陳数の旗袍 : パーティでの旗袍

ガオ・シーシー監督のドラマ『新・上海グランド』(高希希『新上海灘』)のDVD全14巻(全42話)から、出演女優のチェン・シュー, Chen Shu)の旗袍を紹介します。今回は、 パーティでの旗袍 です。

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舞台は日中戦争勃発前で、だいたい1935年頃と思われます。チェン・シュー(陳数)が演じる方艶蕓は、上海マフィアの頂点に立つ馮敬堯の愛人で、パーティに同伴する(上海社交界の華)という設定ですから、他の旗袍を着る女性たちよりも派手なものを着ることが多いのでした。

ガオ・シーシー『新・上海グランド』(高希希『新上海灘』, Gao Xixi, Shang Hai Bund) (c) 北京天中映画文化芸術有限公司

パーティでの旗袍

このクリーム地に花柄の旗袍、次の写真では、かなり高い領に設計されています。

ガオ・シーシー『新・上海グランド』(高希希『新上海灘』, Gao Xixi, Shang Hai Bund) (c) 北京天中映画文化芸術有限公司

違和感があるのは領元にかけての曲線です。「旗袍」にあるように、領が高かった1960年代香港では、領元では無く領の上部も左右をくっつけます(「旗袍」の1枚目)。多くはそれをチャイナ・ボタンまたはフックで行なっていました。上の写真はチャイナ・ボタンを使っていますが、領元のみになっています。また、1940年に南京で撮影された女子大生の写真(「旗袍」の3枚目)では、領はもっと低く、領の上下がぴったりとくっついています。これは女学生ゆえの禁欲さを強調しているので、方艶蕓の立場とは異なりますが、上の写真の曲線は、清朝期の旗袍に近い形状で(「旗袍」の2枚目)、時代の点でも立場の点でも、これは間違っているのではないかと感じました。

もちろん、清朝期旗袍の名残があってもおかしくないともいえますが、この旗袍は半袖ですから、腕を露出しています。腕も脚も隠す清朝期旗袍の名残として、首だけは開放的なままにしたでしょうか。この点だけ、時代考証的に、また歴史の再現の点からみて疑問に残る所です。

なお、このドラマの時期設定から数年後の1940年代初頭を描いた『ラスト・コーション』の旗袍の領と比べると、さらに違和感が増します。ドラマ全体で、旗袍の領はとても浮いた感じで設計・縫製されています。

ガオ・シーシー『新・上海グランド』(高希希『新上海灘』, Gao Xixi, Shang Hai Bund) (c) 北京天中映画文化芸術有限公司

この旗袍は当時では比較的新しいもので、膝頭が辛うじて覆われている以外は、現代旗袍とほぼ同じものです。上の写真で分かるように、スリットはほとんど臀部(お尻)にまで開いています。写真では分かりにくいですが、袖は接袖(セット・イン・スリーブ : set in sleeve)の半袖です。

以上、パーティ会場でのチェン・シュー(陳数)の旗袍を吟味しました。おおむね、1935年頃にこのような旗袍がありえたとはいえますが、しつこく書いた通り、領については違和感が残ります。

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