カラー版-世界服飾史
本書の概要・感想
深井晃子監修『カラー版-世界服飾史』美術出版社、1998年
執筆者は、深井晃子、徳井淑子、古賀令子、周防珠実、石上美紀、新居理絵
本書は、服飾とその歴史がもつ多様性や意味の大きさ・深さを考える手引き書として編まれた。服飾は、それぞれの時代の代表的な美術作品であり、また、驚くべき奔放な創造性を示すデザインの宝庫でもある。さらに、最新の技術や素晴らしい手仕事が集約されたものという意味ももっている。本書は、ヴィジュアル資料を駆使して、このような服飾の多様性を完結に理解できるように構成されている。
さて、服は、私たちの文化に根ざした「表象」であり、私たちは次のような理由で服を着ることが欠かせない。暑さ・寒さに関わる生理的理由、記号として服飾が示す社会的要因、装飾変身願望、隠蔽と顕示など精神的理由等々。本書は、そのような理由もリファレンスする視野をもっており、一種の社会史・文化史としても読むことができる。
ところで、現在の日本の服飾は、西欧に起源をもつ「洋服」である。そして、洋服は、今日の世界のほとんどの国々で着られている。本書でいう「世界服飾史」は、全時代の全服飾の意味ではなく、私たちが着ている現在の世界共通の服飾という意味をもっている。したがって、日本が伝統的な和服から洋服へと転換した過程も、丁寧に辿られている。
ヴィジュアル資料には、絵画、彫刻、版画、ファッションプレート、図版など、様々なものが利用されているが、中でも注目すべきは、京都服飾文化研究財団所蔵の実物の写真も豊富に盛られている点だ。また、ヴィジュアル資料を裏付けるような文献、文学作品、記事など、叙述としての資料もふんだんに利用されているので、総合的に服飾史を知ることができる。本の寸法もページ数も適当で、5つ星でオススメ。
