カシュクール:cache-coeur
もともとフランス語。クール(胸)が隠れるほど小さくて短い、という意味。英語では、クロスオーバー・フロント(交差した前面)と同じ意味。
女性用の小さなベストやショールなどの形をした上衣をさすが、日本の着物のような打ち合わせを特徴にした上衣類、またはそのようにして前後で結んだ形をさす場合もある。
古くから、フランスでは、カシュクールとは両方の前身頃が底辺となった長い三角形の胴着(着ると短くなるが)のことで、前身頃を胸で交差させたまま後ろへ回し、基本的に背中で結んで着るのが習慣だった。衿あきは着物のような打ち合わせ。
特徴は胸の辺りにポイントが置かれ、ハイ・ウェストを印象づけることにある。バレリーナたちが練習用に着ているのもカシュクールである。
カシュクールがフランスで流行したのはフランス革命以後のこと。当時は習慣となっていたコルセット着用が減少し、白い木綿のギリシア風のドレスが人気を呼んだ。これは若さを強調するハイ・ウェストのドレス(後にエンパイア・スタイルと呼ばれた)で、これを着用する際に、コルセットを付けずに胸を高い位置に置くことが焦点となった。それに用いられたのがカシュクールというわけである。
1970年、ケンゾー(高田賢三)がパリでデビューしたとき、白地に紺の浴衣地でフリルがたくさんついたカシュクール付ミディ・ドレスを作った。これは大人気となって様々なバリエーションが生まれることとなった。
フランス革命200年に当たる1988年には、ハイ・ウェストのシルエットに注目が集まり、肩から胸元へかけてのデザインが種々展開した。例えば、コム・デ・ギャルソンのショート丈のボレロ、ジャンポール・ゴルチエの短いブルゾンなど。また、ロメオ・ジリ、ガリアーノ、ラクロワなどが出したカシュクールは、88~89年秋冬の特徴となった。
なお、単にクロスオーバーといった場合は、TPOの違うファッションを混ぜる(交差させる)着方をいうので、クロスオーバー・フロントとは別。
