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イノベーションのジレンマ

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書誌情報: クレイトン・クリステンセン『イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき―』増補改訂版,玉田俊平太・伊豆原弓訳,翔泳社、2001年。
amazonや出版社の紹介文: (「MARC」データベースより)業界を支配する巨大企業が、その優れた企業戦略ゆえに滅んでいくジレンマの図式を分析し、既存事業を衰退させる可能性を持つ破壊的イノベーションに対して、経営者はどう対処すべきかを解説する。2000年刊の増補改訂版。

書評:

4798100234.png素晴らしいと誰もが思うイノベーション(技術革新)の抱えた皮肉を痛烈に暴いた意欲作。これぞ前進的な経済学です。

まちづくりだのモノづくりだの、先進国の政府も企業も庶民も憑りつかれた最近の神話は、その辺にゴロゴロと転がっていますが、イノベーション神話もまたしかり。

この20年、何か変わったのでしょうか?
企業の技術革新によって企業が生き延びて、だからといって私たちの生活は向上しましたか?

そういう疑問を払拭してくれる著書がこの『イノベーションのジレンマ』です。

企業はイノベーションによって滅びます。新たな技術の地平を切り出した企業は一旦、ライバル企業に勝利しますが、今まで下火だった別の企業の市場参入を許すことになり、競争相手は減りません。そして再び新たな技術の地平を切り開き、新たな敵と遭遇し、また勝つ。そうする間に未知の新興企業が地平そのものを揺るがし、今までの地平では見向きもされないような、新たな地平が広がります。

ある集団の中で日本語や英語をひたすら勉強してきて、ある日突然に「今日からはフランス語だ」というようなものです。これを著者は競争基盤の変化という観点で説明を続けます。事例は主にパソコンおよびその部品業界です。

1990年代に活発だったハードディスクの開発競争によって勝者と敗者が生まれ、結局、90年代PCの弱点だった高価という点を新興工業国が克服し、後者の勝利という形でハードディスク業界が新たな地平で落ち着いたはずだったのが、90年代末頃から始まった記憶装置と計算装置の進化によってハードディスクそのものの地位がPC部品の中で凋落をはじめ、MD、フラッシュ・メモリのような記憶媒体を手掛けられない新興企業もまた、かつての大手企業とともに凋落します。

およそ、このような流れだったと思います。PC、ネットワーク、インターネットの相関関係についても言及があったような気がしますが、本書を応用して、以下のような流れを考えてみるのも面白そうです。つまり、20世紀中後期のコンピュータ市場を独占していた米国IBMの元社員ビル・ゲイツが、独立後にマイクロ・ソフト社を設立し、そのMS社製品にへばりついた製品展開・サービス展開をしたGoogle社に旨味を持って行かれるという流れです。

印象に残っている最大のエピソードは、アメリカの電気自動車の話でした。最近、小学生でも知っているエコ・カー。ガソリン車の環境汚染具合を軽減するために代替車として普及したものですが、電気自動車が作れるようになったという人類の進歩が背景にあるのではありません。電気の開発は石油の応用と時期はさほど離れておらず、19世紀のことでした。

エジソンさんは偉い人ということですね。

アメリカのカリフォルニア州は1970年に、車製造販売会社は電気自動車を販売台数の5%に含まなければ営業権を剥奪するという法律を掲げました。70年代にこの法令が出されたということは、既に電気自動車の製造能力はあったということです。そして、本書の著者、クレイトン・クリステンセンは、以下のエピソードをもってきて、イノベーションの地平の揺らぎを導出します。すなわち、≪19世紀、誰も知らなかったガソリン車と電気自動車は、1890年代に複数の会社によって開発と市場調査が行なわれた、20世紀の自動車社会を担うのはガソリンなのか電気なのか、分からなかったからだ。そして、ガソリン満タンと充電満タンでは、消費者たちは燃費の良い前者を選んだ≫。

石炭車、蒸気車しか知らなった人類は、19世紀末に新たな非動物エンジンをもっと小回りを利かせるために求めましたが、ガソリンが相応しいのか、あるいは電気が相応しいのか、当然ながら誰も分からなかったわけですね。これが競争基盤の変化に関わる興味深いエピソードです。新たな競争基盤の出現といえそうな事態です。19世紀は若かったのですね...。

『ミシンと衣服の経済史―地球規模経済と家内生産―』原稿では、米国ミシン会社の≪イノベーションのジレンマ≫を論じた個所で参照しました。そこで述べたのは、19世紀の開発競争によってミシンは手縫い水準に到達してしまい、20世紀のミシン開発は縫う以外の作業を付与する方向へ進んだというものでした。縫うためのミシン開発がミシンのオプション・サービスへ転化してしまったという流れです。『ミシンと衣服の経済史―地球規模経済と家内生産―』では加筆修正をしましたが、元にした論文は「シンガー社とイノベーション」として下記ページにて紹介しています。ご参照ください。http://www.mode21.com/column/cat311/post-105.html

なお、日本でイノベーションを目指すのはバカだとばかりお言ってられませんので、以下に、Google社と楽天社での仕事事情について、ルーチンワークから離れた仕事や勉強も推奨されるというメリハリの利いた、小さなイノベーションを心掛けた記事を紹介して結びにしておきます。
「イノベーションは、変化を起こすことから始まる:キャピタリストの視点:ITmedia オルタナティブ・ブログ」http://blogs.itmedia.co.jp/tsuji/2007/11/post_0ee1.html
アパレル・雑貨を探す: オットーjavariベルメゾンネットYahoo!楽天市場
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このページは、岩本真一が2013年1月26日 18:10に書いたブログ記事です。

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