花と茎 : ロバート・メイプルソープ展

(以下の記事は2003年に書いたものを構成し直したものです。)

ロバート・メイプルソープ展 ルーシー・フェリー1966年 (c) Estate of Robert Mapplethorpe
ロバート・メイプルソープ展/Robert Mapplethorpe Retrospective ルーシー・フェリー1966年 (c) Estate of Robert Mapplethorpe

寒さの滲みる冬の真っ直中、ロバート・メイプルソープ(Robert Mapplethorpe)展に足を運んだ。並べられた作品群を一つにまとめていえば、引き締まった動植物の肉体のクローズアップといえる。メイプルソープは、広く知られているように、バイセクシャルの写真家であった。写真家としての前半は、黒人男性のヌードや女性ボディービルダーの筋肉美などが多く、40歳前後の晩年には、花の写真が多くなる。

ロバート・メイプルソープ展/Robert Mapplethorpe Retrospective
絵葉書から。「蘭」ロバート・メイプルソープ、1987年/Orchid 1987 (c) Estate of Robert Mapplethorpe

ロバート・メイプルソープやアラーキー(荒木経惟)が撮す花の写真は、ほとんど女性器そのものとして撮る。とりわけ、メイプルソープにあっては、霜が降ったかのように、微かに水分を含ませたように花を写し出し、出来映えは十分なものである。いやらしいセクシャルな意味でも、自然としての花を愛する意味でも、そのものとして花は美しい。惚れたのは次の写真。

Poppy, 1988
「芥子」ロバート・メイプルソープ、1988年/Poppy, 1988 via The Robert Mapplethorpe Foundation – Flowers

また、アラーキーの花の写真と比べると茎も含んで撮された作品が多く、この点は、花・華をテーマに並んで評されることの多い両者にあって、メイプルソープの醍醐味がにじみ出ていると考えてよい。白黒写真の花も、色鮮やかな感じに撮れていたし、カラーも当然に、一つ一つの色が呼吸をしながら自分を表現しているようだった。一緒に見に行った友人が、「やっぱり女は男がいないと生きていけない。茎がそうだ」と言ったことにヒントを受け、アラーキーでは、花ばかりがクローズアップされていることに改めて気づかされた。それに比べて、メイプルソープは、花を茎とともに写し出すから、花を撮した彼の作品には、女性器が出現しているというよりは、むしろ男女がじゃれ合っている姿が露呈していると想われる。あるいは、彼の作品の意味として、両性具有というテーマも提出されているといえる。

展覧会では、彼の作品を眺めつづけた1時間少しのあいだ、きわめてセクシャルな時間を過ごすことができた。

大丸ミュージアム・心斎橋 2003年1月30(水)~2月11日(火・祝)

ロバート・メイプルソープ展/Robert Mapplethorpe Retrospective ルーシー・フェリー1966年 (c) Estate of Robert Mapplethorpe
ロバート・メイプルソープ展/Robert Mapplethorpe Retrospective ルーシー・フェリー1966年 (c) Estate of Robert Mapplethorpe

パンフレットの紹介文

語りかける美意識 : 1970年代のニューヨークに彗星のごとく登場し、エイズによってわずか42年の短い人生の幕を閉じるまで、至上の美を追い求めながら全力でその生涯を駆け抜けた写真家、ロバート・メイプルソープ。アンディ・ウォーホルらのポップアート全盛期にあって、それに飽き足らず、異なる方向へと進んだメイプルソープが求めたものは、肉体と精神を持った生身の人間、実在の肉体の発見、そして表現すること。隠すべき闇や同性愛をもテーマにした彼の作品は、常にセンセーションとスキャンダルに彩られながらも、比類ない美によって衝撃的な感動をもたらしました。そしてやがて死が近づくにつれ、目に映る世界を超越した絶対的な美を求めるようになったのです。本展はその彼の全生涯を明らかにするにふさわしい回顧展です。姿を現すのは、新鮮な支店で世界を発見する喜びにあふれた初期のポラロイド作品、NYクイーンズのカトリックの中流家庭に育った影響を示す日本初公開作品を含む初期の立体作品、ドローイング、さらに女性ボディビルダー/リサ・ライオンに代表される友人達のポートレイト、そしてエロティックな花で知られる、至上の美を求めた晩年の静物写真など約150点。時にはささやくように、そして時には突き刺すように。私たちに語りかけてくる彼の美意識に触れる展覧会です。


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[投稿日]2017/02/07
[更新日]2017/05/29