きもの文化と日本

『 きもの文化と日本 』 は、キモノを着る物と捉え、昔の日本の生活になじんでいたものという観点から、経済学者の伊藤元重ときもの小売業やまと代表取締役会長の矢嶋孝俊の対談。

服とは着る物だということを改めて感じさせてくれました。

矢嶋孝敏・伊藤元重『きもの文化と日本』日本経済新聞出版社、2016年(amazonへ)

本書の特異な点は着物業界ついて言及している点です。近世・近代の着物の着用史も調べていて、着物の歴史としても勉強になります。かといって懐古的な着物論にならずに、高価な値段や複雑な作法を強要してきた着物業界の古い体質を批判しています。そして、今後の着物文化の在り方には、若者の着物着物受容に期待がかかるという点を指摘しています。今後の展望については、やや楽観的な感がありますが、着物を取り巻く歴史、文化、産業、経済、グローバル化と多岐にわたり着物の話が広がります。特に、20世紀の着物業界の歴史、着物文化の歴史を振り返りながら、現状の着物受容にも踏み込んだ議論を展開しているので、とても躍動感をもって読むことができました。

着物は絹でないとダメとか、草履でないとダメとか、そういった古いルールを打破して、着物だけどもカジュアルに着ること、もっといえば着物だからこそカジュアルに着ること。こういったことも提唱されていて、最近の化合繊の利用にも肯定的な説を確認する事ができます。ベルベットのコートを羽織れば一層似合うとか、レース生地の着物装飾は意外に映えるとか、絹=素材という通念を打破することで多様な着物の姿が見えてきます。

ただ、《では洋服以外の伝統衣装の復活を着物だけで考えて良いのか》という疑問は残りました。衣服・服装を論じる際に陥りやすいのが《自分たちの先祖の衣装と洋服との対立》という枠組みです。やや無い物ねだりですが、グローバル化に注目するならばこそ、この2世紀にわたる洋服普及下の伝統衣装の変容と産業経済との関わりを、中国の旗袍、朝鮮のチョゴリ、ベトナムのアオザイ等をも取り上げて堂々と論じてほしかったところです。

矢嶋孝敏・伊藤元重『きもの文化と日本』日本経済新聞出版社、2016年(amazonへ)


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[投稿日]2017/03/23
[更新日]2017/05/16