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スタイル用語集 : 1日1個 平日配信
新しいファッション史

モードの世紀は、人類のファッション史をまとめ直し、躍動感ある歴史を描きます。
主にフランス、イギリス、イタリア、アメリカ、中国、台湾、日本に注目します。

これまでのファッション史は西洋か日本か、意味不明の二項対立に固執しました。
和洋。何て厚かましい言葉でしょう。

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恋愛と贅沢と資本主義 : 経済社会のエンジンは何か?

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恋愛と贅沢と資本主義

恋愛と贅沢と資本主義 : 著者のヴェルナー・ゾンバルトはマックス・ウェーバーと並び称されたドイツの経済史家です。本書の原書 “Liebe, Laxus und Kapitalismus” は1912年に書かれました。

マックス・ウェーバーが資本主義成立の要因をプロテスタンティズムの禁欲的倫理に求めたのに対し、ゾンバルトは本書で奢侈・贅沢こそエンジンだと結論づけました。地味な経済史分野でこれほど抱腹絶倒を約束してくれる本は、まずありません。

恋愛と贅沢と資本主義 ヴェルナー・ゾンバルト

恋愛と贅沢と資本主義 ヴェルナー・ゾンバルト

ウェーバーとの対比

ウェーバーが資本主義成立の要因をプロテスタンティズムの禁欲的倫理に求めたのに対し、ゾンバルトは『恋愛と贅沢と資本主義』で贅沢こそエンジンだと結論づけました。贅沢の背景には女性がいて、贅沢は姦通、畜妾制度、買売春と深く結びついていたという。かくて著者は断じます。「非合法的恋愛の合法的な子供である奢侈は、資本主義を生み落とすことになった」と。

2,000回噛んだ後のスルメを噛み直すほど禁欲的で味気ないウェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」に対比すると、ゾンバルトの本書はキャンディー、ケーキ、紅茶に珈琲と色々おやつを楽しんでいるような気分で食欲的な内容です。実際のところ、コーヒーはややまとめて取り上げられていますし、衣料品に関しては恋愛と関連させて大々的に述べられています。ウェーバーが禁欲、ゾンバルトは食欲と性欲です。

本書の特徴

資本主義経済の原動力は何かという問いについて、マックス・ヴェーバーが「禁欲」に要因を求めたのに対し、『恋愛と贅沢と資本主義』は「奢侈」(贅沢)を対置します。フランス貴族の奢侈が世界経済を促進したという発想に基づき、18世紀後半以降のフランスにおける奢侈産業の隆盛が詳しく述べられています。18世紀・19世紀にヨーロッパへ集積した織物製造業・衣服製造業の実態を大局的に論じた希有な「服飾経済史」です。

「 ポンパドゥール侯爵夫人(1759年描写、1956年撮影)。ジャンヌ=アントワネット・ポワソン、すなわちポンパドゥール夫人(1721-1764)はルイ15世の公妾(公的愛人)でした。」

また、パリのヴェルサイユ宮殿におけるポンパドゥール夫人(ルイ15世の公妾、ジャンヌ=アントワネット・ポワソン)、マリー・アントワネット(ルイ16世の王妃)たちの贅沢行為の暴露まで踏み込んでいて、ファッションの都パリの醜態が余りに露骨に分かり過ぎて、笑いが止まりません。贅沢が、セックス、不倫、買売春と深く結びついて、どのような社会を形成し、また突き動かして行ったのか、興味深く読んで頂ければと思います。

本書の位置

1910年代、ヴェルナー・ゾンバルトは、『近代資本主義』のために経済史研究の諸成果を複数刊行しました。その1冊目が『ユダヤ人と経済生活』であり、そこでは、ユダヤ人の神ヤハウェがヨーロッパの諸国民にとって経済生活上で重要な意味をもった点を記しました。

そして、第2弾として刊行しようとしているのが、近代資本主義の形成にあたって、富の神と武の神という別の二柱の神が演じた役割です。その前半は「贅沢と資本主義」を扱い、後半では「戦争と資本主義」を取り上げる計画でした。本書『恋愛と贅沢と資本主義』はその前半に該当し、このタイトルを訳者が「恋愛と贅沢と資本主義」と題したのは妥当です。

ヴェルナー・ゾンバルトによると、十字軍の遠征以来に経験した変革を通じて、ヨーロッパ社会では男女両性間の関係が変化し、この変化によって支配階級の生活様式が全て新たに形成されました。さらにこうした新たな形成が近代の経済組織の建設に対して本質的な影響を与えたと見る訳です。

内容

第1章 新しい社会

ヨーロッパでは土地に根ざした貴族という身分を、新興の工業資本家が目指して獲得する話(イギリスのジェントルマンなどの話)。次の2点とそのまとめが(読んでいた大学院時代)声を出して笑ってしまいました。貴族階級って買えたんですよ!

