ファッション中毒 - スタイルに溺れ、ブランドに操られるあなた
本書の概要・感想
ミシェル・リー『ファッション中毒 - スタイルに溺れ、ブランドに操られるあなた』和波雅子訳、NHK出版、2004年
タイトル、カバー、帯の文字以上のものを書くには難しいが、ファッション雑誌・女性向け雑誌の編集者である著者ならではの暴露本である。もっとも、暴露本というだけでは何も目新しい物ではないが、彼女のオリジナリティは、その暴露の量にある。本書を手に取れば、その点がよく判る。
「服というものがたくさんの人の手を経て初めてできあがるように、書物も今や一個人の産物ではない」という、編集する立場や著者の人柄が分かる謝辞から始まる本書は、以下のような構成になっている。
- ファッション・ヴィクティムって誰のこと?
- ファッション・ヴィクティムの十戒
- スピード・シック - トレンドの命は5分間!
- マックファッション - <GAP帝国>は個性を殺す
- もうファッションから逃げられない! - メディアとスタイルの蜜月関係
- 痩せてなければオシャレじゃない - 歪むボディ・イメージ
- 服を作っているのは誰? - ファッションの負の歴史と現状
- 服という名の凶器 - スタイルは着心地に勝る
- やさしさもトレンド次第? - 動物愛護かファッションか
- なぜ私は心配するのを止め、ファッションを愛するようになったのか?
主に女性をターゲットに、体型や精神面に多大な影響を与えてきた衣服や靴、それにアクセサリーは、女性のマゾヒズムを助長させる効用をもったのだと、服飾史やモード論ではよくいわれる。しかし、ハイヒールのように、翌日に絆創膏を貼るような無様なことが分かっていてもヒールを履く習慣や感情は、単なるマゾヒズムとして片付けることは出来ない。その精神面をマイナスのイメージだけでなく、肯定的にも捉えようとする著者の「優しさ」は、この手の本の著者には珍しいように感じる。
単にメディアと連動させて消費者を煽るわけでもなく、かといって、ファッションに逃避する消費者の行動を浪費と言い切るわけでもなく、ファッションへの評価をバランス良く取っており、「欠点は多々あれども、やっぱり愛さずにはいられない存在、それがファッションなのである」と結んでいる。
20世紀以降のファッションが、それ以前のファッションに比べ、どうしても品質が悪くなっている点や、ファッションにこだわる消費者が必ずしも教養と関係があるわけではなくなった点など、20世紀以後のファッションは私たち消費者とともに凋落の一途を辿っているのは確かだ。
しかし、著者ミシェル・リーは、ファッション業界と消費者、それにファッション文化を凋落の一言では終わらし切らず、マドンナ、グウィネス・パルトロウ、ジュリア・ロバーツら有名人がデザイナーやブランドの広告塔となるメディア面や、アメリカの既製服産業が国内生産を放棄し、海外生産にシフトしているような経済面にも、広く深く言及している。デザイナーたちが、ドレスやタキシードを着てもらうように、挙ってスターを口説き、スターたちの受賞の場を、デザイナーたちのファッション・ショーへと変えさせるという辛口な指摘が面白い。
ネタを話せばキリがないが、最後に、衣服の国際性と、それを着用する私たちの鎖国性とのギャップ(GAPじゃなくて落差、冗談)について、著者の文章を引用しておこう。衣服を作るということが、これほどにまで、私たちからほど遠い行為となってしまったことに、今更ながら気づかされる。
服の購入に費やされる金額に比べて、衣類製造に携わる労働者側が受け取る額はとんでもなく少ない。試しにクロゼットの中から御着選び、どこで作られた物か、タグを見て調べてほしい。おそらく、あなたのワードローブはあなた自身よりはるかに国際的なはずだ。(30ページ)
カバーより
もはや狂気すれすれ!
奴隷のようにトレンドを追い、ロゴ付きの服で広告塔と化すファッションの犠牲者たち。その哀しくも滑稽な姿を軽妙に描き、彼らの狂気を煽るメーカーの内部にメスを入れる。女性心理を操るためのトリック、歪んだボディイメージの演出、身体を蝕む化学物質の使用、テキスタイル・メーカーや下請けに強いられる苛酷な労働…人気ブランドをはじめとする業界の暗部も徹底取材。ファッションの功罪を多角的に検証し、現代消費社会の矛盾をつく注目の書。
帯より
業界の暗部を徹底取材! ファッション界の内幕を暴く!
ダナ・キャラン、カルバン・クライン、ケネス・コール、GAP……。あなたの欲望を操る巧妙なトリックとは? 原題消費社会の歪みをあぶり出す注目作!
著者紹介
ミシェル・リー ファッション・ジャーナリスト。有名ファッション誌『グラマー』『USウィークリー』『コスモガール!』『マドモアゼル』などの編集者としても活躍。1997年には、特集記事でウィリアム・ランドルフ・ハースト賞受賞。ニューヨーク・シティ在住。
翻訳者紹介
和波雅子 翻訳家。主な訳書に、『アラブから見た湾岸戦争』(時事通信社)、『女性・怒りが開く未来』(現代書館)、『妹ジョディ・フォスターの秘密』(文春文庫)、『煙が水のように流れるとき』(ソニー・マガジンハウス)などがある。
本書のキーワード
アーデン, アーバン・アウトフィッターズ, アール・ジーン,スサンヌ・コスタス, アイサック・ミズラヒ, アイスバーグ, アディダス, アパークロンビー&フィッチ, アナ・スイ, アルド, アルファディ, アルベルタ・フェレッティ, アレキサンダー・マックィーン, アン・クライン, イヴ・サンローラン, イェレナ・ヤーマック, イミテーション・オブ・クライスト,, ヴァニティ・フェア, リー・ジーンズ, ジターノ, シック, ジャンセン, ヴァレンティノ, ヴァン・ヒューセン, ヴィウィアン・ウエストウッド, ヴィヴィアン・タム, ヴィクトリアズ・シークレット, ウェット・シール, ヴェルサーチ, ドナチッラ・ウェルサーチ, ヤング・ヴ工ルサーチ, ヴェルサス, ウルトラ・スェード, ウンガロ, エアロポスタル, 工クスプレス, エスカーダ, エスカーダ・スポーツ, エスティ・ローダー, エスプリ, エディー・バウアー, 工ニーチェ, 工リー・タハリ, エリザベス・アーデン, LLビーン, 工ルヴェ・レジェ, エルメス, エルメネジルド・ゼニア, オーセンティック・プリズン・ブルー, オールド・ネイビー, オールド・ネイビー・キッズ, オスカー・デ・ラ・レンタ, オメガ
