ミシンの特徴2:簡便性

ミシンの特徴には大きく分けて3点が挙げられます。この3点は、高度な設置自由度、簡便性、広い用途です。これらの特徴について、1ページずつに分割して説明します。出典は岩本真一『ミシンと衣服の経済史』思文閣出版、2014年、19~28頁で、同著本文を元に、分かりやすく説明を加えました。[当サイト内紹介ページへ][思文閣出版のページへ][amazonへ]

1911年に刊行された『共立女子職業学校二十五年史』によりますと、同校に設置された裁縫科の紹介に、ミシンが製造品目を問わない点が明記されています。やや極端に言えば、布であれば何でも縫えるというミシンの特徴を示しています。

此の科に於ては和服の裁縫「ミシン」使用法、男女小児洋服、婦人洋服及び其の下着類の裁方、積り方、縫方、袋物の製作を授く。婦人必須の業たるが故に生徒の之を終むるもの最も多し、従来「ミシン」の使用は洋服の製作に限られしが近来は之を拡めて日本服の製作にも使用することゝせり。(共立女子職業学校『共立女子職業学校二十五年史』1911年)

この紹介には、共立女子職業学校裁縫科で教授された衣服および関連品目として、「和服」「男女小児洋服」「婦人洋服及び其の下着類」「袋物」「日本服」が挙げられています。「和服」と「日本服」の関係は明記されていませんが、「洋服」への対語として類似したものであると推察されます。

さて、表3 はシンガー社が出版したカタログを一覧化したものです。これによると、一般的機種である第44種は、第4 ・7 ・8 号が布帛類・革類全般に向いており、縫針2 本・動揺梭2 個を備えた第35号の場合も、靴、上靴、靴の甲掛、コルセット(腰部、蓋部含む)、シャツ、襯衣、ズボンつり、襪帯、カラー、カフス、婦人用外套、雨衣、畦綿布製ズボン(労働者用)、外套、チョッキ、「及び凡て衣服類を製造するに最も博く使用せらる」ものでした(シンガー製造会社編『諸製造所用裁縫機械目録表』南中社,1901年)。

表3 製造所向けシンガー社カタログ登載機種一覧(1901年) via 岩本真一『ミシンと衣服の経済史―地球規模経済と家内生産―』思文閣出版、2014年7月、24・25頁[amazon

このように、ミシンは1台でもさまざまな品目を製造することが可能でした。この一般性は生地の厚薄も不問にしました。とりわけ、厚手生地の縫製の場合、「押へ棒ノ調子ヲ、織物の地質ノ厚薄ニ応シ加減スル事」(シンガー教育部裁縫学校編『講習 自第壹課至第六課』シンガー・マヌフアクチユアーリング・カムパニー,1923年,17頁)がシンガー裁縫学校の練習課題となったように、生地の厚薄は調整可能でした。一例として、兵庫県姫路市に操業していた仕立店の史料「柔道着謹告」から引用すると、「本品ハ在来ノ品ト異ナリ、刺縫ノ際素地ノ厚薄ハ少シモ関係セザルヲ以テ(器械力ナレバ)三枚重ネトセリ。故ニ在来品ト比較シテ、確カニ三倍以上ノ強ミアルハ勿論ナリ」とあります。

ミシン用途の広がりは、まずは本縫1 本針の原型から縫針が増加することで拡大し、「附属諸機械で一切の裁縫附属品の縫方が容易に出来得られる」(山田東明『洋服裁縫新書』文錦堂、1907年、73頁)とあるように、主として付属品による拡大を特徴としていました。


コメントを残す