ファッションの20世紀-都市・消費・性
本書の概要・感想
柏木博『ファッションの20世紀-都市・消費・性』日本放送出版協会、1998年
ファッションと、20世紀という時代(=近代)との2点にテーマを絞り、ファッションの持つ力学と多様な現象や構造を解き明かす。
近代のファションは、それまでの複雑な暗黙の社会制度から解放され、20世紀への突入と同時に、市場経済システムに組み込まれた。以後、性差や職業的差異を超えた均質化を促進させた2度の世界大戦におけるファッション、あるいは、パリ、アメリカ、東京におけるファッションなど、20世紀のファッションの辿ってきた道には、いくつかの断層がある。本書では、各時代ごとに違った形やパターンを見せるファッションの断面を、当該期に活躍したデザイナーにも触れつつ、描き出すことが目的とされている。したがって、ファッションの歴史といっても、20世紀のファッション史の全貌を描くということではなく、個別のトピックを取り上げるという方法が本書では採られている。
本書の構成は以下のとおり。/序章:ファッションという<力>/I:消費都市パリ-近代的まなざしの誕生/II:国民服と標準服-総力戦とファッション/III:アメリカン・ルックとトラッド-ファッションの<アメリカ>/IV:ミニ・スカートからパンクへ-対抗文化とファッション/V:装うことへの無限運動-都市東京ファッション/終章:ファッション-終わりなき闘争
章別のテーマを追ってみよう。まず、序章では、ファッションが私たちの社会的意味や存在とどのように関わってきたのかが考察されている。I章では、19世紀から20世紀へ転換した時期に出現した消費都市パリと、それを背景に登場したファッション、そして、ベンヤミンを都市社会学的に読み返した都市に発生した新たな「まなざし」について論じている。
II章では、特に第2次世界大戦を念頭に、当時出現した国民服・標準服などに焦点を当て、これが生みだした平等観念や国民意識について考察されている。日本の場合、戦中の平等観念は戦後民主主義に接続するが、筆者の結論は、一見、生活は戦中と戦後で断絶があるかのようだが、実際は、戦中に強固となった生産の平等・消費の平等意識は、戦後の日本人の意識に引き継がれているということだ。
III章では、戦後日本を支えたアメリカのファッションについて論じられる。戦後のアメリカのファッションは世界中に浸透し、世界システムの一環として機能したのだという筆者の論点は、現在の世界が抱えるアメリカ固有の立場に繋がる論点を提示しており、興味深い。
IV章をみると、ヒッピーに代表される、60年代から登場した、近代システムへの対抗文化が検討されている。とはいえ、市場システムの生みだすファッションに対抗した点に評価を定めず、筆者は、そのような対抗的文化・周辺的文化が、結局は支配的な近代の市場システムに回収される背反を指摘することを忘れていない。
V章では、80年代以降、日本でポストモダンとよばれた文化現象を背景に出現したファッションを取り上げる。あたかも対抗基軸を忘れたかのようなファッションの展開、あるいは私たち自身の欲望と夢について、筆者なりの見解が示されており、本書全体にもいえることだが、20世紀ファッションについて、ある程度イメージを持っておくためには必読の本だろう。
