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ものと人間の文化史 - 野良着



本書の概要・感想

福井貞子『野良着』法政大学出版局、2000年

倉吉絣の産地である鳥取県倉吉市を中心に、明治初期から昭和40年頃までの約1世紀にわたる野良着に関し、用途・年代・性別・形態・材料・重量・地域の呼称などを記録した精力的な本。

野良着という農山村の独特な衣服は、高度経済成長とともに、一般的に見られることは少なくなった。それは、終戦直後の洋装化が60年代になって一気に進行し、製造されることが少なくなったためである。さらに、昭和30年代には兼業農家が急増し、それまで利用されていた野良着が大量に処分されたことも原因している。

本書では、このように消えつつある野良着を収集した貴重な記録である。本書は、収集品の分類整理によって、着物と被り物、屑物、付属衣などを計測し、作図や聞き取りを交えながらまとめられている。野良着は、労働による摩擦や汚染、さらに人体の汗と垢によって、布が傷み消耗する。しかし、それがすぐさまゴミとして処理されたわけではなく、半世紀にわたって、天地を逆にし、表裏を交換して何度も改縫した不定型な衣料だと筆者はいう。本書の醍醐味は、そのような手垢の付いた野良着のなかに、それを着て仕事をしていた女性たちの内面や生活にも焦点を当てていることにある。

また、野良着、仕事着などは、多種多様の膨大なデザインの宝庫でもある。これは、縞帳と呼ばれる柄のカタログとして、母から娘へ、代々、加筆や修正を加えながら継承されていった。本書は、木綿縞や絣のもつデザインとしての面白みも見逃していない。


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