草間彌生の水玉と網-束縛と逃走

草間彌生展-永遠の現在

京都へ「草間彌生展-永遠の現在」を観に行った。最終日だったが、場内が広々としていたのでストレスをあまり感じず楽しめた。

写真家の荒木経維(アラーキー)とのコラボがあるということくらいしか知らずに見に行ったのだが、草間の初期の絵は肉感的でダリに似ているところがあり、面白みを持たせようとしながらも、ひたすら暗い。

その暗さは60年代、70年代の、あの「水玉」になっていくのだが、水玉の一連の作品は白と赤の配色が多く、それが今度は突き刺さってくるような気分になる。強迫神経症や幻聴・幻覚が彼女の特徴としてパンフレットに書かれているわけだが、あの水玉は男性、あるいは男根として描かれているように思えて仕方がない。感受性の強過ぎる草間にとっては男根があのような形で大きな迫り来るものとして現われているのだろうか。80年代くらいだったかの作品になると少し分かりやすくなる。水玉から「網」をテーマにした作品へと少しずれるのだが、金網や漁網(とおぼしき)物を使った作品が並んでおり、このような網は「束縛」や「補足」の意味をもってくる。と同時に、そこからの「逃走」という意味も発生する。彼女のモチーフの一つ「自己消滅」もまた、束縛や補足の結果として理解できるのではなかろうか。

そう、網タイツ一つ取っても、それは脚を「縛る」ものであると同時に、肉が網から「はみ出る」という状態も誘うわけで、どこかマゾヒスティックな面とサディスティックな面を双方備えた物として現前してくるのだ。私はストッキングも網タイツが大好きだけど(もちろん、見るだけ)、両者は脚に穿くものとはいえ意味が違うように思う。ちなみに、フルファッションのストッキングは「束縛」的な意味合いの強いパンティー・ストッキングの中にたった一本で攻撃性を備えているわけだから、どちらかといえば網タイツの感じを持っているだろう。

それはともかく、最初の荒木とのコラボの話に戻るが、水玉がどうしても男根にしか見えないのは荒木の作品で撮されている様々な花が女性器にしか見えないという点とピッタリ合っているなぁと思う。もっとも、メイプルソープだって花は女性器なのだが、グロテスクに花を写し出す荒木と違いメイプルソープはシャープに取る。荒木は女好き、メイプルソープはバイセクシャルという違いだといえば簡単すぎるだが・・・。なお、荒木とメイプルソープの違いについては以下のコラムを参照して欲しい。「ロバート・メイプルソープ展-花と茎

もとい、草間彌生の展覧会は、記憶では男性客が10名前後に対し女性客の方が圧倒的に多かったと思うが、作品の根源が男根であろうとなかろうと、可愛く描こうとした草間自身のあどけなさに女性からの人気があるのだろう。私としては「あぁ、男性に迫られたらこんな気分になるのか」と、恐らく一生に一度であろう体験ができたように思い、不思議な気分で会場を出た。

もっとも、一言で言えば水玉は可愛いのだが。。。

京都国立近代美術館
2005年1月6(木)〜2月13日(日)

パンフレットから(草間彌生略歴)

長野県松本市に生まれる。少女時代から幻視・幻聴体験にみまわれる中で水玉と網模様をモティーフに絵を描きはじめる。1948年より京都市立美術工芸学校で日本画を学んだのち、1952年に初個展。1957年に単身渡米。ニューヨーク他で発表した「編目の集積」によるモノクローム絵画で一躍注目され、欧米各地の国際展に参加する。その後も布製の突起物で覆われたソフト・スカルプチュアや、鏡張りの一室に電飾をほどこしたインスタレーション等を創始。1966年ヴェネツィア・ビエンナーレにゲリラ的に≪ナルシスの庭≫を出品。また1960年代後半には反戦など社会的メッセージをこめたパフォーマンスのほか、ボディ・ペインティングやファッション・ショーなど多数のハプニングを展開した。映画も製作、自作自演の映画≪草間の自己消滅≫(1968年)は第4回ベルギー国際短編映画祭など各地の映画祭で入賞。1973年に帰国後は小説家・詩人としても活躍、『クリストファー男娼窟』で第10回野生時代新人賞を受賞した。北九州市立美術館(1987年)、ニューヨーク国際現代美術センター(1989年)などで個展を開き、1993年にはヴェネツィア・ビエンナーレ日本代表となる。1998-99年、ロサンゼルス・カウティ・ミュージアムを皮切りにして、ニューヨーク近代美術館、ウォーカー・アート・センター、東京都現代美術館を巡回する大回顧展が開催された。2000-03年にはインスタレーションを中心とした個展が、コンソルシウム(ディジョン)からはじまり、パリ日本文化会館やアート・ソンジェ・センターなど欧州および韓国を巡回。

2004年には森美術館と札幌芸術の森美術館で、KUSAMATRIXが開催された。2000年第50回芸術選奨文部大臣賞受賞、2001年朝日賞受賞、2003年フランス芸術文化勲章オフィシェ受勲、2004年信毎賞受賞。

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