し、それでいて、各映画作品のもつ醍醐味や時代的位置づけも的を得ていて、バランスが良いと感服しました。

多くの人が映画を芸術と考えるので、本書はそこから出発します(第1章「芸術としての映画」)。しかし、映画技術の知識を持たずに芸術を理解する事は難しいので、第2章「映像と音のテクノロジー―映画の創造―」で映画科学の論考に移ります。撮影・カメラの配置、音の効果、サウンドトラック制作などに言及しています。技法を理解した上で、次は映画がどのように言語として働いているかを学びます(第3章「映像の文法」)。実践は理論に先行するはずだとの筆者の見解通り、第4章「映画史のかたち」では映画産業と映画芸術の歴史が語られます。映画芸術史だけが語られるのではなく映画産業との関わりで展開されている点が特徴です。最後の第5章「メディア・デモクラシーに向かって」では、映画を見る焦点を、メディアと言う大きな文脈の中に広げることで本書は結ばれます。

巻末付録に、映像用語集、参考文献、巻末に人名作品、作品題名索引。

フィルム・スタディーズ事典』と合わせて読まれることをお勧めいたします。

ジェイムズ・モナコ『映画の教科書―どのように映画を読むか―』岩本憲児・フィルムアート社、1983年

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