  • 1614年、以前から行なわれてきた封建的土地所有の新興成金への移行が、法的にも許されることがはっきりと認可された。
  • 17世紀末から貴族免許状の購入が可能になった。1696年に500、1702年に200、1711年に100、が発売されている。
  • これまで述べてきたような、貴族と新興成金との結婚は、ここ20年間くらいのアメリカにおける養豚家の娘たちの結婚の歴史と全く同じである。

第2章 大都市

金融業を中心に大都市が形成されて、新旧の貴族が集住し、これに関連する産業(ビール製造業や衣料関係とか)が発展し、奢侈品の生産と消費が形成されるという話。そこでは、中世から近世にかけてのヨーロッパの大都市をあれこれと時間軸で分類したり特徴を示したりされています。そこで奢侈品産業と都市との関わりから、ヨーロッパの没落都市と繁栄都市の浮沈がランキング表示風に展開されていて面白いです。日本のように遠い地域で世界史を勉強すれば、ギリシア、ローマの古代から突然近代のロンドンとパリが出てきませんか…?!

第3章 愛の世俗化

本章では、ヨーロッパ中世の恋愛が大ざっぱに二つに大別して描かれています。それは、神の下での男女の愛と、女性を神にした愛の2つで、そして形式として愛は、愛抜きには考えられない、人生を強制するものとして展開されています。

17世紀ないし18世紀において、フランスが今日いうような「愛の大学」になった。フランスでは愛の生活が変態性にまで繊細化し、生活の全てが愛のためにだけ存在するという考えが18世紀の本質となった。この点でパリは最高の精神的発展を遂げたといえる。(中略)中世の恋愛詩人の時代にカペラーヌス、ラウレンティウス・ヴァラ、ベンボであった恋愛理論家は、この時代に、ブラントーム、レティフ・ド・ラ・ブルトンヌ、サド侯爵が挙げられるようになった。

≪愛の生活が変態性にまで繊細化≫が気になる所ですが、それはサドなどを読んで下さい。ゾンバルトはそこに留まらず先に進みます(笑)。

中世における恋愛に関する論点で広く言われてきたのは、神の下での男女の恋愛とは、結婚という制度を通過して(つまり神の下での制約・誓約によって二人の関係が浄化されることによって)成就するというパターンです。そして、2つ目の、女を恋い焦がれるものとして男が求愛するパターンは、典型例として宮廷恋愛が挙げられ、貴族の婦人(とくに夫人)を口説き落とす騎士というパターンが本書では強調して描かれています。1つ目のパターンの広範な広がりにもまして、中世から近代にかけてのヨーロッパの宮廷では、2つ目の恋愛が強大に幅を利かせるようになったとされているわけです。

第4章 贅沢の展開

ゾンバルトは、第3章の愛の通説をもとに、第4章で貴婦人を中心にした経済史として奢侈品の変動を分析しています。たとえば、女性と砂糖との密接な関係から、コーヒー、紅茶、ココア、ケーキなどの飲食における奢侈産業の成立を説いたり、巨大な人口を養わなければならない大都市の形成とともに、宮廷が宮殿へと縮小化され、室内への奢侈が注目されるようになり、家具調度品や花瓶や絨毯などがもてはやされるに至ると導いたりしています。

映画『マリー・アントワネット』の映画衣装はミレーナ・カノネロが担当し、アカデミー衣裳デザイン賞を獲得しました。

 

そもそも、近代というか近世というか、18世紀前後の宮廷恋愛は女性が支配的であったということだけでなく、宮廷の経済生活・文化生活全般において女性が「勝利」したとの認識にゾンバルトは立っています。ルイ14世だって、複数の妾や正妻のためにヴェルサイユ宮殿を建てたり、あれこれと贅沢三昧をしましたが、要するに、これをルイ14世が女性たちに操縦されたのだとゾンバルトはみるわけです。女性の勝利というのをフェミニズム的に「つくられた勝利」と考えても何にも面白くなくて、やっぱり池田理代子のご登場を願いたいところです。エピソードとして笑ってしまったのが、17世紀頃のイタリア貴族たちの生活について、ルイ14世が「なんて贅沢なんだ」と言った話です。

私なりの関心では、他にも繊維でいえば「綿の勝利」というべき綿製品の流行も詳しく述べられていたのが面白かったです。17世紀後半のイギリスやフランスが東インド会社を通じて輸入する品目は、それまでの香辛料から、7割から8割を綿製品が占めるようになったという指摘です。イギリスではインド産綿布、特にキャラコの輸入禁止令が出されたのに対し、フランスではポンパドゥール夫人が綿布輸入禁止法案を却下し、むしろ奨励に向かいました。

第5章 奢侈からの資本主義の誕生

本章は、絹紡績工業をはじめとして、ヨーロッパ内の重要な奢侈製造業をいくつかピックアップしながら自説の論証をしています。木綿のインパクトは具体的に分かりました。

コットン、いいかえればインド木綿から作られたプリント地や、アジアからヨーロッパに送られた他の種類の木綿製品は、17・18世紀に対インド貿易の重要な品目であり、贅沢品として輸入されてきたが、現在では郵便局に勤める女子職員でも着用している。当時には、インド産コットンの衣服は上流社会に取り入れられ、地元の生産者たちと対立した。彼らは上質の布や絹製品メーカーであったにも関わらずである。1700年以来、フランスなどの国家はコットン使用を禁止するにいたるが、この手の禁令は効果をもたなかった

本章では概念規定をはじめ奢侈品商業と奢侈品農業を中心に論じています。奢侈品工業(製造業)についても取り上げてほしかった所です。

ヴェルナー・ゾンバルト『恋愛と贅沢と資本主義』金森誠也訳、講談社 、2000年

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