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4787232371.jpg謝黎『チャイナドレスをまとう女性たち―旗袍にみる中国の近・現代―』青弓社、2004年

チャイナドレスの中国語は旗袍(チーパオ)。中国国内のデパートや高級レストランで見ることの多い旗袍は、日本でも人気が高い。使われている素材は、絹からポリエステルまで様々で、柄にあっては、さらに多種多様である。

ところが、チャイナドレスの人気度に比べて、その歴史については、実態が知られていない。中国国内の繁華街を歩いてみても、旗袍を着た女性を見ることはできない。このことは、日本の着物が伝統着として位置づけられてきたにもかかわらず、20世紀後半には家庭内からも姿を消した状況と似ている。筆者がこだわるのは、チャイナドレスもまた、着物と同様に、洋服の流入とともに改めて「伝統」のレッテルを貼られた運命にある。

旗袍の原形は、満州王朝(清王朝が時間的に直近)の「旗人」である。古代から現在まで連綿と引き継がれてきたかの印象を受ける旗袍だが、実際はそうではなく、漢民族が圧倒的に多い中国にあって、今では少数民族に属する満族の服装だった。このような問題関心にもとづき、本書では、服飾史を中心に、時代時代の広告や雑誌記事をも参照した社会史的な関心も合わせつつ、中国における旗袍と「伝統の創造」というテーマを追っている。

構成は、清朝末・民国初期の婦女の旗袍/民国中・後期における旗袍の流行/文化大革命と改革開放による旗袍の否定と肯定/近・現代中国の服飾における「伝統」の創造

謝黎『チャイナドレスをまとう女性たち―旗袍にみる中国の近・現代―』青弓社、2004年

恋愛と贅沢と資本主義 - ファッション書籍

4061594400.jpgヴェルナー・ゾンバルト『恋愛と贅沢と資本主義』金森誠也訳、講談社、2000年

18世紀後半のフランスにおける奢侈産業の隆盛について詳しい。

私たちの生活を突き動かすのは、禁欲か贅沢か。

M・ウェーバーが資本主義成立の原動力を精神的な禁欲に求めたのに対し、19世紀フランスの宮廷恋愛という題材を用いて、著者は贅沢にそのエンジンを求める。贅沢は、セックス、不倫、買売春と深く結びついて、どのような社会を形成していったのだろうか...。

さらに、ゾンバルトの本書は、ヴェルサイユ宮殿におけるポンパドゥール夫人(ルイ15世の公妾)、マリー・アントワネット・ドートリッシュ(ルイ16世の王妃)たちの贅沢行為の暴露を含め、ヨーロッパに集積する織物・衣服製造業の実態を大局的に論じた希有な「服飾経済史」といえる研究である。

目次
新しい社会(宮廷、市民の富、新貴族、資料と文献)、大都市(16、17、18世紀の大都市、大都市の発生と内部構成、18世紀の都市学説、資料と文献)、愛の世俗化(恋愛における違法原則の勝利、高等娼婦)、贅沢の展開(奢侈の概念と本質、王侯の宮廷、騎士と成上がり者の第二ラウンド、女の勝利<奢侈の一般的発展の傾向、屋内の奢侈、都会のなかの奢侈>、資料と文献)、奢侈からの資本主義の誕生(問題の正しいとらえ方と誤ったとらえ方、奢侈と商業<卸売業、小売業>、奢侈と農業<ヨーロッパ、植民地>、奢侈と工業<奢侈工業の意味、純粋な奢侈工業、混合せる工業、奢侈消費の革命的な力>)。

ヴェルナー・ゾンバルト『恋愛と贅沢と資本主義』金森誠也訳、講談社、2000年

朝鮮王朝の衣装と装身具 - ファッション書籍

4473034097.jpg張淑煥『朝鮮王朝の衣装と装身具』淡交社 、2007年

梨花女子大学博物館澹人服飾美術館所蔵の衣装・装身具コレクション。国立民俗博物館、国立古宮博物館の協力も得て、朝鮮王朝の服飾文化を総合的に紹介。

第一部は女性の衣装と、ノリゲや簪を中心にした装身具、第二部では、男性の正装と普段着、第三部では婚礼衣装と子供の服装をカラー図版と解説で紹介。

朝鮮王朝最後の皇太子英親王と李方子妃が着用した衣装と装身具をはじめ、王族や上流層が身につけた華麗なる装いも紹介されている。その多くが日本に初めて紹介される貴重な遺物であり、テキスト編では、服飾、工芸、王朝社会に関する基礎知識がテーマごとに掲げられ、イラストや写真も添えられ、分かりやすい。

