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(1)ブランド前史:デザイナーとその顧客

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ハイ・ファッションを支えてきたものは昔も今も選民意識であり、その支持層はヨーロッパの中世以来、つねに貴族であったし、19世紀以降は、新興ブルジョワジーも参入したのであった。このような上から下に向けられたベクトルこそが、モードという現象である。

とはいえ、身分にもとづいた上下関係がつねに固定的だというわけではない。19世紀半ばに2種類のモード推進者であるクライアント(貴族などの顧客)とクリエイター(デザイナー)との引力関係が変化した。


従来は新たな反物が入荷すると、宮廷で採寸を行ない、店で仕立てるという形態がとられていたが、シャルル・フレデリック・ウォルトの登場で事態は一変する。ウォルトは、パリにある自分のサロンで専属モデルを使って定期的にコレクションを発表し、有閑階級の前にそれを披露し、目前の作品を観客に販売したわけである。これは、レディ・メイド(既製)のデザインとして作品を買わせる行為であり、宮廷の生みだした特別注文という制度を反転させた出来事であった。ここに、ファッション・デザイナーという新しい職業が誕生した。


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