Chanel : The Couturiere at Work

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Chanel : The Couturiere at Work

Chanel : The Couturiere at Work : 本書はガブリエル・シャネルのデザインした衣服を時系列に追った作品の歴史です。写真は半分がガブリエル本人の着用写真、半分が他の人々の着用写真。イラストも少し載っています。写真・イラストは1頁あたり1~2点。画像資料の多さに負けずたくさん説明があり解説が鋭いです(後述)。英語なのでちょっとしんどいですがお勧めです。

Amy de la Haye & Shelley Tobin , Chanel : The Couturiere at Work, Overlook Books; Reissue版 2005 (original 1996)

Amy de la Haye & Shelley Tobin , Chanel: The Couturiere at Work, Overlook Books; Reissue版 2005 (original 1996) (to amazon.jp)

著者のエイミー・デ・ラ・ヘイ(Amy de la Haye)は、20世紀のドレス・コレクションを担当するヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアム(Victoria and Albert Museum)のテキスタイル・アンド・ドレス・コレクション(Textiles and Dress Collection)のアシスタント・キュレーター。シェリー・トビン(Shelley Tobin)はナショナル・トラストのコスチューム・キュレーター。学芸員の立場からシャネル制作の衣服を丁寧に説明した画期的な本です。

本書のメリット

シャネルの伝記は無数に存在しますが、本書はシャネルのデザイン・制作した衣服(帽子なども含め)に特化して説明している珍しい本です。またファッション史・服飾史から見ても、これほど丁寧に作品を説明しながら、時系列に沿ってシャネルの活動展開を追っているため読み甲斐があります。以下、勉強になったことなどテーマに分けて感想を書きます。

意外と派手な戦前のシャネル作品

ファッション史では1920年代の簡素なシャネル・スーツを取り上げるのが定石となっていますが、1930年代にかけてシャネルは装飾のごちゃごちゃしたガウンなどをデッサンしていたり(21頁・25頁など)、ギャザーのティアを2つ付けた真っ赤なドレスを制作したり(35頁)と、かなり積極的な作品も多かったことがわかります。

これらの作品を見ていて彼女の≪女性は昼は青虫、夜は蝶になるべき≫との言葉を思い出しました。

戦後のシャネル・スーツ

他方、戦後になっても1950年代・1960年代にシャネル・スーツを作り続けていたことを改めて確認させられました。ファッション史では1920年代と明記されるのでてっきり後の時代に続いていることを忘れてしまいます。

1957年か1958年に制作された白のツイード・スーツはあっさりしたHラインのツーピースで、ジャケットとスカートで構成されています。これがシャネル・スーツであると同時に直後の1960年代にラフなドレスをデザインしていくアンドレ・クレージュピエール・カルダンの先駆的なデザインにも思えます。

またこのスーツのディテールの説明が詳しく、シャネルが裾の内側に平らなリンクの付いた金箔チェーンを縫いつけたことを指摘。豪華なカッチュ(隠された贅沢)を楽しんでいたことがはっきりと分かります。

1960年代の抵抗

カッティングやパイピング、それにHラインまたは緩いAラインは確かにアンドレ・クレージュピエール・カルダンを予想させるのですが、決定的に異なるのはシャネルの素材へのこだわり。クレージュたちはナイロンやPVC(ポリ塩化ビニール)を積極的に使いましたが、シャネルは拒絶しました。

新しい技術や素材が称賛された時代背景からすれば、長年作り続ける同形衣服(つまりスタイル)の伝統に余地は無いと思われますが、シャネルはミニ・ドレスやミニ・スカートを嫌い、膝頭を見苦しいと感じていました。

ところが、著者たちは1920年代のラディカルなシャネルの作品を熟知していることから、なぜ1960年代のミニドレスやミニスカートをラディカルと思わなかったという点に問題提起をしています。

マドモアゼル・シャネルはこのスーツ(シャネル・スーツ)に対して常に微妙に再加工することで同じスタイルを提供し続けました。 彼女はミニスカートを嫌い、膝が見苦しく、流行とは不親切なものだと述べました。1920年代には根本的に短いスカートと思われるものを彼女自身が紹介したにもかかわらずです。(同書105頁)

ここにシャネルの抱えた戦前のラディカル、戦後の保守という決定的な矛盾またはジレンマがあります。本書は衣服そのものからこの矛盾を浮かび上がらせていて鋭いなぁと感じました。シャネルとクレージュ。この両者は余りにも正反対を向いていて、それでいて同じ線路を進んでいる気がしました。

目次

  • シャネル帝国の基盤(幼少期、シャネル帝国の基盤、帽子、ファッションの背景、ドーヴィル、ビアリッツ、シャネルのジャージー生地の使用、パリ)
  • 1920年代(ファッション 1920〜1924シャネルのスラブ時代、香水、ファッション 1925〜1929 ギャルソンヌ・ルック シャネルの劇場衣装デザイン、ジュエリー、シャネル・スタイルの普及)
  • 1930年代(ファッション 1930〜1935、シャネル店のストライキ、シャネルの映画衣装デザインと劇場衣装デザイン、ジュエリー、ファッション 1936〜1939)
  • カムバック 1953~1971(ニュー・ルック、シャネルの復帰、ジュエリー、シャネル模造品、1960〜1971ココ)
  • 最近のシャネル店(シャネルのデザイナー カール・ラガーフェルド、今日のシャネル・ワークショップ、シャネルのビジネス)
  • 参考文献、画像クレジット、索引。

Amy de la Haye & Shelley Tobin , Chanel : The Couturiere at Work, Overlook Books; Reissue版 2005 (original 1996) (to amazon.jp)