張淑煥『朝鮮王朝の衣装と装身具』淡交社 、2007年

服装の歴史 - ファッション書籍

4122046114.jpg高田倭男『服装の歴史』中央公論社、2005年

衣服や被服を身につけた装いの歴史をたどった丁寧な本。白黒画像がたくさん収録されている。

衣服の形式、裁縫技術、衣服材料、衣服史、被服史、染織史にも目を配り、社会文化史や生活文化史として服装史を描いている。その上で、衣服を着用する人々の意識をも掘り起こし、物品・製品を中心にした服飾史との区別化も図っている。

内容は、第一章「原始・古代」、第二章「中世」、第三章「近世」、第四章「近代・現代」の4つに分けられ、本文420ページのうち、150ページほどが第一章に割かれているのが特徴で、日本列島の服装が中国から多大な影響を受けていた点をきちんと押さえている。その上で、後代における公家装束、武家装束をはじめ、史料がほとんど残っていない庶民層にまで、説得的な想像力も含めながら丁寧に説明している。

中でも圧巻なのは、中世までの服装の歴史と近世以降の服装の歴史では、大きくベクトルが変わった点を、小袖スタイルの完成とデザイン変化に求めている点で、時代・身分・材料などの変数を入れると複雑多岐にわたる服装史を分かりやすくナビゲートしてくれる。

第四章「近代・現代」はわずか40ページほどが割かれているだけだが、ここの説明も簡潔明瞭で、洋風化が日本の服装の終焉を意味した点を強調し、20世紀末の日本列島における服装の状況を指しながら「ここらが限界だろう」という一句を吐露している点は感慨深いものがある。

高田倭男『服装の歴史』中央公論社、2005年

洋裁の時代―日本人の衣服革命― - ファッション書籍

4540031562.jpg小泉和子『洋裁の時代―日本人の衣服革命―』OM出版、2004年

洋服が日本人の服装として定着したのは、意外に遅く、第二次世界大戦後のことである。戦前は、圧倒的に多くの女性が和服を着ていたし、外出には洋服を着ることも多かった男性でも、室内では着物が主流だった。

昭和20年代~50年代の30年間に日本人の服装は完全に洋服へと変化した。代わりに和服は非日常の場、つまり伝統文化のお稽古や、結婚式・卒業式などのイベントに限定されて着られることが多くなった。

このように和服が一掃され洋服が全般的に浸透していく事態は衣服革命と呼ぶべきものだろう。では一体、衣服革命が起こった時期や経緯はどうだったのか?

衣服革命の始まりは終戦直後。敗戦という結末を向かえた状況のなかで衣料不足だけがこの革命の原因となったわけではない。生地が絶対的に不足していただけでなく、戦地に赴く男性の代わりとなって職場へ進出した女性たちはモンペやズボンを着用し、終戦後も継続して活動的な衣服を求めたのである。

戦勝国のアメリカ文化は衣服においても日本に影響を与えた。当時は手っ取り早く買える店があるわけではなかったので、少しでも洋裁ができてミシンを持っている人たちに注文が殺到したそうである。そのような需要の状況のもとで、家庭内職として専業主婦に人気を得たのがミシンでの洋裁だった。

これに伴い、昭和30年代になってミシンの生産は、都市部で普及率75%という数字に達し、家庭洋裁はもちろんのこと、職業洋裁も一大隆盛期を迎え、洋服化が急速に進んだ。全国各地に見られた洋裁教室の乱立も丁度この頃である。

ところが、昭和40~50年代になると、洋服の本格化とともに、高度な技術力やデザイン力に力点が置かれ初め、既製服の普及が決定的な要因となって家庭洋裁や町の洋裁店はその任務を終えた。

