ギャルソンヌ・ルック : garçonne look

ギャルソンヌ・ルック garçonne look とは少年風衣装、男性風衣装、軽装のボーイッシュの総称といわれてきました。フランス語でgarçonne(garçonne look)。1910年代または20年代ルックの代表例です。厳密には、男性衣装に近いというよりは、むしろ女性らしさの喪失(主婦・母性の喪失)、複雑な装飾の除去といった特徴が大きく、当時は女性のみが着用していたスカートもギャルソンヌ・ルックに含まれます。別名マニッシュ・ルック(mannish look)やフラッパー・ルック(おてんば娘ルック/flapper look)。

ギャルソンヌの語源

garçonne(ギャルソンヌ)はgarçon(「ギャルソン;男の子)が転化した女性形で「少年のような女性」、「男性のような女性」の意味。カタカナ表記ではガルソンヌとも書きます。ギャルソンの女性形転化はフランスの作家ヴィクトル・マルグリットの同名小説『ガルソンヌ』(1922年刊)から。

ギャルソンヌの語源となった本
Victor Margueritte, La Garçonne: Roman de moeurs

ギャルソンヌ・ルック のスタイル

ギャルソンヌ・ルックの典型的なスタイルは、

  • 扁平な胸(乳房を強調しない)
  • 小さな頭部とショート・ボブ(断髪)の髪型(ストレートが多くパーマ少)
  • ほっそりとした直線的輪郭の衣装
  • 薄い化粧または男性風化粧
  • 少ない装飾
  • 煙草
  • ハイ・ヒール・シューズ

です。衣服だけでいえば、今ほどではない細身のスーツとズボン、あるいはドレスや膝下丈のスカート、それにシャツ、ブラウスが代表的な品目でした。装飾が多くゆったりとしたドレスやスカートが女性的であるのと対照的に考えられます。ギャルソンヌ・ルックの中でも特にボブのヘア・スタイルはギャルソンヌ・スタイルとも言われます。

第一次世界大戦中の欧米や以後の東アジアその他の地域で女性の社会進出が活発になり、働く女性たちを背景に、20年代にかけてギャルソンヌ・ルックは流行しました。前代に比べてシンプルで細身の衣装が特徴で、当時の新興デザイナーたちが率先して採り入れたスタイルです。ガブリエル・シャネルジャンヌ・ランバンマドレーヌ・ヴィオネイシドール・パカンら。1927年には一部にスカート丈が伸びはじめ女性性が復調傾向に入りました。

この写真は、フランスの写真家 モーリス・ルイ・ブランガー (Maurice-Louis Branger) が1925年にパリで写した「カフェ・テラス」です。彼の作品は人物が多いのですが、たまに街角を写したものもあり、白黒写真という理由もあって私はよく一世代前のエフゲニ・アジェ (Eugène Atget) を思い出します。なお、この「カフェ・テラス」には別の角度から写した作品もあります(こちら)。二人ともショート・ボブに帽子を被り、左側女性はゆったり目のワン・ピース、右側女性は同じくゆったり目のツー・ピースを着ています。二人ともハイ・ヒールの靴を履いて脚を組み、左の女性は光の加減でストッキングが輝いています。ギャルソンヌ・ルックの一例に相応しいと思います。

ギャルソンヌ・ルック
Maurice-Louis Branger – Terrasse de café, Paris, 1925 via Pleasurephoto Room

ギャルソンヌ・ルックの世界的流行

ギャルソンヌ・ルックは欧米に留まらず世界的に流行した点が重要で、モダン・ガール(modern girl)とよばれた女性の都市遊民の典型的なファッションとなりました。モダン・ガールという女性像に属するのは、女学生、職業婦人、そして女性社会運動家たちで、共通するのは、冒頭で記したように家庭主婦を否定する存在ということで、主婦も含め当時新しく女性を区分する用語や職種が登場していたことが社会的な背景です。静的な主婦像が形成されたのは実は20世紀に入ってからのことです。

モダン・ガールは新女性とよばれることもあり、19世紀的で封建的な風習、とくに女性は固定的で室内にいるのが理想とされる風習を打破する意味合いを持っていました。1910年代は辛亥革命、第一次世界大戦、ロシア革命など、世界の主要国が動乱に巻き込まれ、女性たちは男性の仕事を引き継ぐ必要があったからです。先述のマルグリットの小説『ガルソンヌ』では当時の職業婦人がギャルソンヌとよばれています。

ギャルソンヌ・ルック 黎明暉 Li Minghui
黎明暉 via 中國第一位歌星黎明暉 – 壹讀

写真は中国映画黎明期の女優・黎明晖(黎明暉、Li Minghui、1909年-2003年)です。ギャルソンヌ・ルックの作品が多いです。また、1920・30年代の上海の写真を見ていますと、旗袍は引き締まったスタイルゆえにギャルソンヌとして人気があったことがわかります。旗袍に似合う髪形は、カット、巻き上げ、パーマによる短髪ですから、ギャルソンヌ・ルックに適していたのですね。

なお、ギャルソンヌ・ルックの特徴に活動性が指摘されることが多くみられますが、これは間違い。活動性を保証する衣装は古今東西どこにでも存在します。

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[投稿日]2015/03/29
[更新日]2017/05/23