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性とスーツ 現代衣服が形づくられるまで 2回目の書評

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性とスーツ 現代衣服が形づくられるまで / アン・ホランダー

性とスーツ 現代衣服が形づくられるまで : 本書は古い服飾文化史で置き去りにされてきた男性スーツを再評価したファッション学です。ファッション史上でスーツが定着していく前後の歴史や女性ファッションへの男性ファッションの影響を知ることができます。

アン・ホランダー 性とスーツ 現代衣服が形づくられるまで 中野香織訳 白水社 1997

アン・ホランダー 性とスーツ「現代衣服が形づくられるまで」中野香織訳 白水社 1997 (to amazon.jp)

現代スーツの原型は1850年頃に固まり、男性の仕事着として世界標準となっていきました。そのためファッション史からは取り上げられなくなっていきます。といってもカジュアル・ウェアが中心の現代でもスーツは200年近く生き延びてきた事実があり、本書はその事実の謎解きに迫った本です。1回目の書評記事は下の記事を参照ください。

性とスーツ : 現代衣服が形づくられるまで
性とスーツ : モダンな男性のテイラード・スーツを主に取り扱い、スーツを帰結とする近現代の男性衣装の展開を概観しています。また、それに呼応した女性衣装も20世紀を中心に取り上げられています。男性服の歴史を見ると女性服の歴史が意外に分かりやすいと知りました。

本書の特徴

著者の3つの観点

これまで見過ごされがちだったスーツをもともに、

  • スーツがセクシーな衣服であること(スーツはドブネズミではなく≪モダンな裸体の抽象形≫を示す)
  • 西洋ファッションをリードしてきたのは男性服であること(女性服は男性服のアレンジとしてファッション史を展開した)
  • コルセットは快感であったこと(中華圏の纏足や女子高生のミニスカートなど同様に地位や立場を保証した)

の3点を引き出しています。そして男女のファッション史に男性服中心説を位置付けました。これは本書の斬新な観点です。

普通、スーツは定型的で地味なものとして捉えられてきました。それを本書は覆して裸体との類似点から上記のような結論を得ます。またファッションは女性のものという先入観を覆して男性服を目標として女性服が作られてきたことを指摘しています。20世紀だけ見ているとついファッションとは女性だけのものと思ってしまいがちですが、その点視野が広いと思いました。

前近代への視線

このように著者は従来のファッション史の固定観念をいくつか崩します。その鋭さは近代や現代を超えた視点、つまり前近代を参照しているからです。ファッションが女性だけのものではないにしても、18世紀頃のヨーロッパに見られた男性キュロットを服飾の原点にしても説得力は有りません。本書は中世を視点に次のようにヨーロッパの服装を捉えています。

近代ファッションの時代に突入するまでは、ヨーロッパでは男性も女性も似たような袋状の衣服を身にまとっていた。これには、袖ぐりや身体の線に合わせるための曲線の縫い目などなかった。衣服は立体的に作られていなかったのだが、布が着る人の身体の回りに垂れ下がり、あるいは身体を包み込んでベルトなどで留めることによって、立体的になった(同書61頁・62頁)

よくあるファッション史の本ではヨーロッパの衣服を立体的、アジアの衣服を平面的と捉える悪癖があります。しかし、ヨーロッパの布もアジアの布も当然、平面です。その平面の布を袋状にまとう、特に被るという形で衣服は着られていました。つまり貫頭衣は東アジアにだけ見られたものではなく、広くヨーロッパその他の地域でもみられていたことを著者は知っています。

ヨーロッパが貫頭衣から脱却し始めるのは早く見積もっても14世紀末のことです。この点については貫頭衣からテーラリングへの移行に関するこちらの記事をご参照ください。

視野の広さ

このようにスーツを掘り起こした以上に、時代や地域を横断できる広くて柔軟な視野が著者の本領です。その上で訳者は著者の≪ファッション上の変化が社会変化に先行する≫という持論を引いて著者に屈服するしかないというくらい本書の鋭さを称賛しています。経済史畑の私から補足させてもらえば、素材が変わった時、既にファッションと社会は変化を待っているというところでしょうか。でも素材の変化は20世紀を待たねばならないので、やはり本書の視野の広さと深さに脱帽するしかありません。

アン・ホランダー 性とスーツ 現代衣服が形づくられるまで 中野香織訳 白水社 1997 (to amazon.jp)

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