陳数の旗袍 : 許文強との再会時の旗袍

ガオ・シーシー監督のドラマ『新・上海グランド』(高希希『新上海灘』)のDVD全14巻(全42話)から、出演女優のチェン・シュー(陳数, Chen Shu)の旗袍を紹介します。今回は方艶蕓が主人公の許文強と上海で再会を果たす場面、 再会時の旗袍 を検討します。

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陳数の旗袍 : パーティ会場」で述べたように、チェン・シュー(陳数)が演じる方艶蕓は上海社交界の華という設定上、他の女性たちよりも派手な旗袍を着ています。

再会時の旗袍

次の写真は方艶蕓が北京で別れた主人公の許文強と上海で再会を果たす場面です。

再会時の旗袍
ガオ・シーシー『新・上海グランド』(高希希『新上海灘』, Gao Xixi, Shang Hai Bund) (c) 北京天中映画文化芸術有限公司

この旗袍も、「陳数の旗袍 : パーティ会場」で取り上げた旗袍と同じで、高い領に設計されています。緑色とオレンジ色を基調とした旗袍で、領にチャイナ・ボタンが2つ設置されているのが違う点です。曲線の違和感はともかくとして、ボタンが2つ付けられているのは、領元を引き締めるという意味で当時の実態に近いと思います。

再会時の旗袍
ガオ・シーシー『新・上海グランド』(高希希『新上海灘』, Gao Xixi, Shang Hai Bund) (c) 北京天中映画文化芸術有限公司

許文強と再会を果たした方艶蕓は、初めて上海に来た時に親戚に紹介してもらった住居に彼を案内します。自分は馮敬堯にあてがわれた屋敷に数名の女中と暮らしますが、許文強が上海へ来た時のことを考えて、毎日、この旧居を女中に掃除させていました。

再会時の旗袍
ガオ・シーシー『新・上海グランド』(高希希『新上海灘』, Gao Xixi, Shang Hai Bund) (c) 北京天中映画文化芸術有限公司

コートを着る習慣は当時の資料で確認できます(黒色が妥当かはともかく)。ハイ・ヒール・シューズがやや高いかと思われますが、それは置いておくとして、この写真での違和感はコートまたは旗袍の丈です。直立で膝頭が見えるか見えないかの丈は、1930年代には考えにくいです。当時の娼婦の着用していた旗袍ですら、膝は完全に隠れ、足首の方に近い丈をもっていました。娼婦たちの色気(セックス・アピール)の一つは、スリットに施された複数のチャイナ・ボタンの隙間から見え隠れする脚で表現していましたから、これは戦後じゃないのと疑問が出てきます。

再会直後の旗袍

そして、次の写真に移りましょう。タクシーの中でコートを脱いだ場面です。コートで隠れていた緑色地の旗袍の上半身の設計が分かります。

再会時の旗袍
ガオ・シーシー『新・上海グランド』(高希希『新上海灘』, Gao Xixi, Shang Hai Bund) (c) 北京天中映画文化芸術有限公司

やや驚くのは、袖無し(ノー・スリーブ)です。また、肩の皺から判断して、この旗袍には肩縫い線はないと判断します。とすると、旧型旗袍と新型旗袍の移行期に流行したフレンチ・スリーブ(詳細は「『ラスト・コーション』の旗袍」後半を参照)でもなく、今の旗袍(現代旗袍)そのものという印象。当時の半袖は肩を全て覆い、脇下へ直線に設計されている形態(つまりフレンチ・スリーブ)が一般的でしたから、手抜きの設計だといわねばなりません。

もう一つ、左肩から胸元にかけての横に弛んだ部分が2か所確認できますが、これは左身頃の設計が方艶蕓を演じる陳数(チェン・シュー)の胸部に合っていないことを示します。経費削減のため、既製服でごまかしたか、あるいは設計上のミスかと感じました。

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[投稿日]2017/04/02
[更新日]2017/05/26