このような洋裁、あるいはミシンの盛衰を振り返ると、大規模な洋裁学校を筆頭に、終戦直後に手探りで洋裁に取り組んだ動き全体は、何も近代化のスローガンやパリ・モードといった大きな視野を見据えていたというよりは、終戦後の厳しい生活環境に密着した形で衣服革命が展開したのだと思われる。

昭和30年代から登場した既製服、これには合成繊維の発展と大規模なアパレル産業の台頭が背景にある。以後、50年代にかけて安価で誰もが着やすい既製服は洋服の主要ジャンルとなっていった。

本書は、終戦直後から昭和50年代にかけての「洋裁の時代」=「衣服革命」に注目し、女性たちが洋裁技術を習得し、洋服を自分のものとしていった経緯を描いている。また、習得した洋裁技術を女性たちはどのように生活に役立てていったのか、職業面にも焦点を当てている。さらに、洋服化にとって避けることのできない下着の問題、農村女性が洋服化した経緯、洋服化の上で大切な役割を果たした桑沢洋子と花森安治、そしてミシン本体についても、詳細に取り上げている。

小泉和子『洋裁の時代―日本人の衣服革命―』OM出版、2004年

日本被服文化史 - ファッション書籍

4332100255.jpg元井能『日本被服文化史』光生館、1969年

近世までの衣服動向がコンパクトにまとめられていて分かりやすい。図版はモノクロだが豊富で特徴的なものを選出。

西洋の被服が形態の変遷に重点を置いてきたのに対し、日本の被服が、デザインや色彩に注目されてきたという問題意識(文様形式に焦点を当てる)をもって、公家装束・武家装束だけでなく、能文化や染織技術にも触れた被服文化史となっている。

承知の通り、柳田国男は、明治期以降の日本の衣服が、西洋風のものや古着の多様さによって、世界でも珍しいほどゴタゴタしている点を憂えた。

しかし、元井能が、本書で、日本の被服にこだわりつつも、西洋の服が洋服、あるいは単に「ふく」と称され、従来の日本の被服が「和服」「きもの」という名称でよばれる点(日本の衣服史の二重性)を指摘しながらも、決して、この二重性を矛盾という観点だけで捉えていない点は評価に値する。また、日本における被服の多様性という問題から、現代の被服が抱える多様性の問題へと観点を広げ、本書を締めくくる。

元井能『日本被服文化史』光生館、1969年

小袖 - ファッション書籍

4894445506.jpg長崎巌『小袖』ピエ・ブックス、2006年。

現在キモノとよばれるものの原形となる小袖は、安土桃山時代から江戸時代にかけて名称が定められた袖口の小さい衣服のこと。本書は、小袖の生地・模様・加飾技法の3点に焦点をあて、多数の写真資料とともに小袖の衣服を楽しめる。

遠く貫頭衣に機嫌をもつ小袖は、袖を持つようになった当初は筒袖だった。筒袖はやがて、小さな袂をもちはじめ、次第に袂が肥大化し、室町時代に形態が確定した。

小袖は平安時代から貴族の下着として使用され、名称も存在したが、庶民や武家にあっては、これを下着・表着兼用の衣服として着用した経緯も面白い。

邦題のサブ・タイトルは「日本伝統の装い、その華やかな歴史をたどる」だが、英語のタイトルは「Kosode - The Origin of Modern Kimono Design」(小袖―近現代の着物デザインの起源―)となっており、イメージがやや異なる。

長崎巌『小袖』ピエ・ブックス、2006年。

カラー版 世界服飾史 - ファッション書籍

4568400422.jpg深井晃子監修『カラー版 世界服飾史』美術出版社、1998年

執筆者は、深井晃子、徳井淑子、古賀令子、周防珠実、石上美紀、新居理絵。

本書は、服飾とその歴史がもつ多様性や意味の大きさ・深さを考える手引き書として編まれた。服飾は、それぞれの時代の代表的な美術作品であり、また、驚くべき奔放な創造性を示すデザインの宝庫でもある。さらに、最新の技術や素晴らしい手仕事が集約されたものという意味ももっている。本書は、ヴィジュアル資料を駆使して、このような服飾の多様性を完結に理解できるように構成されている。

