ラスト、コーション : 旗袍の感想

久しぶりの「旗袍inシネマ」(电影中的旗袍)。今回の映画は「ラスト・コーション」中国名「色戒」です。主人公の王佳芝(女優は湯唯/タン・ウェイ/Tang Wei)の着る ラスト・コーションの旗袍 を紹介します。

アン・リー監督『ラスト、コーション』 USA・中国・台湾・香港、2008年(LUST, CAUTION/色|戒)

ラスト・コーションの旗袍

時代背景は1940年代初期、この頃から西洋の洋裁技術が徐々に入って来て、従来の「平袖」タイプの旗袍に変化をもたらした。

旗袍の様式は「平袖」から今日の「接袖」へ、一気に変化したわけではなく、ゆっくりと段階を踏まえて変化して来ました。

王佳芝が着ていた旗袍はまさに過渡期とも言えるでしょう。映画の中で主に連袖タイプとフレンチ・スリーブの交互でした。

また、この時期、旗袍の西洋化&スリム化によって、西洋風のコートや帽子との組み合わせも増えました。たまに旗袍の歴史がグチャグチャになる映画もありますが^^;

この映画は割と忠実に旗袍の歴史を再現できたのではないでしょうか。

それでは ラスト・コーションの旗袍 、実際の写真で見てみましょう。

連袖

連袖とは袖と身頃がつないでいる、一枚の布から裁断した服です。

これは中国の伝統的な裁断方法を用いた旗袍です。

ラスト・コーションの旗袍 タン・ウェイ
色|戒 (c) 2007 Haishang Films

連袖です。襟の開きは通常右側ですが、おそらくデザイン上、左開きにしたのではないでしょうか。

ラスト・コーションの旗袍
色|戒 (c) 2007 Haishang Films

これも連袖で通常の右開きです。クラッチバッグに合わせるのはその時の流行りでしょう。

ラスト・コーションの旗袍
色|戒 (c) 2007 Haishang Films

これは大学生の頃です。連袖の長袖で飾りのパイピングもなく、素朴な感じです。

色|戒 (c) 2007 Haishang Films
色|戒 (c) 2007 Haishang Films

これも大学生です。やはり連袖で飾りのパイピングも一切付けず、スリットは膝あたりから。

実は民国時期の旗袍は少しだけAラインになっています。それでスリットは膝あたりから開けても十分歩けます。

フレンチ・スリーブ

ここからはフレン・チスリーブです。

一見連袖にも見えますが、肩ラインに縫い目があることで判断できます。

肩に縫い目があると裁断の仕方が異なります。フレンチ・スリーブは西洋式の技術を取り入れたデザインです。

色|戒 (c) 2007 Haishang Films
色|戒 (c) 2007 Haishang Films

この写真に薄らと透けている下着のようなものは見えますか?

これはスリップ・ドレスです。この時期は裏地がなくて、旗袍専用のスリップドレスがあります。

スリット部分にはレースを付けて、歩く時にスリップ・ドレスのレースが見えるのはおしゃれの一つです。

色|戒 (c) 2007 Haishang Films
色|戒 (c) 2007 Haishang Films

手前の奥さんは連袖、傘を持っている王佳芝はフレンチ・スリーブ。

色|戒 (c) 2007 Haishang Films
色|戒 (c) 2007 Haishang Films
色|戒 (c) 2007 Haishang Films
色|戒 (c) 2007 Haishang Films
色|戒 (c) 2007 Haishang Films
色|戒 (c) 2007 Haishang Films
色|戒 (c) 2007 Haishang Films
色|戒 (c) 2007 Haishang Films

この写真も手前の奥さんは連袖、王佳芝はフレンチ・スリーブです。

※映画の中で、王佳芝のマージャン仲間の奥様たち、彼女たちは常に連袖旗袍を着てました。

王佳芝は連袖もフレンチ・スリーブも交互に着てましたが、割合としてはやはりフレンチ・スリーブが多かった。

当時の年配の方はやはり若い方に比べ、西洋の物を受け入れられなかっただろう。

こんな細かいところまで忠実に再現したのもすばらしいです。

小物やコートなど

この時期、旗袍の西洋化&スリム化によって、西洋風のコートや帽子との組み合わせも増えました。

色|戒 (c) 2007 Haishang Films
色|戒 (c) 2007 Haishang Films
色|戒 (c) 2007 Haishang Films
色|戒 (c) 2007 Haishang Films
色|戒 (c) 2007 Haishang Films
色|戒 (c) 2007 Haishang Films

季節や旗袍の素材に合わせて、クロッシェ帽子の素材も変化します。

トレンチ・コート、帽子、首元にスカーフ、クラッチ・バッグなども当時の流行りでした。

色|戒 (c) 2007 Haishang Films
色|戒 (c) 2007 Haishang Films
色|戒 (c) 2007 Haishang Films
色|戒 (c) 2007 Haishang Films

おそろいのピアスとブローチに注目。

このごろ西洋から入ってきたブローチも旗袍の襟元を飾ることになりました。

これはあえて首元のチャイナ・ボタンを付けず、ブローチ専用の旗袍ですね。

終わりに

以上、ここまでじっくり読んで頂いた方は民国旗袍と現代旗袍の違いはお分かりになりましたでしょうか。

少なくとも雰囲気の違いは分かりましたでしょうか。

簡単にまとめた民国旗袍と現代旗袍の違い↓↓↓

民国旗袍 : 上品、奥ゆかしい、フェミニン、女性らしい、家庭的

現代旗袍 : セクシー、かっこういい、キャリア・ウーマン

旗袍って不思議な民族衣装。

同じ旗袍なのに、構造上の違いでこんなにも着る人の雰囲気を変えるのはやっぱり不思議です。

アン・リー監督『ラスト、コーション』 USA・中国・台湾・香港、2008年(LUST, CAUTION/色|戒)


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[投稿日]2017/02/28
[更新日]2017/05/28