ジャン=リュック・ゴダール『恋人のいる時間』(原題:Une femme mariée: Suite de fragments d'un film tourné en 1964)、フランス、1964年。主演は、マーシャ・メリル(Macha Méril)、ベルナール・ノエル(Bernard Noël)。
原題を直訳すると、「既婚女性─1964年に収斂された一映画の破片の連続」。60年代のフランスが舞台で、既婚女性が、恋人と旦那という二人の男性に挟まれながら、現代の都市生活のなかで生じる二分法を自問自答しつづける映画。
恋人と旦那、室外と室内、下着と裸、外出着と下着、キス・愛撫と挿入、妊娠と避妊、危険(danger)と天使(angel)、実子と養子、仕事と恋愛、演技と本気、機械と人間、長所と短所、彼女(ELLE)と私(JE)、存在と不在、といったように、実にさまざまな二分法が出てくる。
それらの二分法的な問いは、はっきりとした解答が出されないまま、それぞれが絡まりながら、既婚女性のなかで、ひたすら自問自答は続けられる。問いの間に挿入される長短いくつかの場面もまた、これらの問いのヒントになりながらも解答をもたらさない。
主人か恋人か、いずれの子供か分からない妊娠を知ってから、最終的に女性が気づくのは、それらの問いが「あれか、これか」という「選択」の問題だということだ。とはいえ、俳優をしている恋人との最後の問答でようやく解答らしきものが出てくるが、明瞭な解答は用意されているわけではない。
映像的な評価としては、主演男性二人の区別が曖昧にされている一方で、主演女優マーシャ・メリルのチャーミングで少し小悪魔の笑顔と、彼女の一人目の子供の表情の2点が浮き彫りにされている点を挙げることができる。また、白黒映画にも関わらず、カラフルに描かれた点も映像的に称賛できる。
衣裳担当は、ロランス・クレルバル(Laurence Clairval)で、ジャック・ドゥミー『ロシュフォールの恋人たち』(1966)、アニエス・ヴァルダ『幸福』(1965)などでも、衣裳やワードローブを担当している。
1886年にドイツのコルセット製造業者から出発し、フランス進出が1960年代初頭までもたついたものの、当時のフランスで爆発ヒットした下着メーカー「トリンプ」の広告が随所に挿入されている。
