ティン・シャンシー(丁善璽)『旗正飄飄』、1987年、台湾。日本未公開作品
男装の麗人といわれるブリジット・リン(林青霞)が持ち味を余すところなく披露した政治サスペンス。上海のクラブを取り巻く日中スパイ合戦が見物で、ブリジット・リンをはじめに主演女優たちのドレスが目白押し。
美術指導は、1973年の李行監督作品『彩雲飛』で台灣1973年第11屆金馬獎最佳彩色影片美術設計を受賞した鄒志良(Zou Zhiliang)。他にも『玉卿嫂』などで美術指導を担当、007のパロディである『008皇帝ミッション』では編集を受け持った。
特にお勧めは、2枚。1枚目のブリジット・リン演じる秦鳳が上海を発つ最期の場面で見せる黒のコート。男装の麗人の一場面である。また、2枚目は、上海のクラブで情報戦の疲れを秦鳳が一瞬癒す場面で、淡いピンクのサテンが輝くマーメイド・ドレス。
満州事変・上海事変を経た1937年7月7日、北京郊外の盧溝橋で起こった日中両軍の戦闘は、8月13日に上海へ拡大した。ここに日中全面戦争が始まったわけだが、本作品は、以後12月に南京が陥落するまでの上海における、日本の女性スパイ川島芳子を探す中国側と、彼女を隠しつつスパイさせる日本側との女性特務員を中心にした確執が描かれている。
川島芳子は、東洋のマタ・ハリと呼ばれた中国人スパイ。清朝最期の皇帝(愛新覚羅溥儀;爱新觉罗溥仪)の親戚にあたるため、国民党や共産党とは敵となり日本軍に従事したというのが彼女のおかれた立場で、作品にもその複雑さが垣間見られる。
川島芳子は、上海側の女特務である秦鳳を逮捕しようとするが、秦鳳の方は川島に個人的な恨みを抱いており、クリスマス・イブの日、運命の対決の舞台となるダンス・パーティが催される。
