エロチックな足 - 足と靴の文化誌
本書の概要・感想
ウィリアム・A. ロッシ『エロチックな足 - 足と靴の文化誌』山内昶・山内彰・西川隆訳、筑摩書房、1999年
単に歩くための重要な身体器官として考えられてきた足と、それを保護する物と考えられがちな靴について、両者の接触によってエロチックな意味合いが十二分に含まれるという観点を大きく取り上げた本。
靴と足の関係の常識を打ち破り、靴、そしてそれを履く文化を、セックス・アピールを高めるための性のシンボルという観点にもとづき、文化象徴論的な説明が丁寧になされており、性の問題にも躊躇なく踏み込んだ画期的な著書である。
西洋のコルセットに顕著なように、衣装は身体を圧迫することでエロスを醸し出してきた。しかし、それは何も衣服だけに留まらず、靴という物も同様な機能を果たしてきたのである。それは、古くは中国の纏足の事例があり、近年、といってもここ200年ほどの歴史では、ハイヒールやプラットフォーム靴を中心にした身体圧迫にもみられる。
それはひとえに、足が慎ましいものであるという禁欲的な面をもちつつも、それが同時に、露わにしたいという欲望を喚起する側面も共時的に発生させることとなった。だからこそ、足の変形というリスクを負いつつも女性の多くがハイヒールなどの靴を履くことを諦めないし、セックスそのものが、ファッションのセンス以上に強力な行動動機なのである。
現代の世界中をみわたせば、靴を履かずに裸足で歩く人たちも、たくさんいる。裸足はさほど不便でも不自由でもない。しかし、靴を履くことによって、人間の足には変調が生じた。うおの目、タコ、靴擦れ、外反拇指はもちろんのこと、足病は実に40種類あるといわれる。土踏まずの形成が阻害され扁平足になったり、足指が変形し、赤ちゃんのように足でものを掴む能力も欠如した。足の病気によって精神的、肉体的な疾患が誘発される場合もある。
また、ハイヒールを履いて転んで骨折したり流産したりする女性もいることを考えれば、靴とは足を保護するどころか、凶器に近いものがある。
著者略歴
ロッシ,ウィリアム・A. - 足病医学博士。足病学のカレッジ講師を経て履物業界のコンサルタント。『アメリカ足病学協会誌』編集顧問ほか主要な二つの履物業界誌の編集長を務める。『エンサイクロペディア・ブリタニカ』の履物と皮革の項目の執筆をはじめ多数の著書、新聞・雑誌への寄稿文がある。履物文化史の第一人者として多くのセミナーを指導し、テレビ・ラジオでも活躍中
訳者略歴
山内昶 - 1929年東京生まれ。京都大学文学部、同大学院(旧制)修了。パリ大学高等研究院に留学。大手前女子大学教授、甲南大学名誉教授。専攻、フランス文学、人類学、文化学
西川隆 - 1964年兵庫県生まれ。関西学院大学大学院文学研究科博士課程修了。神戸学院大学人文学部非常勤講師。専攻、アメリカ文学、アメリカ現代詩
山内彰 - 1964年兵庫県生まれ。関西学院大学大学院文学研究科博士課程修了。甲南大学、関西学院大学、大阪市立大学非常勤講師
帯から
シンデレラの靴はガラスでなく毛皮でできていた!?
ガラスの靴であれ毛皮の靴であれ、靴にこめられたエロチックな表象に人類は魅了されつづけてきた。足と靴とにまつわる妖しく不可思議な人間心理の闇を、あまたの逸話をとおして語りつくした足元からの人間文化論。