さて、服は、私たちの文化に根ざした「表象」であり、私たちは次のような理由で服を着ることが欠かせない。暑さ・寒さに関わる生理的理由、記号として服飾が示す社会的要因、装飾変身願望、隠蔽と顕示など精神的理由等々。本書は、そのような理由もリファレンスする視野をもっており、一種の社会史・文化史としても読むことができる。

ところで、現在の日本の服飾は、西欧に起源をもつ「洋服」である。そして、洋服は、今日の世界のほとんどの国々で着られている。本書でいう「世界服飾史」は、全時代の全服飾の意味ではなく、私たちが着ている現在の世界共通の服飾という意味をもっている。したがって、日本が伝統的な和服から洋服へと転換した過程も、丁寧に辿られている。

ヴィジュアル資料には、絵画、彫刻、版画、ファッションプレート、図版など、様々なものが利用されているが、中でも注目すべきは、京都服飾文化研究財団所蔵の実物の写真も豊富に盛られている点だ。また、ヴィジュアル資料を裏付けるような文献、文学作品、記事など、叙述としての資料もふんだんに利用されているので、総合的に服飾史を知ることができる。本の寸法もページ数も適当で、5つ星でオススメ。

深井晃子監修『カラー版 世界服飾史』美術出版社、1998年
4309904122.jpg井関和代『アフリカの布─サハラ以南の織機、その技術的考察─』河出書房新社、2000年

文字資料の少ないアフリカ織物研究のなかで、アラブ人たちによって西アフリカの旅行記などから多少の織物動向を窺い知ることができる。本書では、それを踏まえながら、主にサハラ以南に焦点をあて、現在でも生産され続けている織布の素材や織機、その機能などの技術上の分析を行ない、サハラ以南で継承されてきた「原始機」とその織技術体系を明らかにする。同時に、西アフリカで継承されてきた「足踏式織機」の分布と形態にも注目し、比較研究を行なう。

井関和代『アフリカの布─サハラ以南の織機、その技術的考察─』河出書房新社、2000年

野良着 - ファッション書籍

4588209515.jpg福井貞子『野良着』ものと人間の文化史、法政大学出版局、2000年

倉吉絣の産地である鳥取県倉吉市を中心に、明治初期から昭和40年頃までの約1世紀にわたる野良着に関し、用途・年代・性別・形態・材料・重量・地域の呼称などを記録した精力的な本。

野良着という農山村の独特な衣服は、高度経済成長とともに、一般的に見られることは少なくなった。それは、終戦直後の洋装化が60年代になって一気に進行し、製造されることが少なくなったためである。さらに、昭和30年代には兼業農家が急増し、それまで利用されていた野良着が大量に処分されたことも原因している。

本書では、このように消えつつある野良着を収集した貴重な記録である。本書は、収集品の分類整理によって、着物と被り物、屑物、付属衣などを計測し、作図や聞き取りを交えながらまとめられている。野良着は、労働による摩擦や汚染、さらに人体の汗と垢によって、布が傷み消耗する。しかし、それがすぐさまゴミとして処理されたわけではなく、半世紀にわたって、天地を逆にし、表裏を交換して何度も改縫した不定型な衣料だと筆者はいう。本書の醍醐味は、そのような手垢の付いた野良着のなかに、それを着て仕事をしていた女性たちの内面や生活にも焦点を当てていることにある。

また、野良着、仕事着などは、多種多様の膨大なデザインの宝庫でもある。これは、縞帳と呼ばれる柄のカタログとして、母から娘へ、代々、加筆や修正を加えながら継承されていった。本書は、木綿縞や絣のもつデザインとしての面白みも見逃していない。

福井貞子『野良着』ものと人間の文化史、法政大学出版局、2000年 -
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チャイナドレスをまとう女性たち―旗袍にみる中国の近・現代―チャイナドレスをまとう女性たち―旗袍にみる中国の近・現代― - 謝黎『チャイナドレスをまとう女性たち―旗袍にみる中国の近・現代―』青弓社、2004年チャイナドレスの中国語は旗袍(チーパオ)。中国国内のデパートや高級レストランで見ることの多い旗袍は、日本でも人気が高...続きをみる

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