20070118
●講義を終えるにあたって
(1)授業の開始と準備
①家近先生との会話~武田佐知子『衣服で読み直す日本史 - 男装と王権』
②授業で語りきれなかったこと…大量に本は買ったが
・基本的な染織技術・縫製技術、繊維の種類など
・戦前の衣生活文化~福井貞子さんの諸著作
・20世紀「旧満州」への衣料品輸出と戦争との問題と、大阪・岡山の制服・服地輸出との関連
・旗袍、チマ・チョゴリ、呉服の類似点と相違点
・衣料製品、繊維製品からみた資本主義経済システム(バラバラには話したが)
(2)授業の根本的なメッセージ
①列島における衣服の変遷
②パリと京都との違い
③21世紀の展望
◆お勧め書籍
田村均『ファッションの社会経済史-在来織物業の技術革新と流行市場』日本経済評論社、2004年
※開港によって在来織物業が幕末・明治前期に展開した技術革新と、それを可能にした市場条件=ファッションに目覚めた庶民層の旺盛な服飾生活の実態を明らかにした力作。(詳細はhttp://www.mode21.com/book/002631.html)
塚田朋子『ファッション・ブランドの起源-ポワレとシャネルとマーケティング』雄山閣、2005年
※これまで、経営史において服飾を扱った研究、特にブランド研究がほとんど皆無であった(見向きもされなかった)点は、この本の著者が強く指摘している。服飾史では服飾のデザイナーが評価されることが多いが、経営面で彼ら・彼女らが論じられることはほとんどなかった。その意味で、本書は、これまで断片的にしか知られてこなかったファッション・ブランドの経営戦略を大きく捉える手助けとなる。19世紀のウォルトの登場と社会的背景はもちろんのこと、彼の経営手腕にまで深く立ち入っており、後続のポワレ、シャネルへとブランド史の定番に即し、徹底してマーケティングにこだわった詳細な本となっている。(詳細はhttp://www.mode21.com/book/002378.html)
小原博『マーケティング生成史論』増補版、税務経理協会、1991年
※現代企業に不可欠なマーケティング活動や機能が、資本主義経済の展開のもとで、どのような企業経営的、社会経済的事情に基づいて成立したかを、シンガー・ミシン社の活動から検討している。
(詳細はhttp://www.mode21.com/book/002920.html)
松嵜久実『地域経済の形成と発展の原理-伊勢崎織物業史における資本原理と地域原理』シーエーピー出版、2001年
※本書は、伊勢崎銘仙と呼ばれた絹織物業の歴史から、地域経済における資本の原理と地域の原理の関係を捉えようとした研究である。(詳細はhttp://www.mode21.com/book/002441.html)
朝岡康二『ものと人間の文化史 - 古着』法政大学出版局、2003年
※リサイクル品として明治期以降も利用され続けてきた古着とその生活文化を丁寧に紹介している。白黒図版が多数あり、とても助かる。近代の洋服受容によって、和洋折衷風の服装が広まったが、本書では和服と洋服の形状の違いに注目し、麻→綿→化合繊という繊維の推移にも触れながら、衣文化を縦横無尽に説明している。
(詳細はhttp://www.mode21.com/book/003013.html)
謝黎『チャイナドレスをまとう女性たち-旗袍にみる中国の近・現代』青弓社、2004年
※チャイナドレスの人気度に比べて、その歴史については、実態が知られていない。中国国内の繁華街を歩いてみても、旗袍を着た女性を見ることはできない。このことは、日本の着物が伝統着として位置づけられてきたにもかかわらず、20世紀後半には家庭内からも姿を消した状況と似ている。筆者がこだわるのは、チャイナドレスもまた、着物と同様に、洋服の流入とともに改めて「伝統」のレッテルを貼られた運命にある。
(詳細はhttp://www.mode21.com/book/000017.html)
長澤均『BIBA スウィンギン・ロンドン 1965-1974』ブルース・インターアクションズ、2006年
※60年代イギリスが生んだストリート・ファッションの大御所ビバ(BIBA)を中心に、著者の長澤均らパピエ・コレのメンバーが1年間かけて総力を結集して編集したファッション文化史。60・70年代ロンドンのストリート・カルチャーを写真と文章で豊富に楽しめる。(詳細はhttp://www.mode21.com/book/002728.html)
北山晴一『おしゃれの社会史』朝日新聞社、1991年
※ファッション、ブランド、モードの発祥地として考えられやすいフランスの首都パリについて、19世紀を中心に、衣服の消費社会が登場する経緯とシステムを分かりやすく書いた著書。19世紀、ないしは20世紀も最初の14年間におけるパリの威光を認めつつも、著者は、その要因を丁寧に3点、指摘している。①フランス革命とナポレオンが推進した中央集権的政治・社会制度 ②それに伴なうフランス人の中央志向的(パリ中心的)メンタリティの発達 ③上記のような政治的、社会的、心情的パリ中心主義を支える鉄道網(パリを放射線状に延びる)の発達。
(詳細はhttp://www.mode21.com/book/002939.html)
実川元子『ファッションデザイナー-ココ・シャネル』こんな生き方がしたいシリーズ、理論社、2000年
