近世までの衣服動向がコンパクトにまとめられていて分かりやすい。図版はモノクロだが豊富で特徴的なものを選出。
西洋の被服が形態の変遷に重点を置いてきたのに対し、日本の被服が、デザインや色彩に注目されてきたという問題意識(文様形式に焦点を当てる)をもって、公家装束・武家装束だけでなく、能文化や染織技術にも触れた被服文化史となっている。
承知の通り、柳田国男は、明治期以降の日本の衣服が、西洋風のものや古着の多様さによって、世界でも珍しいほどゴタゴタしている点を憂えた。
しかし、元井能が、本書で、日本の被服にこだわりつつも、西洋の服が洋服、あるいは単に「ふく」と称され、従来の日本の被服が「和服」「きもの」という名称でよばれる点(日本の衣服史の二重性)を指摘しながらも、決して、この二重性を矛盾という観点だけで捉えていない点は評価に値する。また、日本における被服の多様性という問題から、現代の被服が抱える多様性の問題へと観点を広げ、本書を締めくくる。
元井能『日本被服文化史』光生館、1969年