※有名企業や商標・ロゴにおいて全て言えることだが、ブランドとしてのシャネルの知名度に比べ、創始者ガブリエル・シャネルについて知っている人は少ない。伝記である本書は、シャネルの伝記によくあるプライベートな恋愛を強調するよりも、むしろ、彼女自身がデザイナーとして成功する過程を追っている。筆者が強調するのは、20世紀初頭、19世紀の影響下にあった、男性から見た女性像というモードを女性から見た女性像、私から見た私像をシャネルが提出したことにある。(詳細はhttp://www.mode21.com/book/000012.html)
ウィリアム・A. ロッシ『エロチックな足 - 足と靴の文化誌』山内昶・山内彰・西川隆訳、筑摩書房、1999年
※単に歩くための重要な身体器官として考えられてきた足と、それを保護する物と考えられがちな靴について、両者の接触によってエロチックな意味合いが十二分に含まれるという観点を大きく取り上げた本。靴と足の関係の常識を打ち破り、靴、そしてそれを履く文化を、セックス・アピールを高めるための性のシンボルという観点にもとづき、文化象徴論的な説明が丁寧になされており、性の問題にも躊躇なく踏み込んだ画期的な著書である。
(詳細はhttp://www.mode21.com/book/002946.html)
武田佐知子『衣服で読み直す日本史 - 男装と王権』朝日新聞社、1998年
※本書では、『リボンの騎士』や『ベルサイユのばら』などの少女向け漫画に異性装が多いことに問題関心をもち、近世までの日本列島における男装や女装が、中国やヨーロッパ諸国に比べて比較的許容されるものであり続けた要因や構造を描いている。例えば、歌舞伎だけに留まらず、『ヴェルサイユのばら』をはじめとする宝塚歌劇団の流行などが題材にとられている。(詳細はhttp://www.mode21.com/book/002940.html)
田中千代『世界の民俗衣装 - 装い方の知恵をさぐる』平凡社、1985年
※著者自身が単独で世界各地を歩き回って集めた衣装を紹介。衣服は、人間が裁断や縫製をして、作り上げたものであり、着用とは衣服に身体が入ることだという基本的な発想にもとづいて、「まく(巻く)」・「あな(穴)」・「わ(輪・環)」・「はく(穿く)」という4種類の着用法ごとに着方・歴史・平面図などを掲載し、それぞれの代表的な民俗衣装を図版で紹介している(カラー図版、白黒図版ともに多数)。(詳細はhttp://www.mode21.com/book/002918.html)
◆お勧めサイト
「東京家政大学・東京家政大学短期大学部/大学案内/歴史と沿革」
http://www.tokyo-kasei.ac.jp/about/history.html
※1881(明治14)年に渡辺辰五郎が東京の本郷湯島の自宅に裁縫私塾「和洋裁縫伝習所」を開設して始まった東京家政大学の歴史と沿革のページ。渡辺はミシン縫いよりも手縫いを重視し、後には料理などの指導も行なった。良妻賢母的な意図と職業婦人的な意図の両側面がみられる。
◆お勧め映画
若松節朗『子宮の記憶/ここにあなたがいる』2007年、日本。
※松雪泰子主演。母子愛と男女愛との関係について考えさせる。シネスイッチ銀座【1月13日(土)~】、大阪 テアトル梅田【春】、京都 京都シネマ【時期未定】
ウォン・カーウァイ(王家衛)『ブエノスアイレス』原題「春光乍洩」、1997年、香港。
※レスリー・チャン(張國榮)、トニー・レオン(梁朝偉)、チャン・チェン(張震)主演。「初の本格的な海外ロケ。街の風景と人の心、男と男、先輩・後輩、息子と父、それぞれが引き合い反発し合う寓意(アレゴリー)の映像美が見物。イグアスの滝やエクレルール灯台の風景、軽快なアルゼンチン・タンゴなどが贅沢に披露されている」(自サイトhttp://wkw2004.com/works/1997.htmlより転載)。ブエノスアイレス、香港、上海、東京、パリ、ベルリンといった国際都市は、所属国を越えた多様・多層的な文化を吸収してきたために、逆に、上記諸都市の類似性がクローズアップされた。この作品は、その意味での都市論、または都市問題を提起している(例えば、東京という国際都市は首都であり得るのか?といった問題)。また、20~30歳代の男性が抱える「父になること」の問題にも触れており、とても勉強になる。
●試験問題のテーマ
(1)以下のテーマを頭かノートにまとめておく。以下の内、2問程度を論述で、1問を用語選択で出題。
①古代における繊維・布の献上品
②中世末期における木綿輸入とその国産化
③服装の「近世化」
④列島における衣服の進化(近世まで)
⑤小袖の変化
⑥近世における呉服商の展開─大丸屋呉服店(現/大丸百貨店)を中心に
⑦19世紀の摂河泉地域(≒大阪府)を中心にした綿業の展開 - 日本の産業革命の例
(2)以下のテーマを頭かノートにまとめておく。以下の内、1問を論述で出題。
①中世とは何か─日本国の崩壊 → 再建
②「戦後」はいつ始まったのか─近代の「終わり」から考える
③【コラム】現代鉄道地図から考えてみよう!
※注意点
①用語選択1題(20点)、記述4題(20×4問=80点)程度、合計5題程度を問題に出す。そのため、試験時間内に初めて考える状況では時間切れの可能性が高い。予めノートにまとめておくのが無難。
②授業で配付した資料、特に箇条書きの箇所などを単に繋げて文章にしたような答案は、不正解とみなす。事実、変化、原因・結果などを理解して書けているかどうかが採点基準になる。
③上記テーマのうち、配付資料に記さず口頭で話した内容まで踏み込んだ答案は、一層歓迎される。
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